第90回 個人型確定拠出年金(iDeCo)
個人型確定拠出年金である「iDeCo(イデコ)」に加入している方が、令和3年6月時点で、205.9万人にまで増えたようです。数年前に、「老後2000万円が不足する」といった断片的な報道が大きくされたことも、加入者の増加に少なからず影響していると考えられます。iDeCoの掛金は、全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除)されます。
今回は、iDeCoの概要について紹介をしていきたいと思います。
<iDeCoとは>
iDeCoとは、公的年金にプラスして給付を受けられる私的年金制度の1つです。
そのため、加入については任意となりますので、 加入の申込、掛金の拠出、掛金の運用等はすべて自分自身で行うこととなります。
基本的な仕組みは、掛金を60歳になるまで拠出し、60歳以降に老齢給付金を受け取ることができるというものです。老齢給付金は、掛金とその運用益との合計額をもとに給付額が決定されます。原則として、60歳までは資産を引き出すことができないことも特徴の一つと言えます。
<掛金について>
iDeCoは、基本的に20歳以上60歳未満のすべての方が加入することができます。ただし、例外的に企業型確定拠出年金に加入している方は、企業型年金規約でiDeCoに同時加入できる旨を定めている場合でないと加入することができません。規約の内容については、それぞれの会社で確認ください。
iDeCoは、加入している公的年金の種別によって掛金の上限額が以下のように定められています。
1 自営業者等(第1号被保険者)
月額68,000円まで掛金を拠出することができます。ただし、 国民年金基金の掛金、または国民年金の付加保険料を納付している場合は、それらの額を控除した額が上限になります。
2 厚生年金保険の被保険者(第2号被保険者)
勤務している会社でどのような年金制度に加入しているかによって、掛金の上限額が変わってきます。
A 厚生年金基金等の確定給付型の年金を実施している場合は、月額12,000円まで
B 企業型年金のみを実施している場合は、月額20,000円まで
C 企業型年金や厚生年金基金等の確定給付型の年金を実施していない場合は、月額23,000円まで(下記〔D〕の方を除きます。)
D 公務員、私学共済制度の加入者の場合は、月額12,000円まで
3 専業主婦(夫)等(第3号被保険者)
月額23,000円まで掛金を拠出することができます。
<運用について>
運営管理機関が提示している運用商品(預貯金、投資信託、保険商品等)の中から、加入者自身が運用指図を行います。運用商品を選定・提示する側は、必ず3つ以上35以下の商品を選択肢として提示することになっています。
提示された選択肢の中から、加入者自身が運用する商品を1つあるいは複数の商品を組み合わせて選びます。また、途中で運用商品の種類や割合を変更することもできます。
<給付について>
iDeCoの給付は、「老齢給付金」、「障害給付金」、「死亡一時金」、「脱退一時金」の4種類があります。それぞれの受給要件等についてみていきましょう。
1.老齢給付金:
原則60歳に到達した場合に受給することができます。ただし、60歳時点で確定拠出年金への加入者期間が10年に満たない場合は、支給開始年齢を引き伸ばすことになっています。加入期間が10年未満の方の支給開始年齢は、次の通りです。
- 8年以上10年未満 61歳
- 6年以上 8年未満 62歳
- 4年以上 6年未満 63歳
- 2年以上 4年未満 64歳
- 1月以上 2年未満 65歳
なお、老齢給付金は、5年以上20年以下の有期または終身年金(規約の規定があれば一時金も選択可能)により給付されます。
2.障害給付金:
70歳に到達する前に傷病によって一定以上の障害状態になった加入者は、60歳に到達する前であっても障害給付金を受給することができます。障害給付金も老齢給付金同様に、5年以上20年以下の有期または終身年金(規約の規定があれば一時金も選択可能)により受け取ることができます。
3.死亡一時金:
万が一、加入者等が死亡したときには、その遺族が資産残高を受給することができます。給付の方法は、一時金のみとなります。
4.脱退一時金:
iDeCoにおける脱退一時金は、個人型記録関連運営管理機関または国民年金基金連合会に請求することで受給できます。受給には次の要件すべてに該当している必要があるため、希望すればかならず脱退一時金を受け取ることができるわけではありません。この点は重要なポイントなので、しっかり押さえておきましょう。
- 国民年金保険料免除者であること。
- 障害給付金の受給権者でないこと。
- 掛金の通算拠出期間が3年以下であること(退職金等から確定拠出年金へ資産の移換があった場合には、その期間も含む)または資産額が25万円以下であること。
- 最後に企業型年金加入者または個人型年金加入者の資格を喪失した日から起算して2年を経過していないこと。
- 脱退一時金の支給を受けていないこと。
<年末調整について>
iDeCoは、拠出金が全額所得控除になるため、節税効果を期待することができます。年末調整を行う際に、生命保険料控除証明書と同様に、運営管理機関より送付されてくる「小規模企業共済等掛金控除証明書」を忘れずに会社へ提出するようにしてください。
節税効果を期待して、iDeCoに加入をしている方もいらっしゃいます。会社の担当者は、年末調整時に提出された「小規模企業共済等掛金控除証明書」もかならず年末調整に反映させるようにしましょう。
また、年末調整の計算を間違えてしまうと、会社への不信感につながります。年末調整の資料を従業員の方から集める際は、証明書の提出漏れがないかどうかをしっかりと確認することが大切です。
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経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。
(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
川島孝一(カワシマコウイチ) 人事給与アウトソーシングS-PAYCIAL担当顧問
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所在地 | 港区 |