多様な人材を全て活かせるように‥
もうすぐ新年度を迎え、新しい社員が入ってくる企業も多いことでしょう。
今日の雇用情勢ですが、依然として失業率の改善には至らず「就職難」と言われる一方、中堅・中小企業にとっては「人手不足」といった声も聞かれるようになっています。
新卒・中途採用を問わず、「欲しい人材が来ない」と嘆く経営者や人事担当者も少なからずいらっしゃるようです。
でも、果たして本当にそういえるでしょうか‥
確かに、医療技術者やシステムエンジニア等、特殊な専門的技能を必要とする職種であれば、採用するといってもその対象は相当に限られてきます。
しかしながら、こうした特定分野以外の殆どの職種におきましては、特に経験がなくとも社内できちんと指導・教育していけば十分に通用するはずですね‥
それなのに、「人材が来ない‥」と言われてしまうのは、採用する企業側での先入観等による選り好みや実践的な指導・教育体制の未整備によるものといえます。
「人物本位!」といいながら学歴や年齢・性別だけで振り落とす書類選考、「個性重視!」といいながら能力に関係なく外見上の第一印象だけで落としてしまう粗雑な選考、「意欲のある人を!」といいながら実際には経歴に書かれた実務経験を最優先してしまう選考― いずれも旧態依然とした古い常識に縛られた選考方法で多くの有能な人材獲得のチャンスを自ら失っているものといえるでしょう。
また、中途採用の場合ですと、「即戦力で採ったのだから指導は必要ない!」といって本人任せに仕事をさせ、何か失敗すれば「本人の努力が足りない」「下手な人材を採ってしまった」等と非難し、結局は早々に解雇してしまう― こんな事を繰り返していたのでは、いつまでたっても人材確保が出来ないことは明らかです。
それでも、一昔前なら人材側で職場の不十分な実情に合わせてくれたかもしれませんが、各種の人事統計を見ましても分かりますように、今日の人材が持つ仕事への意識は、高度経済成長期やバブル景気の時代のそれとははっきりと異なっています。もはや、「モーレツ社員」や「24時間戦える社員」は極々少数派でしかなく、多くの社員は仕事よりも家庭や個人の生活を重視することを望んでいるといった現実を理解しておかなければなりません。
そこで、今日企業に求められている人材獲得・育成のあり方とは、多様化した意識の下で様々な個性や能力を持っているはずの人材に対し、当人の状況や将来への展望も十分に考慮した上で個々の人材に適した教育・指導を行い、その人材の潜在能力を引き出し就業意欲を高めることで、人材として十分に活かすことといえます。
正直このような個性・能力を引き出す為の人事施策を建前ではなく本気で十分に検討し行っている企業は、日本においては非常に数少ないものといえるでしょう。
景気後退の局面に際し、企業では常に経費の無駄遣いの見直しが叫ばれていますが、企業にとっての最大の無駄遣いとは、ろくに選考もせず不採用にしたり、ろくに指導・教育もせずに人を変えたりすることに他なりません。これでは、折角の人材を活かせないことに加え、人材としてやってきた人もまた路頭に迷うことになり、社会にとっても大きな損失になります。更に会社にとって行き着く所は、意欲ある人材をないがしろにしたことによる評判・信用の低下→業績への悪影響でもあるでしょう。
つまり、「人材の無駄遣い」こそ、あらゆる意味において最も大きな無駄といえるはずです。
縁が合って応募しさらには入社して来られた方ですし、相応の採用コストも既にかかっているわけですから、決してそういった方々を粗末に扱ってはいけません。
多種多様な人材を十分活かせるよう、今一度採用・受入れ体制を考えて直してみることが、企業のさらなる発展と共に人材の雇用安定や社会全体の利益にとっても大切なことですね!
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服部 康一(ハットリ コウイチ) 服部賃金労務サポートオフィス代表
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