【後編】趣味はメンタルの非常口|自己効力感を回復するために
趣味はメンタルの非常口——ぐるぐる思考を止め、自己効力感を取り戻す
忙しい時期ほど、頭の中で同じ映像が何度も再生されることがあります。
「あの言い方、まずかったかな」
「もっと早く気づけたんじゃないか」
「次は失敗できないな」
そんなふうに、終わったはずの出来事が、もう一度、もう一度と戻ってくる。
こういう状態を、心理学では「反すう」と呼びます。
難しい言葉に聞こえますが、要は“ぐるぐる思考”です。
真面目な人ほど、責任感が強い人ほど、反すうに入りやすい。
ここはまず、安心してほしいところです。
あなたが弱いからではありません。
むしろ、頑張っている証拠みたいなものです。
ただ、問題は「長く続く」ときです。
反すうが長引くと、心は疲れます。
視野が狭くなり、気持ちが重くなり、眠りが浅くなり、集中力が落ちます。
そうなると、さらにミスが増えやすくなって、また反すうが増える。
悪い循環に入りやすいんです。
ここで私は、はっきり言っておきたいことがあります。
「気合いで止めよう」とすると、だいたい止まりません。
反すうは“意思の弱さ”で起きているわけではないので、根性でねじ伏せようとすると、かえって疲れます。
だからこそ、必要なのは別の方法です。
私が実感として頼りにしているのは、趣味を「非常口」として使うという考え方です。
趣味は「現実逃避」ではなく、現実に戻るための非常口
非常口というと、ちょっと大げさに聞こえるかもしれません。
でも、しんどいときほど、この例えがしっくりきます。
非常口は、建物から逃げるためのものではありません。
命を守って、また戻れるようにするためのものです。
趣味も同じです。
仕事から逃げるのではなく、心の酸欠を防いで、現実に戻るための通路になる。
私はそう思っています。
忙しいビジネスパーソンほど、「ずっと仕事の部屋」に閉じ込められがちです。
机の前にいなくても、頭は会議室にいる。
布団に入っても、メールの返信を考えている。
そんな状態が続くと、心が換気不足になります。
趣味は、そこで一瞬だけ窓を開けてくれます。
外の空気を吸わせてくれる。
そして、また戻れるようにしてくれる。
なぜ趣味が効くのか——難しい言葉を使わずに説明すると
メンタルヘルスの視点から見たとき、趣味のメリットは大きく分けて4つあります。
できるだけ平易に言いますね。
1.「注意の切り替え」で、ぐるぐる思考が止まりやすい
反すうは、同じ場所をぐるぐる回る状態です。
そこから抜けるには、気合いで止めるより、別の場所に注意を移すほうが現実的です。
趣味は、これが起きやすい。
音を聴く、手を動かす、景色を見る、作る、撮る。
趣味には、注意を“いまここ”に引き戻す要素があります。
だから、ぐるぐるが一度止まりやすい。
ここが大きいです。
ここで重要なのは、時間の長さではありません。
「3分でも止まる瞬間が作れる」ことが価値です。
2.「自分で選ぶ」が戻ると、人は回復しやすい
仕事は、どうしても“選べないこと”が増えます。
相手、締切、ルール、優先順位。
正しいことをしていても、心がすり減るのは自然です。
その中で趣味は、基本的に“自分で選ぶ”世界です。
何をするか、どこまでやるか、いつやめるか。
自分で決めていい。
ここで自分の主導権が少し戻ります。
この「自分で選べる感覚」は、回復に直結します。
小さくても、主導権が戻ると、呼吸が深くなります。
人は「自分の人生を自分で運転している感覚」があると、折れにくくなるんです。
3.小さな完了が、自己効力感を回復させる
ここは、ビジネスパーソンに一番効くポイントだと思います。
疲れているときほど、人は「できていないこと」ばかり数えます。
終わっていない仕事、うまくいかなかった会話、達成できていない目標。
すると自己評価が下がっていく。
そんなとき、趣味は“ちいさな完了”を作れます。
DTMなら「2小節だけ作った」
写真なら「3枚撮った」
散歩なら「10分外に出た」
読書なら「2ページ読んだ」
これくらいで十分です。
小さいけれど、完了は完了です。
「自分は動けた」という証拠になります。
自己効力感の土台になります。
そして、趣味で積み上げたものが仕事で役立った瞬間、自己効力感は一段上がります。
「自分はまだ伸びる」
「自分には資源がある」
この感覚は、メンタルの回復にとって相当強いエネルギーになります。
4.没頭は、心の緊張をほどく
趣味には、没頭が起きやすいものがあります。
DTMのように、試して、聴いて、調整して…とやっていると、気づけば時間が溶ける。
あれは単なる気分転換ではなく、心の緊張がほどけていく現象でもあります。
没頭が起きると、「不安の再生」が止まりやすい。
仕事のことを忘れる、というより、“不安に回す燃料”が一時的に止まる。
だから回復が起きやすい。
私はそんなふうに捉えています。
今日できる、メンタル回復の「3分プロトコル」
最後に、今日からできる形に落とします。
やる気がなくてもできるやり方です。
これだけで、反すうの渦から抜ける“出口”を作れます。
出口があるだけで、心はかなり楽になります。
さて、趣味の力は、ここで終わりません。
趣味は個人を回復させるだけでなく、共有された瞬間に「人と人の間」に働き始めます。
会議の前の3分が、場の空気を変え、チームの文化を育てることがあるんです。
趣味の話は「正解がない」からこそ、人は安心して語れます。
語り始めると止まらないのは、話し手が熱を持っているからだけではなく、聞き手も本当は“何かを感じたい”し、“つながりたい”からなのかもしれません。
趣味は個人の回復で終わりません。
共有された瞬間に、そこにはもう小さな文化が芽生えています。
私は、その芽が職場の空気を変え、会議の質を変え、そして人を元気にしていくのを、何度も見てきました。
「止まらない(笑)」は、むしろ健全なサイン
ミニ文化祭が時間延長になりがちなのは、運用が下手だからではありません。
むしろ、うまくいっているサインです。
なぜなら、そこでは次の連鎖が起きているからです。
自己開示が起きる(趣味・最近の感動)
→相手が「その人」を感じる(立体的に見える)
→質問が自然に出る(興味が生まれる)
→共感が生まれる(温度が上がる)
→「この場は話していい」という感覚が増える
→そのまま会議に入ると、発言や相談がしやすくなる
つまりミニ文化祭は、雑談ではなく「チームの土台」を整える時間なんです。
そしてビジネスパーソンにとって重要なのは、ここです。
心理的な土台が整うと、仕事の効率が上がる。
意外に思われるかもしれませんが、会議で詰まる原因の多くは、ロジックではなく“空気”にあります。
• 質問しにくい
• 反対意見が言いにくい
• 相談が遅れる
• 失敗が隠れる
• 本音が出ない
これがあると、どんなに資料が完璧でも前に進みません。
ミニ文化祭は、ここを小さく改善します。
ミニ文化祭が効く「科学的な説明」をやさしく言うと
難しい言葉は使わず、要点だけにします。
ミニ文化祭の効果は、主に次の4つです。
1.人柄が見えると、警戒が下がる
仕事では、役割でしか会話しないことが多いですよね。
「営業の〇〇さん」
「品質の〇〇さん」
「上司」
「部下」
役割だけで見ていると、人は無意識に身構えます。
趣味の話は、その役割の外側にある“その人らしさ”を見せます。
すると警戒が下がり、言葉が柔らかくなります。
これは会議の前に起きると特に効きます。
2.正解のない話は、発言の練習になる
趣味の話には、正解がありません。
だからこそ「話しても怒られない」「間違っても大丈夫」が生まれやすい。
この感覚は、そのまま会議の発言に繋がります。
いきなり業務の議題で発言するのは難しくても、趣味の話なら話せる。
ここで“声を出す”練習ができるんです。
3.感動や驚きは、視野を広げる
趣味の話には、ワクワクや驚きが混ざります。
それを聞くと、場に少し明るさが入ります。
すると、視野が広がり、発想が出やすくなります。
ビジネスパーソンが疲れているとき、会議が重くなるのは自然です。
重いときほど、まず温度を上げる必要があります。
ミニ文化祭は、その温度上げの役割を果たします。
4.共有された瞬間に、文化が芽生える
趣味は個人のものに見えますが、共有された瞬間に「場のもの」になります。
「そのやり方いいね」
「今度やってみたい」
「うちのチームでも流行りそう」
こんな言葉が出た時点で、文化の芽です。
だから私は、ミニ文化祭を「ミニ文化祭」と呼ぶのが好きなんです。
文化は、制度ではなく習慣で育ちます。
小さな習慣が、職場の空気を変えていきます。
さて、趣味を「個人の回復」から「チームの文化」へ広げる話をしてきました。
最後は、それをどうやって忙しい毎日の中に“実装”するか、です。
趣味を続ける仕組み、共有する仕組み、そして仕事と人生に効かせる設計図を、まとめていきます。
忙しい人ほど趣味が必要——趣味を人生と仕事に“実装”する設計図
ここまで、趣味が心の余白をつくり、発想を育て、メンタルを回復させ、さらに共有されることでチームの文化まで変えうる——そんな話をしてきました。
読者の中には、こう思った方もいるかもしれません。
「理屈は分かった。でも結局、忙しいと続かないんだよな」と。
その感覚は、とても自然です。
趣味は大切だと分かっていても、後回しになりやすい。
むしろ、忙しい人ほど真面目なので、趣味を“やっている場合じゃない”と判断してしまう。
だから最後は、精神論ではなく、実装の話をします。
趣味を「気分」ではなく「仕組み」に落とす。
忙しくても、疲れていても、続く形にする。
そして、個人の回復からチームの文化へ、必要に応じて広げていく。
ここができると、趣味は本当に“仕事に効く”ようになります。
趣味が仕事に効いた瞬間、自己効力感が跳ね上がる
そして、ここが一番のご褒美です。
趣味で得た力が、仕事で役に立った瞬間。
この瞬間に自己効力感がぐっと上がります。
私はこれを、何度も体感してきました。
DTMで「微調整する力」を育てていると、講演の構成や言葉選びが丁寧になります。
旅先で「観察する癖」を育てていると、現場の違和感に気づきやすくなります。
ミニ文化祭で「人の感動を聴く」経験が増えると、相手の価値観を扱うのが上手くなります。
こういう小さな積み重ねが、仕事の土台を太くします。
そして土台が太くなると、人は折れにくくなります。
忙しい人にこそ伝えたい結論
趣味は、余裕がある人の贅沢ではありません。
忙しい人ほど、必要なものです。
趣味は、心の余白をつくり、発想を育て、メンタルを回復させます。
さらに共有されると、チームの文化まで育ちます。
ここまでくると、趣味は「個人の好き」を超えて、仕事と人生を支える“技術”になります。
だから私は、こう言いたいです。
• 忙しいなら、3分でいい
• 疲れているなら、触れるだけでいい
• うまくやろうとしなくていい
• ただ、余白を取り戻してほしい
余白があると、人はまた丁寧になれます。
丁寧になれると、仕事の質も、人間関係も、確実に変わります。
もし、あなたの職場でも形にしたいなら
趣味を「個人の回復」で終わらせず、「チームの文化」へつなげるには、少しだけ設計が要ります。
ミニ文化祭も、ルールが少なすぎると流れず、ルールが多すぎると続きません。
ちょうどいい塩梅が必要です。
私は、こうした“人が回復し、発言し、文化が育つ”仕組みを、メンタルヘルスの観点と実務の現場感の両方から、講演やワークショップとしてまとめてお手伝いすることができます。
もし、
「うちの職場でも導入したい」
「会議の空気を変えたい」
「メンタルヘルスを制度ではなく習慣で整えたい」
——そんなテーマに関心があれば、気軽に声をかけてください。
あなたへ——一番大切なメッセージ
最後に、読者のあなたへ。
もし今、疲れているなら。
もし「余白がない」と感じているなら。
まずは自分を責めないでください。
疲れたのは、あなたが弱いからではありません。
疲れる構造の中で、ちゃんと頑張っているからです。
だから回復も、気合いではなく構造でつくる。
趣味は、その構造の中に入れやすい「回復装置」だと私は思っています。
ただ、ここも誠実に書いておきます。
もし不眠が続く、食欲が落ちる、気分の落ち込みが長く続く、日常生活がつらい
——そういう状態があるなら、趣味だけで抱え込まず、医療や専門家に相談してください。
趣味は治療の代わりではありません。
でも、回復を助ける大切な要素にはなります。
あなたを回復させ、また働き、生きる力を戻すものです。
今日、3分だけでいい。
あなたの心が動くものに、触れてみてください。
このコラムを書いたプロフェッショナル
坂田 和則
マネジメントコンサルティング2部 部長 改善ファシリテーター・マスタートレーナー
問題/課題解決を現場目線から見つめ、クライアントが気付いている原因はもちろん、その背景にある奥深い原因やメンタルモデルも意識させ、問題/課題改善モチベーションを高めます。
その先の未来には、改善レジリエンスの高い人材が活躍します。
坂田 和則
マネジメントコンサルティング2部 部長 改善ファシリテーター・マスタートレーナー
問題/課題解決を現場目線から見つめ、クライアントが気付いている原因はもちろん、その背景にある奥深い原因やメンタルモデルも意識させ、問題/課題改善モチベーションを高めます。
その先の未来には、改善レジリエンスの高い人材が活躍します。
問題/課題解決を現場目線から見つめ、クライアントが気付いている原因はもちろん、その背景にある奥深い原因やメンタルモデルも意識させ、問題/課題改善モチベーションを高めます。
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| 得意分野 | モチベーション・組織活性化、リーダーシップ、コーチング・ファシリテーション、コミュニケーション、ロジカルシンキング・課題解決 |
|---|---|
| 対応エリア | 全国 |
| 所在地 | 港区 |
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