残業の正体 ~ 残業を減らすために本当に必要なこと ~
前回のコラムでは、改革活動におけるリーダー選びのヒントをご紹介しました。今回は、日常業務で問題になることが多い残業についてです。
管理職の多くが「残業を何とか減らせないか」と頭を抱えている
ある企業様での管理職を対象とした研修での出来事です。この研修は、管理職が将来の姿をゴールとして描きつつ、ゴールの達成に必要な課題解決力やチームマネジメント力を高めるための研修です。この研修の中に、参加者の課題を題材としたグループ討議のパートがあります。ワークショップ形式で課題解決の勘所をつかむことが目的です。
ここでいう課題とは、前回のコラムで紹介したような変革時の課題を指します。つまり、「お客さまの満足度を上げたい」「売上を増やしたい」「費用を削減したい」といった事業課題を想定しています。しかし、「残業を減らしたい」という課題が挙げることは珍しくありません。これまでに約200名の方に受講していただきましたが、2割近い方が残業に関する課題を口にされていたように思います。
「業務の全体像を把握して、効率の悪い業務を改善する」というアプローチ
課題解決のアプローチを学習してもらうために、このようなアプローチで討議することがあります。正しいアプローチに思えますが、少し注意が必要です。よく陥りがちな落とし穴があるのです。
その落とし穴が何かを述べる前に、残業についてもう少し考えてみましょう。職場には、いろいろな人がいます。何人かの心の声を聞いてみましょう。
Aさん:「よし!今日の仕事は終わった。ちょうど定時だし、すぐに帰りたいけど、みんなは今日も遅そうだなぁ。しょうがないから、誰か帰るときに一緒に出よう。」
Bさん:「先週は結構暇だったけど、今週はいろいろ仕事があるから残業をつけよう」
Cさん:「あー、もうこんな時間だ。今日も残業決定だな。どうして自分ばかり忙しいのだろう。暇な人もいるのに何とかしてほしいものだ。だいたい課長は。。。」
いかがでしょうか? この心の声の中にも、落とし穴のヒントが隠されています。効率の悪い業務を突き止めて改善するというアプローチの落とし穴を、2つ解説していきましょう。
落とし穴1:効率の悪い業務を突き止めること自体が難しい
そもそも職場の業務の効率性を評価することは簡単なことではありません。すべての業務の内容と所要時間をつかんで、所要時間が妥当かどうかを判断する必要があるからです。特に、人による業務量のバラつきが大きい職場では、業務の効率性を正当に評価することはますます難しくなります。
時間に余裕のある人ほど業務を効率化しようとする意欲が弱く、忙しい人ほど時間を捻出するために業務を改善する傾向があります。このような傾向に着目して、人による業務量のバラつきが大きい場合には、次のような打ち手も考えられます。Cさんのように忙しい人に「工夫して改善した業務、または改善できそうな業務は何か?」を聞いて、余裕のある人に渡していくのです。新しく業務を渡された人は忙しくなりますから、業務の改善の必要性が高くなります。業務の効率性を評価するために悩み込んでしまうよりも、このような改善方法を検討した方が効果を早く出すことができます。
落とし穴2:感情的な原因によっても残業は発生している
業務の効率は、感情によって大きく変わります。Cさんは確かに忙しい方かもしれませんが、いつの間にか会社や上司への不満について考えてしまっています。上司の発言や周囲のうわさ話などが気になって、仕事がはかどらないことも珍しくありません。
また、職場全体の雰囲気も個人の感情に大きく影響します。リラックスしつつも、適度な緊張感があり、モチベーションが高く保たれている職場は効率性が高くなります。職場の雰囲気が悪い状態では、管理職が「業務の効率が悪いから改善しよう」などと号令をかけても、前向きに受け止めてもらえないことが多くなります。
業務の総量だけではなく、人による業務のバラつきや、職場の雰囲気も大きな影響を及ぼす
残業を減らすためには、非効率な業務を改善して業務の総量を下げるだけではなく、人による業務量のバラつきを抑え、職場の雰囲気をよくすることも大切なのです。つまり、業務を適切に分担し、職場の雰囲気をよくしていけるようなチームマネジメントが重要と言えます。
「残業が減らない」と嘆く管理職の中には、部下への不満で頭の中が一杯の方もいます。この場合は、業務を改善するよりも部下との信頼関係を修復するようなチームマネジメントが重要なのです。
(次回は、『チームマネジメントを強化する4つの丸太』をご紹介する予定です)
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リーダー達が、自社の変革活動を進め、着実に成果を出しながら、次のステージへと成長していくために、パートナーとして支援する“変革コーチ”です。
豊富な改革支援の経験をもとに、既存事業の強化や新規事業の立ち上げといったテーマを題材として、「適切な課題設定」「効率的な課題解決」「適度なイノベーションによる新事業の創造」「ビジネスモデルの構築」などを実践できる力を身につけていただけます
大國 仁(オオクニ ジン) 株式会社ACWパートナーズ 代表パートナー
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