課題の難しさと改革リーダーの人選
前回のコラムでは、改革活動で成果を出す人材を見分ける方法について紹介しました。今回のテーマは、リーダーの人選について、もう一歩踏み込んでみたいと思います。課題の難しさを踏まえたリーダーの人選です。
「あるべき姿とのギャップ」だけでは語れない。改革活動における課題とは何か?
改革活動では、課題設定が成否を分けるといっても過言ではありません。課題の設定が適切で、その課題についての認識が全社で共有されていると、改革活動がスムーズに立ち上がり、成果とともに活動が加速するものです。一方課題設定が不適切だと、課題設定そのものに対する疑問や、腹落ちしていない課題に取り組むことへの不満などが沸き起こります。
多くの改革活動では、既存事業の強化に軸足が置かれます。既存事業の強化なくして、新規事業の立ち上げは難しいからです。『既存事業の強化』に関わる課題では、“事業プロセスの強化”が中心となります。事業プロセスとは、開発、購買、製造、物流、営業、アフターサービスといった事業を構成する基本プロセスです。“事業プロセスの強化”と連動して、事業プロセスを担う“組織・体制の強化”や、事業プロセスと組織・体制を機能させるための“インフラ・仕組みの整備”へと課題領域を広げていきます。
どのような要因によって、課題の難しさが決まるのか?
課題の難易度に影響する要因には、大きく深さと広さの2つがあります。
深さとは、その課題を解くための高い技術や専門性です。例えば、商品の価値や競争力を生み出すコア技術や、品質や生産性を高い次元で安定化させるための生産技術などに関わる課題は、深さという意味で難しい課題と言えます。
広さとは、利害関係者にどれだけ関わるかということです。関係者の人数だけではなく、いくつの部門が関わるのか、社外との協業があるのか、顧客の思考や行動に変化を促す必要があるか、といった利害関係者の所属も難易度に大きく関わります。社内で完結するような原価の低減よりも、顧客の思考や行動を変えるような売り上げ向上の課題の方が難しくなります。組織としての動きを大きく変える改革活動ほど、広さという点で難しい課題が多くなります。
課題の難しさに応じて、リーダーをどのように選ぶのか?
社内で完結するような“事業プロセスの強化”の課題でも、次の3つの課題では難易度が異なります。下に行くほど難易度が高くなります。
・ 部署内の業務効率を高める業務改善
・ 組織横断的な業務プロセス改善
・ 業務を抜本的に見直すプロセス再構築
クロスファンクショナルチームによる活動が一時騒がれましたが、部署内の業務改善もできない人材には、部門を横断するような活動は推進できません。いきなり難しい課題に挑戦して失敗体験に終わることは、人材育成の観点ではよくありません。失敗を挽回して大きく成長できる機会があれば別ですが、そのような機会を設けられないと失敗体験を長く引きずってしまいます。適度にストレッチな課題を設定して、成功体験を積み重ねてもらうことが理想です。
次世代を担う人材に“どれだけ成功体験を積んでもらえるか”
若年層の離職率の高さやゆとり世代の力不足が懸念されていますが、失敗をバネにして成長できる人材も限られるのではないでしょうか?企業の人材開発に関わる方々は、次世代のリーダー候補者がどのような体験を積んでいるのか、より一層敏感になる必要があるのかも知れません。
(次回は、『残業の正体』をご紹介する予定です)
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リーダー達が、自社の変革活動を進め、着実に成果を出しながら、次のステージへと成長していくために、パートナーとして支援する“変革コーチ”です。
豊富な改革支援の経験をもとに、既存事業の強化や新規事業の立ち上げといったテーマを題材として、「適切な課題設定」「効率的な課題解決」「適度なイノベーションによる新事業の創造」「ビジネスモデルの構築」などを実践できる力を身につけていただけます
大國 仁(オオクニ ジン) 株式会社ACWパートナーズ 代表パートナー
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