成果を出す人材かどうかを10分で見分ける方法
前回のコラムでは、研修で学んだことを実行に移してもらうための工夫について紹介しました。今回のテーマは、改革活動で成果を出す人材を見分ける方法です。
改革活動を成功させるために、課題設定の次に重要なのが “リーダーの人選”
筆者は約10年間、組織横断的に経営課題を解決するリーダーのコーチを務めてきました。リーダーが財務効果などの成果を出して、次世代の幹部へと成長できるように、課題解決に有効な手法、チーム活動の進め方、そして経営陣への報告や提言のポイントなどを助言してきました。改革という真剣勝負の場を最大限活用した次世代リーダー育成支援と言えるかも知れません。
成果を出す上で最も重要なのは、課題の適切さです。課題の設定を誤ると成果が出ないばかりではなく、士気の低下などの副作用に繋がるからです。改革活動で取り組む課題については、経営幹部と議論を重ねて、慎重に決定する必要があります。その際に、検討すべき課題の領域、適切なサイズ感、優先順位のつけ方などについて、経営幹部をはじめ関係者の方に助言します。適切な課題を決定したら、次はその課題の解決を全うできるリーダーを選ぶことが重要となります。
リーダーの人選は、その企業の改革の推進者が中心になって候補者を挙げていくことから始まり、最終的には経営者による決定をもって完了します。候補者が現在担当している業務の全部または一部を、他の人に引き継いでもらうなどの調整も必要です。こちらからリーダーに求められる要件を参考情報として提供しますが、リーダーの人選には多くの制約を受けることになります。
成果と人材育成の両方にコミットするコンサルタント兼コーチ(=“変革コーチ”)にとって、リーダーの人選は顧客企業に価値を提供できるかどうかに直結することです。リーダーが任せられた課題を解決できそうか、メンバーや周囲からのフォローなど補うべきことは何か、コーチとしてどのように支援するかを、早い段階で判断する必要があります。そのため、リーダーの資質や能力を把握する感覚を磨いてきました。
リーダーの見極めは、最初にリーダーを紹介された瞬間から始まります。わずか10分程度という限られた時間の中でも、成果を出す人材かどうかを見分けることは可能です。
たった10分間で、どのように成果を出す人材を見分けるのか?
その方法は至ってシンプルです。
活動の開始前に「リーダーに指名されてどう思ったか?」と聞いてみることです。
成果を出すリーダーは、必ずその課題の根底にある問題や関連する情報について話してくれます。そして、その課題解決が自分のためだけではなく、仲間や社員のためであるということにも触れます。
一方、「リーダーに指名されたので、責任を全うしたい。その中でスキルアップをしたい」という人もいます。この場合は、残念ですが成果が限られてしまいます。本人は頑張っているのですが、あくまで自分のためということが限界をつくってしまうからです。特に、活動の山場を迎えて苦しくなってくると、「自分は頑張っているのに」という感情がメンバーに伝わって、メンバーの不信感につながっていきます。そして、メンバーの協力が得られなくなり、リーダー自身が手を動かせる範囲に活動が限られてしまうのです。
つまり、リーダーの人選において重要なことは、課題の本質への理解と周囲からの信頼の2つです。
筆者の場合は、最初にお会いする際に1時間ほど面談を設定します。そして、入社の動機からこれまでの業務経験についてもヒアリングしていくことで、その人の自社のサービス・製品に対する愛着や仕事に向き合う姿勢、そして周囲への配慮などを、具体的な事実と共につかんでいきます。面談の最後に、コーチとしてどの程度関与するか、具体的な支援の方法について、ある程度合意します。何事も最初が肝心です。プロジェクト活動のキックオフの前から、課題の解決はスタートしているのです。
「能力が上がればリーダーになれる」という誤解
多くのリーダーと真剣に向き合ってきて、気がついたことがあります。それは、「リーダーとして活躍できないのは、能力が不足しているからだ」と考えて、思考法や手法を学ぶことに一生懸命な人が多いということです。しかし、このような思考に陥っている場合には、真のリーダーとして成長することは難しいでしょう。
真のリーダーは、会社の事業や組織への強い問題意識を持っています。そのため問題点を的確に掴んでいますが、それを黙っているのではなく自ら発信します。自分のためだけではなく、仲間のことを思う気持ちも、発信する原動力になっています。そのような人には、周りもその人を後押ししてくれるものです。「自分もそう思っていた」「一緒にやりましょう」と声をかけてくる、言わば“同志”が現れるのです。そのような“同志”が集まれば、社内に動きが起こります。共に活動してくれる同志のために、必死に努力して最後までやり切ろうとするものです。その過程で資質や能力を高めていく、あるいは自然に高まっていくものです。
何かに真剣に取り組むという実践の結果として、能力が上がっていくのです。変革コーチとして最も重要な役割は、「まず一歩を踏み出してみよう」と思ってもらえるような動機づけになります。
(次回は、『課題の難しさと改革リーダーの人選』をご紹介する予定です)
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リーダー達が、自社の変革活動を進め、着実に成果を出しながら、次のステージへと成長していくために、パートナーとして支援する“変革コーチ”です。
豊富な改革支援の経験をもとに、既存事業の強化や新規事業の立ち上げといったテーマを題材として、「適切な課題設定」「効率的な課題解決」「適度なイノベーションによる新事業の創造」「ビジネスモデルの構築」などを実践できる力を身につけていただけます
大國 仁(オオクニ ジン) 株式会社ACWパートナーズ 代表パートナー
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