●人財育成と「メンター制度」(3)●
前回の人財育成と「メンター制度」(2)では「今、なぜ、メンターが求められているのか」をテーマとしてとりあげさせていただきましたが、今回は、よくある質問とて「コーチングとメンタリングの違い」について書かせていただいます。
●コーチングとメンタリングの違い(よくある質問)
書籍の中などでメンタリングとコーチングの違いが説明されていますが、それぞれの定義(コーチングの定義・メンタリングの定義)によってこれらの二つの概念の関係は、大きく変わってきます。つまり、同じ“メンタリング”と言っても、非常に狭い範囲のことを指して言っている場合と、広い範囲のことに触れている場合があるということです。もちろん、“コーチング”についても同じことが言えるのです。こういう議論をする時には、大抵の場合、人は、スキルに注目し、メンタリングではこんなことをするが、コーチングではこうだ・・・というケースが多いのですが、実は、そのようなアプローチはあまり本質的なやり方だとは言えません。この二つの違いを明確にするためには、共通点や相違点を様々な観点(目的・手段・考え方・・・など)からアプローチすることが必要です。
それでは、まず、それぞれの定義付けをしようと思います。残念ながら、メンタリングやコーチングが、広辞苑や辞書で明確に定義される段階ではありませんので、私なりの定義という限定付きでの定義という理解をして下さい。
★メンタリングとは:
組織やコミュニティにおける個別に行われる“トータルな支援の仕組み”を指します。真の支援マインド(被支援者の自律を意識した)を持ち、特定の領域において知識、スキル、経験、人脈などの豊富な人(メンター)が、未だそうでない人(メンティ)に対して成果と効果の両面において、共に学びながら(共創・共進化しながら)継続して行う支援行動全体を意味しています。
★コーチングとは:
コーチ(支援者)が、クライアント(被支援者)とコミュニケーションを交わすことによって,クライアントが実現したいゴールを明確にし、その目標達成に向けて必要な“知識”と“スキル”を持ち,効率的に(最短の時間で)高い成果が上がるよう継続的にサポートしていく双方向のコミュニケーションプロセスを意味しています。
上記の定義では、少し抽象的で分かり難いと思いますので、具体的にその背景や内容について2つの概念の共通点と相違点をまとめてみようと思います。
●共通点
個人の成長と学習の成果を上げるために1対1の関係性を持つ点や個人のニーズ、個人のスタイル、個別の時間的制約に対応する点が共通していると言えます。どちらも良い結果を導き出す行動の支援となります。
●相違点
相違点ですが、大きくは、その目的とアプローチの方法にあります。コーチングの目的は、具体的な目標の達成を支援することですが、それに対してメンタリングの目的は、広範囲の可能性を視野に入れた個人の能力開発を進めることになります。また、コーチングのアプローチが、設定した目標と現状とのギャップ(特に小さな段階)に着目するのに対して、メンタリングでは、全体像を考慮しながら個人の目標設定、行動計画、実行の変化するプロセスに着目します。
上記の相違点を見ていただくとお分かりのように、メンタリングの概念は、コーチングの概念を含むカタチになっています。簡単に言うと、“メンタリング”は、“人生というスパンで他人を支援する”という大きな概念であり、その為にメンターは、様々なスキルを必要とするのですが、その一つが、“コーチング”であるということです。
今回は、「コーチングとメンタリングの違い」をテーマとしてとりあげさせていただきましたが、次回は、「メンターの姿勢」について書かせていただいます。ご購読いただき、ありがとうございました。
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人(個人と組織)の元気と本気を創るメンター/コンサルタント
企業の人材育成と学校教育の両分野で価値のブレイクスルーを通してモチベーションを高める独自の手法を用い、研修、講演活動などを行っている。 コンサルティング分野では、メンター制度導入、ミッションマネジメント、などを行っている。
大野雅之(オオノマサユキ) 株式会社統合共育研究所 代表取締役 メビウス人財育成グラジュエートスクール 学長
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