メンタルヘルス問題に会社が取り組んでもうまくいかない理由3つ
新型コロナが猛威を振るっておりますが
「インフルエンザのようになってく(はず)」
といわれます。
つまり、罹ったらそれなりに大変ですが
ワクチンで予防しつつ、
早いうちに検査をしてインフルエンザの薬を処方すれば
ほぼ悪化せず治療できる
といった、いわゆる
『治療モデル』
の考え方です。
メンタルヘルス問題を、『会社の患部』として対応をするとしたら
1.まずは、メンタルヘルス問題がどのようなものかを知る
2.そうならないように、予防策をとる
3.なってしまった場合は、適切な治療を受けて早期の復帰を目指す
本当にこのようにできたら
悪くないですね。
では、なぜ、うまくいかないのでしょう。
先ほどの「治療モデル」は
何に対して
だれが戦っているのか
わかるでしょうか。
ウイルスに対して
診断する明確な基準
と
ワクチン
と
治療薬
が戦っています。
厳密に言えば、罹ってしまった方も戦ってはいるのですが、
罹ってしまった方が、配慮が必要な病気とか、高齢であるとか、そういった事情を除けば
ほぼ、同じ対応がとられます。
メンタルヘルス問題に取り組んでいるのに、うまくいかない会社の第一はここです。
ポイント1
『メンタルヘルス問題をひとくくりにしてマニュアルを作っていること』
これは、例えば
会社内に一人のカウンセラーを配置しておけばいい
と考えているような場合です。
確かに、専任のカウンセラー、心理職を設置している会社さんは、
日本の中ではまだ多いほうではありません。
しかし
よほど熟練して、様々な職場を知っている心理職でないと、多様な問題についてワンストップでメンタルヘルスを担当することは困難でしょう。
個人的なお話をさせていただくなら
わたしも、このメンタルヘルス問題の多様性と、
反対の意味で、行政や医療によって縦割れされた対応にイライラさせられた一人です。
子どもの非行の相談は学校、警察、鑑別所、教育相談所
夫婦の問題は、カウンセリングルーム、家族療法のワークショップ
経済問題は、FP、税理士、弁護士
職業問題は、労基署、ハローワーク、キャリアコンサルタント
精神疾患は、精神科、心療内科、カウンセリングルーム
しかも、こうした問題は、一つだけ、単独の姿では出てきません。
そうすると、クライアントがたらい回しにされる、という状態があり
わたしはそれが見ていられませんでした。
そんなことから、とにかくすべての領域を見たいと思い、
少年院の教官にはじまり
スクールカウンセリング
教育研究所
カウンセリングルームの運営(医療連携、労働問題)
行政の各種委員会
大学でキャリア開発
など、老人関係の職場以外については、ほぼ経験してきました。
ただ、これでも、老人介護などの相談がきたら、
「ちょっとすみません・・・」
といわなければなりません。
このように、
人間の抱える問題というのは、非常に多様ですので、
メンタルヘルス問題に1つのマニュアルをつくって心理職を雇っただけでは
もちろん解決には程遠いのです。
2つ目は
『治療モデルではなく、成長モデルで見ることができていないこと』
です。
先ほどの、インフルエンザの例でいえば、
「インフルエンザウイルスだ」
とわかったら、それに合った治療薬を使います。
ところが、精神科のお薬というのは、抗ウイルス薬のような劇的な治療効果がすぐには出ません。
たとえて言うなら、頭痛薬のようなものもあり
「不安が強くなったら飲んでください」
というような、対症療法的な投薬も少なくありません。
睡眠薬についても、寝つきが悪ければ睡眠導入剤、といった具合です。
もちろん、心理職としては、精神科医療に携わる際には、医師の指示による治療モデルを優先します。
ただ、子どもの問題や、青年期の問題に見られるように
「成長の一過程」
という視点も、精神症状が無い場合にはもちろん必要です。
例えば、
従業員の態度が悪い
仕事にやる気がない
ということで精神科にかかってもどうかと思います。
少子高齢化と人口減少が進む中、様々な働き手がいますので、
『この従業員が、どんな人生のプロセスを歩んでいくのか』
そのプロセスの一つである職場として、どのように従業員を育てていくのか
という「成長モデル」の考え方は、確実に必要となります。
これは、言い換えると「発達モデル」ともいえるのですが
極端な話で
皆さんの目の前にいる「問題のあると感じる従業員」の方が、
何かのアニメのようですが
『体は大人、中身は子ども』
だった場合、いくら大人の理論で説明したり説得しても、通用しません。
例えば、5歳の子どもに、25歳の話が通じるようになるには、
それなりの経験や順序、時間が必要です。
ですので、何か対策をしたからと言って、いきなり成長することは稀です。
ですので、単なる「社員教育」という意味ではなく
「人生の中での、会社の意味を位置づけていく」
ということがメンタルヘルスに取り組むうえで、必要な視点になっていきます。
最後ですが
ちょうど、この原稿を書いているとき、
わたしが本業で何をしているかといいますと
わたしがかかわっている福祉法人で、コロナ感染が発生し
利用者の方の感染が明らかになり、その対応でバタバタしていたものが
ちょっとひと段落したところで書いています。
わたしは、法人の理事長でもありますが、
こういう「ピンチ」は、やはりあまり好みではありません。
管理職の方は、
トラブルはいやだなぁ
というところでは共感していただけるのではと思います。
ただし
これは、個人的には「良い機会」ととらえることもできます。
なぜか
わたしが、どのように判断し、
どのようにバタバタしている職員や外部の方にかかわるか
ということは、
周囲はすべて見ています。
わたしがそこでどんな顔をして、何を言うのか
こうしたピンチの時には
管理職の方の力を見せるチャンスです。
もし
冷静に、着実な対応をとることができ
難しい事態をそこそこにでも乗り切れた時には
そうした対応は、必ず良いほうに働くはずです。
ですので、
メンタルヘルス問題も同様です。
「大変だなあ」
「ちょっと、あいつ何とかしてよ」
「病気かぁ・・・」
こんな感じでは、うまくいかないのは当然なのです。
3つ目は
「トラブルを自分事として生かせる管理職の姿勢」
です。
この3つがそろって、
「メンタルヘルス問題に取り組んでいこう」
と考えていくと、現在のまずさが見えてくるはずです。
今後も、情報提供をしていきますので、ぜひお付き合いください。
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