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1on1あるある課題:1on1で管理や指導はNGなのか?

本連載コラムでは、1on1を導入している企業における、1on1に対する疑問・課題に、日本でいち早く1on1の必要性を唱えたアジャイルHR代表の松丘啓司がお答えします。数多くの企業で1on1導入の支援を行い、述べ6000名以上のマネジャーたちに1on1研修を実施してきたアジャイルHRだからこそお答えできる、マネジャーたちの「あるある」疑問。

 

第3回目のコラムは、上長・マネジャー対象の1on1研修で必ずでてくる、こちらの質問にお答えします。

 

Q. 1on1は指導や管理の場ではないと言いますが、メンバーの成長のためには課題点の指摘や、改善の指導は必要ではないのですか?

 

■1on1の起源と意義とは?

企業の導入目的によりますが、一般的に1on1は、上司が業務の進捗管理をしたり、メンバーの改善点を指摘して指導したりする場ではないとされています。

前回のコラムで1on1は「成長支援の場」であると解説しましたが、成長のためならば、業務の進捗を管理して遅れや間違いがあったら修正するよう促す。もしくはメンバー本人の課題点を指摘して改善させるのは成長に必要なのではないか?という疑問を持つ上長も少なくありません。

この疑問について、1on1が広がっていった背景から考えてみましょう。

1on1という用語はバスケットボールなどで使われたりするように、発祥はアメリカです。2010年を過ぎたくらいから、ビジネスの世界でも少しずつ広がってきました。

2010年ごろからいわゆるデジタル経済が進展し、それに伴ってGAFAなどのデジタル系の企業の勢力が急速に強くなっていった。あるいは、経営環境自体がいわゆるVUCAと言われるように、非常に不確実性が高くなり、「予想外」のことが頻繁に起こるような不安定な状態になった時代に入りました。

そのような環境下で、ビジネスモデル自体が従来のものから変わってきたというところが、大きな意味での背景と言えるでしょう。

ビジネスモデルがある程度、確立していると、上長は過去の経験から、どうすればうまくいくか、成長するために次は何をすればよいかとわかっているわけですが、上長自身がどうやればよいかわからないという状況になったので、上から命じたり指導したりという、上意下達の方法ではなかなか成果につながらなくなります。

また、市場もスピーディに絶え間なく変化しているため、上長が進捗を細かく管理して、都度指示をだすのでは、ビジネスチャンスを逃したり、必要な対応をタイムリーに行ったりすることができなくなってしまいます。

つまり、上からではなく、一人ひとりが自分で考えてやってみたり、一人ひとりが持っている違った視点や価値観を活かして自律的な動き方をしていかないと、イノベーションは生まれてこないし、成果にはつながっていかない環境になってきたのです。

そのため、一人ひとりが自分で将来のキャリアビジョンを描いたり、自分で目標を設定したり、それに向けて行動した結果を振り返って学んでいくということを自律的にできるように、上長は従来の管理・監督ではなく、「支援する」という役割に代わる必要がでてきているのです。

 

 

■自分で気づかなければ意味がない

上長の役割の変化は理解したものの、明らかに改善が必要な点や、課題をそのまま放置していいのか?と不安になる方もいることでしょう。

改善点や課題点をメンバーに理解してもらうのは必要なことであり、1on1の場で話すことは問題ありません。

ただ、改善点の指摘・指導は、上長が正解を持っているという前提で行われます。先述したように、これからのビジネス環境では、必ずしも過去の経験からくる判断が正しいとは言い切れないという前提があることは理解しておく必要があるでしょう。

また、1on1の主役はあくまでもメンバーです。上長が話したいことを話すのではなく、メンバーが話したいかどうか、また上長側がメンバーの話をしっかりと傾聴して相手を理解しようとするという姿勢があるか、ということが大前提となります。

本人が指摘されたことを「課題」として理解しなければ、上長がいくら「課題だ」「改善が必要だ」と伝えても、なかなか納得されません。

上長の側がストレートにダメ出しをしたり、君はここが問題だねと改善点の指摘をしたり、どちらかというと自分の考えを一方的に伝えると、部下の側は、自分はやっぱりだめなのかな?あるいはまた否定されるのではないか?と思って、言いたいことが言えなくなってしまいます。

「〇〇さんは~を改善すると、もっと~が良くなると思うけど、どう思う?」というように、

・その課題を改善すると見えてくる効果をイメージさせる

・それに対して、メンバー自身の思いを聞く

というアプローチをしたうえで、その解決策やアイデアを一緒に考えるという姿勢を見せることで、メンバー本人も、課題を自分事としてとらえることができるようになります。

これがダメ、あれもダメと、ダメな点を指摘するのではなく、なぜそのような行動になるのか、本人の持つ価値観や特性を理解した上で、一緒に考えるという姿勢を忘れないことが大切です。

  • 経営戦略・経営管理
  • モチベーション・組織活性化
  • キャリア開発
  • リーダーシップ
  • マネジメント

日本において、1on1とOKRを含む、パフォーマンスマネジメントの重要性をいち早く唱え、多くの企業の経営者と共にマネジメント改革に携わる。

東京大学法学部卒業後、アクセンチュアにて、人と組織の変革を担当するチェンジマネジメントグループの立ち上げに参画。同社のヒューマンパフォーマンスサービスライン統括パートナー、エグゼクティブコミッティメンバーを歴任後、アジャイルHRを設立。

松丘啓司(マツオカケイジ) 株式会社アジャイルHR 代表取締役社長

松丘啓司
対応エリア 全国
所在地 港区

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