MBOに代わる新目標設定手法「OKR基礎講座」その2
OKRに関する情報は巷にあふれていますが、誤解されて受け取られていることも少なくありません。本コラムでは、日本においていち早くOKRの必要性を唱え、多くの企業でOKR導入支援を行ってきた、株式会社アジャイルHR代表の松丘啓司がOKRの基本的な考え方について分かりやすく解説します。
■第1回目のコラムは、OKRとは何か?、また多くの企業が取り入れているMBOの何が問題なのかを解説しました。第2回目のコラムは、OKRの「基本の5つの考え方」のうち、1つ目の「構造化とフォーカス」について解説します。
第1回目のコラムで、OKRは効果的な目標管理を行うための「考え方」のパッケージであると述べてきましたが、具体的にOKRにはどのような思想が込められているのでしょうか。
ここからは以下の図に従って、OKRの基本的な考え方を順番に解説していきます。
1.構造化とフォーカス
OKRでは目標を単に「目標」と一つに括るのではなく、O(Objective)とKR(Key Result)に構造化して設定されることがよく知られています。OKRはなぜ、そのような構造をしているのでしょうか。以下でその意味について解説します。
Objective(O):Objectiveは「到達したいゴール」「目指したい状態」を意味しています。つまり、誰かにやらされるのではなく、「どうなりたいか?」という設定者の主体的な意志が表現されることが必要です。そのため、Oは定性的な表現で構いません(例えば、「顧客から最初に選ばれるサービスプロバイダーになる」「新サービスが成長軌道に乗っている」など)。
1人ひとりが「これをやりたい」と主体的に目標を立て、その達成にコミットすることで当事者意識が高められ、熱意が引き出されることがOKRの重要なねらいです。目標の数が多すぎると、熱意のエネルギーが分散してしまうため、少数に絞り込むことが必要です。1人あたりのOKRの数は、3つ程度が一般的ですが、通常は1~5個くらいの範囲に収まります。
Key Result(KR):Key Result(KR)はObjective実現の成功要因となる、「測定可能で、期限のある、結果指標」を指しています。KRはO実現のための戦略とも言えるため、OとKRを構造化することによって、1つのOKRの中に、設定者の意志と戦略の両方を含めることが可能です。
KRは、何によってOが実現されたことが測定できるか、という視点で設定されます。もしKRがすべて達成されてもOが実現していなかったとしたら、当初のKRの設定が不適切であったといえます。
KRは測定可能な指標でなければなりませんが、結果指標でなければならず、「毎日、〇〇を何回実施する」といったTo Doやアクションのような行動指標ではないことに注意が必要です。
KRとなり得る結果指標には次の2つの種類があります。
<定量的指標>:金額、件数、点数など、定量的に測ることができる指標
<マイルストーン指標>:いつまでに何が完了しているかを定義した指標(例:第2四半期末までに事業計画が承認されている)
1つのOに対して、3つ程度のKRが定義されることが一般的ですが、これもケースバイケースで、通常は2~5個くらいの範囲に収まります。
以上がOKRの1つ目の「構造化とフォーカス」に関する考え方です。次回のコラムでは残りの4つについて解説します。
- 経営戦略・経営管理
- モチベーション・組織活性化
- キャリア開発
- リーダーシップ
- マネジメント
日本において、1on1とOKRを含む、パフォーマンスマネジメントの重要性をいち早く唱え、多くの企業の経営者と共にマネジメント改革に携わる。
東京大学法学部卒業後、アクセンチュアにて、人と組織の変革を担当するチェンジマネジメントグループの立ち上げに参画。同社のヒューマンパフォーマンスサービスライン統括パートナー、エグゼクティブコミッティメンバーを歴任後、アジャイルHRを設立。
松丘啓司(マツオカケイジ) 株式会社アジャイルHR 代表取締役社長
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