マネジャーの自信を高めるために
昨今のマネジャー(中間管理職)は自信を失いかけている。
日本企業を支えてきたマネジャーたちが自信を失うことは、すなわち、日本企業の衰退を意味すると言っても過言ではないでしょう。それくらい、マネジャーの役割は日本企業で重要なものです。昨今のマネジャーの多くが「プレイングマネジャー」のはずですが、実は、「マネジングプレイヤー」になっているのが現状かもしれません。何故か。それは、現代の厳しい経営環境の中で熾烈な大競争を勝ち抜いていかなければならない日本企業が、これまでの企業体質、組織風土を変えられずにいることに起因します。そのことを明らかにして、ではいったいどうすればいいのか、そこを考えていきたいと思います。
日本企業と一口に言っても、その企業体質、組織風土はそれこそ様々です。その中で、「マネジャーが自信を失いかけていそうな」日本企業の多くは、定年退職を迎えた社員がいるような社歴のある日本企業ではないかと思います。そういった企業のまた多くは、人事制度上は年功序列はなくなり、成果主義、能力主義のもと、組織人事が決まっていると思います。ただ、例えば、「部長」クラスの顔ぶれをみると、「男性40代後半から50代前半」というのが現実ではないでしょうか。それなりの経験と実績を積んできた人材が「部長」になるのは正しいことだと思いますし、そのこと自体に問題があるとは思いません。問題にしたいのは、この部長クラスの方々が、「それなりの経験と実績を積んできた」時代と、「これから経験と実績」を積んでいかなければならない現代とでは、大きく社会経済環境が違っているということです。この激動の現代にマネジャーになっている方々は、今の部長クラスの方々と同じ考え方、やり方ではたちゆかないのです。もちろん、今の部長クラスの方々の中にも、激動の現代に対応した考え方、やり方をされている方もいらっしゃいますが、決して多くはないでしょう。ですから、その下で仕事をするマネジャーの多くは、迷い、悩み、自信を失いかけているんだと思います。
こうした状況の中で、部長に反発するくらい前向きなマネジャーであればいいのですが、多くのマネジャーは至って「素直」です。部門目標を達成しようと躍起になっている部長に言われたことを必死にやろうとします。そして、多くのマネジャーが部下に対して「やさしい」(正しくは、部下に対して厳しい態度で接することができない。)です。そのため、マネジャーよりもプレイヤーとして多くの時間を使うことになります。そうなると、いくら業務知識・スキルに長けたマネジャーであっても、一人でやれることには限界がありますから、チームとしての成果に影響が出てきて、自信を失っていくことになります。また、こうした状況では、部下が育ってきませんから、どんどん悪循環になっていきます。
さて、少し話を変えますが、昨今の若手~中堅社員の就労意識は「そこそこの生活ができればいい」というのが大勢ではないでしょうか。この「そこそこの生活ができればいい」という意識がもたらすものは何だと思いますか?日本経済がまだ右肩上がりのときに、「そこそこの生活ができればいい」と仮に思っていても、生活レベルは少しづつでも自然に上がっていったと思います。「そこそこの生活」というのは、そのときの社会経済状況で人並みということです。つまり、右肩下がりの現代においては、「そこそこ」の意味は、「自然に下がっていく」ことなんです。もしかすると、グローバル化がさらに進んでいけば、「そこそこの生活」は、「貧困の生活」になってしまうのかもしれません。この「そこそこ」という意識は、日本企業においても、日本社会においても、払拭しなければならない意識であると強く思います。
話を戻します。右肩上がりの時代を生きて目標達成に躍起な部長、そこそこの生活ができればいいと考えている部下、その間にいるプレイング主体のマネジャー。この構図が現実です。では、どうしたらいいのか。マネジャーが自信を失いかけている原因をつくっている事象というのは、マネジャー個々に違っていて実に様々です。ところが、特異な事象というのはほとんどなくて、例えば、日々勉強、自己研鑚を続けているような優秀な研修講師やコンサルタントであれば、最適な解を提供できるケースがほとんどです。マネジャーたちは、「知っているけどできない。」のではなくて、「知らないからできない。」のです。典型的なマネジメント研修やリーダーシップ研修をやって、「さあ、マネジャーとしてちゃんとやってください。」とはいかないのが、現代です。マネジャーたちが置かれている現状を直視し、現実的で具体的な知識をマネジャーたちに組織的に与えなければならない時代です。
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大手人材育成企業で本部長・執行役員を歴任。企業の人材育成における幅広い知見と講師経験による実践知を持ちあわせている。
昨今の企業における経営課題を解決するための本質である「個と組織の関係性を最適化する」をテーマに、企業の組織開発に力を注いでいます。従業員の意識変革と態度能力向上を図ることによって、従業員がいきいきと働ける職場つくりを基本にしています。
伊藤 宏之(イトウ ヒロユキ) 株式会社アイアンドオン 代表取締役社長
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