メンタル不調(うつ病)への対処法 シリーズ7
みなさん、こんにちは。株式会社ヒューマン・タッチの森川です。
前回、【メンタル不調者(うつ病)への対処法 シリーズ6】安全配慮義務の視点から職場でなすべき対応として、「気づき」「声かけ」「聴く」「つなぐ」の「聴く」「つなぐ」をお話しさせていただきました。今回は、このシリーズ最終回として、「不調者への対応」について書かせていただきます。
うつ病自体の年間の有病率は、3~5%と言われています。従業員が50名いれば、年間1名程度のメンタル不調者が出てもおかしくないのが実情です。例えば、一定数の従業員がいる会社の人事担当者の方が、自慢げに「弊社にはメンタルヘルス不調者はいません」とお話しになることがあります。しかし、これは「不調者情報が会社に上がってこない、または上がってくる前に会社を辞めてしまっている」という残念な状況を示していると考えています。
前回までお話しさせていただいた、「予見可能性を前提とした結果回避義務」いわゆる「安全配慮義務」をしっかりと実践していただいていても、必ず不調者は発生します。その際にどのような対応をすべきか、原則について今日は話題とさせていただきます。原則と書いたのは、対象としている病像を、「昔ながらのうつ病」としているからです。「やさしく、他社配慮が聞いて、自分の気持ちよりも相手の気持ちを優先しがち」な「熱血社員」のかたが陥りやすい病像です。他方、「新型うつ病」「逃避型うつ病」などといった異なる病像のうつも存在します。詳細はここではお話ししませんが、このような病像の方には、対応が異なる場合もあります。他の機会でこの話題は書かせていただきますね。
戻ります。メンタル不調で、療養を開始した従業員に対しては、原則以下の対応が望まれます。
1.「はげまさない」
うつ病に罹った人は、日頃からがんばり屋さんで、自分としては目いっぱいがんばっているとの認識が強い方が一般的には多いです。それ以上に「がんばれ」と伝えるのは、当人を追い詰め、症状を悪化させるだけでなく、自殺に追い込むことにもなりかねません。もちろん、復帰できるまで体調が戻ってきた際に、「ゆっくりと徐々に戻ってきてね」といった支えるような励ましは意味があると考えます。
2.「気分転換を強要しない」
うつ病の回復には精神的な負荷の軽減が重要になります。元気なときには楽しくて面白いと思うことでも、うつ病期には精神的な負担になることがあります。旅行の計画自体が精神的な負担になるかもしれません。周囲からの外出や遊びの誘いは原則として避けたほうが無難です。うつ病には、まずは「布団をかぶって寝ていてもらう」こんなエネルギーを回復する時期がとても大切です。
3.「飲酒は控えさせる」
アルコールは神経の刺激伝達を抑制するため、生理的にうつ症状を悪化させる可能性があります。相手のためと思って酒席に連れ出したとしても、その場が自分のための愚痴の場になってしまうこともありえます。飲酒は控えさせることが大切です。
4.「重要な決断はさせない」
うつ状態の患者は、時に自責感などから退職を願い出ることがあります。うつ状態では正常な判断が困難と考えることが基本です。症状が回復してから退職を後悔することにもなりかねません。うつ状態の時には、退職や転職など人生の重大な決断は保留し、まず治療に専念させることが先決です。なお、うつ状態の急性期に提出された退職願は法的有効性が疑われることもあります。
5.「会社からの接触は慎重に」
うつ病者は休業していることに対して罪悪感や後ろめたさを抱いている場合が一般的です。会社の人間が見舞いに来ることで「申し訳ない」と精神的な負担が増すことも考えられます。休業開始から2~3週間は電話を含めて接触を控えるほうが無難です。
6.「精神的な負担は出来る限り下げる」
多くの場合、休業中のうつ病者は「早く復帰したい」と焦っています。繰り返しになりますが、うつ病には休養と服薬が基本になります。精神的な負荷を除き、休養に専念させる意味でも、早期の出社を促していると取られるような言動は慎むべきでしょう。
うつ病の「療養期」では、何よりも「脳の休息」が必要になります。「脳の炎症を抑える」とも言い換えられます。そのために大切なのは「精神的な負担の軽減」と「睡眠の確保」になります。休職中の従業員に対して、対応が難しいと感じるときには、自分の言動が「精神的な負担の軽減」と「睡眠の確保」につながるものかどうか、にて判断してみてください。お休みに入って1か月程度は、しっかりと「療養」してもらうことが何よりも大切となります。
「療養期」を経て、「復職準備期」「リワーク期」といった回復過程、復職準備過程においては、また別の対応があります。こちらについては、別の機会にて書かせていただきまね。
ここまで、全7回にわたり、【メンタル不調者(うつ病)への対処法 シリーズ】を書かせていただきました。実はこの内容、ラインケア研修の基本の内容とまったく同じになります。社内でのラインケア研修の基礎をご検討の皆様、ぜひ、活用してみてください。
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森川 隆司(モリカワ タカシ) 株式会社ヒューマン・タッチ 代表取締役 臨床心理士 公認心理師

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