臨床心理士が教える不調者対応~復職支援の成功・失敗事例~
みなさんこんにちは。
株式会社ヒューマン・タッチの代表で、臨床心理士の森川隆司と申します。
過去200社以上のメンタルヘル対策に関わり、750件以上の復職に立ち会ってきた心理士兼コンサルタントとして、
経営者や人事労務の方向けに【メンタルヘルス対策】を実際に起きやすい事例を交えてお届けいたします。
今回は、前回と同じく「職場要因」である
【計画不足:復帰直後に、業務の質的・量的負担を元に戻す】についてです。
前回お伝えしたように、復職には組織としての「復職プログラム」と、現場での復職スケジュールを規定する「復職プラン」が大切となります。これらの仕組みがなければ、復帰してくる従業員は正に上司のさじ加減ですべての環境が規定されてしまいます。また、いくら上記の仕組みを構築しても、相手は人間です、いや、場合によっては治りきっていない症状や、元来有している手ごわい性格傾向です。状況によって、さまざまなケースすが考えられます。
■人事労務担当者が全く関与せず、上司のみに対応が任されすぐに勤務時間を上げてしまうケース
・中小企業ではありがちなケースかもしれません。本人から復職可能の診断書が出てきて、産業医の面談も、ラインの面談も、組織としての復職の可否判定の会議もなく、「なんとなく」復職を許可してくるケースです。このようなケースでは、復職の判断基準も明文化されていないケースが多いはずです。段階的に勤務時間や勤務の質をあげていくことを前提に診断書が出されていたとしても、上司はそのようなことはお構いありません。ただでさえ人が足りていない状況では、「少なくとも今まで通り」「できれば休んでいた分、他の人に迷惑をかけているんだから、その分取り戻してくれ」こんな思いを優先させてしまう上司もいるのではないでしょうか。メンタルヘルス不調で療養していた方は、多かれ少なかれ「迷惑をかけてしまった」「何とか取り戻したい」という思いを有しています。(この思いが強すぎる場合には、そもそも復職できる状況ではないと思うのですが。。)そのような状況で、上司からも上記言葉がけをもらってしまえばどうなるでしょうか。「もっともっと頑張らねば」「頑張りたいのにまだ体が思うように動かない自分は、やっぱりできない人間だ」「結局また迷惑をかけてしまうのではないか」これらの想いが、状況をよくする方に働けばよいのですが、全く逆ですよね。心身の状況は悪化の一方です。上司も本人も望まない「再療養」が目の前に迫ってくるのです。
■会社は徐々に勤務時間を上げていきたいのに、本人から勤務時間を上げる希望がすぐに出るケース
・このケースはなかなか難しいと思います。対応に絶対的な正解があるわけでなく、個別ケースに応じて検討する必要があるからです。例えば、職場の個別的な人間関係が大きなストレス要因となっていて2次的に抑うつ感が強まり「適応障害」と判断されて休職。その後職場を変えて復職したケースなどの場合、明確なストレス要因が除去されていれば、以前のパフォーマンスに戻るまではそれほど時間がかからないケースもあります。このようなケースでは、復職プランよりも早いペースであっても、?負荷を試験的に上げてみることは、選択肢の一つとなるでしょう。
■業務時間の制限はあるが、業務の質の制限をかけていないケースで、本人から制限勤務の解除を求めてくるケース
・「時間内に業務が終わらないので、制限勤務を解いてもらえないでしょうか」このような訴えが聞こえてくるケースです。徐々に業務の質の負荷が上がって、十分に慣れてきた時期であればよいのですが、勤務再開したその週や翌週にこのようなコメントがある場合は、「業務の質」の負荷が適切か再検討する必要があります。顧客や協力会社との折衝を伴うような業務をすぐに再開させることは、リスクがあります。時間の制限をかけづらいこともありますが、「気を遣う」すなわち「精神的なエネルギーを多く消費する」ことは、業務に慣れていく早い段階では、できる限り避けた方が再発の予防になると考えます。療養前にリーダクラスで折衝や調整が中心であった方であっても、慣れるまで(数か月)は、直接的な折衝や調整の業務から離れて(担当者を別において)様子を見ながら戻していくことが良いと考えます。
代表的なケースを挙げましたが、どのケースにおいても、復職プランの見直しについては、本人の意見だけでなく、上司や人事の客観的な意見、また産業医や主治医からの医学的な意見、これらを総合して対応していくべきと考えます。
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森川 隆司(モリカワ タカシ) 株式会社ヒューマン・タッチ 代表取締役 臨床心理士 公認心理師
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