女性向け研修の企画は、女性を特別扱いしている?
当社の管理職育成プロジェクトの女性メンバーから
念願かなって社内に女性向け研修実施が実現できた!
という成果報告をいただきました。
私はその報告詳細を伺いながら、
喜びつつも1つ気になったことがありました。
それは、女性限定の研修を企画しようとすると
「女性だけ特別扱いしている」
「なんで今更女性限定なのか」
という反発が必ず出てしまう現状でした。
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■女性向け研修の企画は、女性を特別扱いしている?
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成果報告をしてくれたメンバーは、
ある技術系企業のダイバーシティ推進担当で
約2年ほどの時間をかけて、自社の女性管理職向けの
育成プログラム導入を実現しました。
その苦労話には、論理的な資料作り、男性上司が
理解しやすいキーワード選び、経営視点でのプレゼン等を
駆使して、男性社会の中でうまく立ち回りながら、
“これまでにない女性視点を取り入れる必要性”を
何度も諦めず説明し続けてきた努力が見られました。
しかし、この企画を通すために男性人事部長や
男性経営者との会話の中で、必ず出てきていたのが
「こんな企画実施したら、会社は女性管理職だけを
特別扱いしているって思われるじゃないか」
「もうウチの女性活躍推進は終わったよね?
えるぼしもくるみんも取得しているし、KPIも達成。
男女差なく社員は活躍しているのに、今更女性だけに
教育の機会を与えるなんて、それこそ意味がない」
と言われて却下され続けてきた、という現実です。
私はこの話を聞きながら、
「“女性視点を組織運営に融合させること”を、
“アンコンシャスバイアス”と取り違えているパターンではなかろうか?」
ということに気づきました。
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■アンコンシャスバイアスと取り違えていないか
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冒頭で紹介したプロジェクトメンバーが
所属する技術系企業にかかわらず、
女性だけの研修を行うことがすなわち、
「アンコンシャスバイアスではないか」という
意識を呼び起こしやすい実態があるのかもしれません。
しかし、実際の現場レベルでは、男性社会の中で女性が
その力を思うように発揮できていないという実態があるのは、
当社が独自調査している女性活躍推進2.0実態調査からも
明らかとなっています。
そういった、思考の特性の違いから、男女間で
理解し合えていないことが障壁となってしまい、
お互いの視点を融合することから生まれるイノベーションや、
今までにない価値を見出すチャンスを逃しているといっても
過言ではないと私は思っています。
ちなみに、プロジェクトメンバーが約2年という歳月をかけて
企画実現した、手上げ式の女性限定の管理職研修には、
85%の女性管理職が参加希望する結果となったそうです。
女性向け研修の実施に反対していた男性人事部長に
その結果を報告した時、驚きを隠せない様子だったと
プロジェクトメンバーは言っていました。
そして、手を上げた現場の女性管理職からは
「ロクに教育もされずに管理職になったから不安だった。
ようやく女性向け研修をやってくれるのね!」
「(今まで自分のことで精一杯だったから)
今後、若手女性社員のフォローができるようになりたい」
といった“待っていました”という大歓迎ムード一色で
苦労した甲斐があったとのことです。
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■女性視点を経営に取り入れる価値
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男性管理職比率8割超といった技術系企業において
女性管理職として働いている方の中には、
男性社会特有の働きづらさを感じていたり、
仕事の進め方にモヤモヤするなど言葉にしづらい悩みを
抱えている方がいらっしゃると思います。
なぜなら、毎年開催中のとある女性管理職向け研修企画に
講師として呼んでいただいたり、自社開催している
女性管理職育成研修などを通じて、
「こういった研修を探していたんです!」
と心底喜んでくださる女性管理職の方が
後を絶たないからです。
今はまだ、男性社会の中で女性が自分の強みを活かしつつ
力を発揮できるような、いわゆる“武器”を敢えて渡すことが
必要だと私は思っています。
ここで言う“武器”とは、女性が苦手な傾向にある
コンセプチュアルスキルの付与の他に、男性が多い環境下でも
無理なく、しなやかに、うまく立ち回るための、
男性とは違った女性ならではのコツも含まれています。
モヤモヤの原因を明確にし、自分の力で打開できるメソッドを
学ぶことで、不安感が払拭されて気持ちがとても楽になり、
さらに自分が取り組んだ成果が目に見える形で
周囲にアピールできるようになるので、男性側からも、
「女性視点を経営に取り入れる価値」
を感じてもらいやすくなります。
これがきっかけとなって、組織の中で多様性を受け入れ、
ひとりひとりが互いに認め合い、高め合って、
相乗効果をもたらすという、
ダイバーシティ&インクルージョンの真価
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が組織にもたらされることを、これまで私が
女性管理職育成研修で関わらせていただいてきた
のべ1,000人超の受講生の皆様が出した成果からも
確信しています。
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■社内調整が難しい!女性向け人材育成企画
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女性活躍推進の取り組みがスタートしたばかりの頃と比べると
現在は女性管理職比率が少しずつではあっても高まってきており、
見た目では目標達成してしまっている企業も増えてきています。
このような中で、敢えて女性のみを集めた人材育成施策を
社内で立案することは、なかなか難しい状況かもしれません。
今回紹介したプロジェクトメンバーの所属する企業においても
早々に女性活躍推進に関するKPIを達成していた背景があり、
現場の実態に即した必要な育成施策ではあったものの、
経営層の納得を得るまで約2年を要するほど高難易度な
施策となっていました。
しかし、蓋を開けてみたら、待望の女性向け研修として
現場から歓迎された結果からも、特に男性管理職比率8割超
といった技術系企業においては、女性に特化した育成施策の
ニーズが、まだまだあると感じています。
他にも、今関わらせていただいている企業様のうち、
ある技術系大企業で企画した
次世代女性リーダー向け研修(手上げ式)においては、
30名を超える女性社員の方が受講されています。
大手企業様なので、女性活躍推進やダイバーシティ推進は
当たり前のように取り組まれていますが、
女性ならではの悩みや課題感を解決したいと感じている方が
一定数いらっしゃるのが、今の日本全体の現状なのかもしれない、
と思わずにはいられません。
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■これまで以上の成果を組織にもたらすために
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男性管理職比率8割超といった環境下において
無理なく自分の強みを生かして成果を出している
女性社員が、たった一人でもその組織に存在することは、
周囲にとって大きな影響力を持つと思います。
実際に、今回ご紹介したプロジェクトメンバー以外にも
自組織でリーダーシップを発揮して、女性活躍推進や
ダイバーシティ推進の施策を実現したメンバーや、
今まさに影響力の輪を広げて組織変革をもたらす
キーパーソンとして活躍している方を、当社育成機関で
多く輩出してきたという自負があります。
最初は少人数でスタートしたとしても、
“武器”を得た方がリーダーシップを発揮して、
うまく組織に新たな価値観を浸透させてくれるので、
より組織の実態に即した形で
「真のダイバーシティ&インクルージョン」へと
つながっていくのだと私は確信しています。
これまでお伝えした通り、基本的にはまだまだ
ソフト面(組織風土・人材のスキルなど)に課題感を
持った組織が多いという印象を持っています。
だからこそ、人事担当者の方には、決して諦めずに、
必要な施策展開に取り組み続けて欲しいと切に願っています。
真のダイバーシティ&インクルージョンがもたらされた組織には、
それまでにない、想像を超えた成果を叩き出していることは
多くの方が知るところとなっているはずです。
例え、女性管理職比率のKIPが既に達成していても、
これまで以上の成果
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が現場にもたらされていなければ、
今一度、自組織のソフト面について見直す機会を
持ってみても良いのではないかと私は思うのです。
特に、男性視点で画一的な組織運用になりがちな
組織であればあるほど、多様な視点を取り入れることが
これからの時代、ますます重要になってきます。
その多様な視点の第一歩として、組織運営に女性視点を
取り入れることから生まれる相乗効果は、
これまでにない、想像超えた成果をもたらすのだということを、
より多くの組織に味わってもらいたいと思っています。
手段はいくらでもありますので、今回ご紹介した
プロジェクトメンバーのように、諦めずに、粘り強く
取り組みつづけていただけることを心から願っています。
- 経営戦略・経営管理
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- マネジメント
◆技術系企業D&I突破口となる次世代リーダー・女性管理職を育成
元NTT女性管理職10年、約500名のSE部門における人事育成担当3年の豊富な現場経験を持つ。これまでのべ5,000人以上の技術系企業のリーダー・管理職育成に携わる。専門は技術系企業に特化したD&I推進コンサルティング。
細木聡子(ホソキアキコ) 株式会社リノパートナーズ代表取締役/技術系ダイバーシティ経営コンサルタント/(公財)21世紀職業財団客員講師/中小企業診断士
対応エリア | 全国 |
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所在地 | 千代田区 |
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