「隠れ・女性活躍推進」とは
当社は、技術系企業の女性管理職育成を軸とした
ダイバーシティ経営の推進支援を行なっておりますが、
特に技術系企業によく見られるのが
「隠れ・女性活躍推進」
という実態です。
┏━━━━━━━━━━━━━━━┓
■「隠れ・女性活躍推進」とは
┗━━━━━━━━━━━━━━━┛
「隠れ・女性活躍推進」とは、端的にお伝えすると
女性活躍推進に対して、一見積極的に取り組んでいる
ように見えて、実態が伴っていない状態を指しています。
女性活躍推進への意識は低いわけではなく、
むしろ女性管理職者数は目標達成していたり、
女性社員採用数は通常の技術系企業よりも高い比率だったり、
時間短縮勤務や育児休暇制度など、手厚い制度が
整備されている企業にありがちだと感じています。
というのも、私がダイバーシティ経営推進支援で
関わらせていただくのが、
・ダイバーシティ経営改善
・女性社員育成
・人事制度改革
これら3本柱であり、会社全体の実態把握の上で
全てを整合性を持って進めるやり方だからこそ
見えてくる真相なのかもしれません。
例えば、まず初めの一歩として女性管理職育成研修などで
関わらせていただくと、女性社員の仕事に対する意識や
ビジネススキルの習熟度が把握できます。
女性社員育成を通して、女性社員の上司の関わりの
“見える化”にもつながるため、現場レベルでの
女性社員に対する認識や、育成方針、業務に対する
期待感や評価がハッキリと見えてくるようになります。
そこから、人事評価制度や人事制度全般を見渡すと、
結果として「量の理論」で仕事を進めることが前提の
職場風土となっていしまっている企業が少なくないのです。
一見、誰もが働きやすい職場環境を目指して、
女性活躍推進などにも積極的に取り組んでいる企業が、
実際のところは新3K(きつい・厳しい・帰れない)で
長時間労働によって生み出されるアウトプットの量で
勝負している企業を、私は「隠れ・女性活躍推進」の
状態であると警告を鳴らしています。
┏━━━━━━━━━━━━━━━┓
■仕事が終わるまで時間を使っていないか
┗━━━━━━━━━━━━━━━┛
これからの時代は、「量」ではなく「価値」へ
シフトすることが、どんな企業にも求められていると
私は考えています。
時間量ではなく、価値の量へ転換しなければ、
多様な働き方はいつまで経っても実現しないのは
言うまでもないかもしれません。
とある企業様の最前線の部署は、有能な社員が集まって
売り上げも他部署より飛び抜けている一方で、
未だ深夜の時間帯にミーティングが設定されており、
もちろんこの現場で働く女性社員は皆無です。
こういった環境下で働くためには、
働く時間に制約がある社員は歓迎されづらく、
とにかく【仕事が終わるまで時間を使う】ことが
可能な社員で構成されねば成り立ちません。
そうなると
「あんな働き方はできない」
「あそこまでしないと評価されないのか」
と、不安を感じ、自分にはできないと思って
しまうのも仕方ないのではと思ってしまいます。
その結果、時間短縮勤務などで働く社員は
自ずと最前線の業務に就くことが
出来なくなってしまうことも
少なくないのです。
これは実際に女性管理職育成の取り組みの中で、
女性社員から相談を受けたリアルな話なのですが、
上司との評価面談の際に、
「直接売上に貢献しない仕事内容だから、
あなたの人事評価は期待しないで欲しい」
と言われたと相談を受けました。
その女性は育児中で、時間短縮勤務とはいえ、
生産性高く働いてチームに貢献していましたが、
結局は評価につながらない、ということで、
非常にショックを受けていた次第です。
┏━━━━━━━━━━━━━━━┓
■評価制度の運用を見直す必要性
┗━━━━━━━━━━━━━━━┛
成果が数値に表しやすい業務に関わる方が
生産性高く働いているのは素晴らしいと思います。
一方で、成果が見えづらい部署、特に共通系部門
で働く人にとっては、直接売上に貢献しているわけでは
ないため、評価しづらいと言われています。
そういった共通系部門には、働き方に制限のある社員が
集まりやすく、ますます評価に繋がらない部署として
見られてしまうことを増長しているのかもしれません。
しかし、共通部門で働く人は、売上や社員の成長に
つながる戦略を立て、その取り組み実践を行なっているので、
むしろ最も評価されるべきという意見もその通りと思います。
だからこそ、ダイバーシティ推進支援を行う際には
女性活躍推進施策だけでは不十分で、人事制度と運用の改革を
同時に取り組むことで、多様な働き方をする社員や
共通系部門で活躍する社員の評価制度の整備・運用までを
しっかりと見直していく必要があるのではないでしょうか。
評価制度の運用を見直さなければ、
「評価されないなら仕事は頑張らない」
という人の“隠れ蓑”に好都合となり、
同じ環境下で意識高く、生産性高く働く人との公平性が
ますます保ちにくくなることは必至かと思います。
┏━━━━━━━━━━━━━━━┓
■大前提は経営層のコミットメント
┗━━━━━━━━━━━━━━━┛
時間当たりの「価値」の大きさで評価するためには、
まず考えるべきは、仕事が終わるまで時間をかける
働き方からの脱却をいかに考えるかにかかっていると
私は考えています。
そこにメスを入れるための第一歩が、
ダイバーシティ&インクルージョンに対する
意義の理解であると思います。
多様性をうまく融合させて
パフォーマンスあげるためにどうすればいいのか、
画一的な方法をどうやって変えていくかを
全員で実行しようという意識こそが、
真のゴールにたどり着くための1つのポイント
であると確信しています。
私がダイバーシティ経営の推進支援で関わらせていただいている
技術系企業の中でも、うまくいっている企業様の共通点として
挙げられることがあるとすれば、それは
「経営者のコミットメントがある」
ということが言えるかと思います。
その大前提があるからこそ、現場実態に即した
ダイバーシティ推進施策・女性活躍推進プロジェクトが
展開し、ダイバーシティ&インクルージョンの実現を
加速させている、という印象を持っています。
実際、技術系企業の人事担当者の共通の悩みとして
挙げられるのが、
「現場は意識高く取り組んでいるが、
経営層のコミットメントがなかなか得られない」
という実態も少なくありません。
もちろん、経営層のコミットメントなしでも
ダイバーシティ推進に取り組むことは可能です。
しかし、加速していかないことは明白です。
そして、経営層のコミットメントを醸成するのは、
人事部の立場にある方の進言や関わりが最も影響力が
あることは間違いないと思います。
経営層にアクセスできる人事部だからこそ、
経営層の納得感を得られるような形で
ダイバーシティ推進や女性活躍推進を形骸化させないよう
コミットメントを醸成するような関わりを
実践いただきたいと思います。
- 経営戦略・経営管理
- モチベーション・組織活性化
- キャリア開発
- リーダーシップ
- マネジメント
◆技術系企業D&I突破口となる次世代リーダー・女性管理職を育成
元NTT女性管理職10年、約500名のSE部門における人事育成担当3年の豊富な現場経験を持つ。これまでのべ5,000人以上の技術系企業のリーダー・管理職育成に携わる。専門は技術系企業に特化したD&I推進コンサルティング。
細木聡子(ホソキアキコ) 株式会社リノパートナーズ代表取締役/技術系ダイバーシティ経営コンサルタント/(公財)21世紀職業財団客員講師/中小企業診断士
対応エリア | 全国 |
---|---|
所在地 | 千代田区 |
このプロフェッショナルのコラム(テーマ)
- 女性管理職育成 (39)
- セクハラ・パワハラ対策 (4)
- 部下マネジメント (15)
- 女性のためのリーダーシップ (12)
- メンタル強化 (3)
- 人事施策・研修実施のヒント (58)
- 従業員数5~30人の社長向けノウハウ (7)
- 人が辞めない会社の作り方 (7)
- 女性活躍推進2.0 (36)
- リーダーの心得 (19)
- アンコンシャスバイアス (7)
- 業務改革プロジェクト (4)
- 部下育成 (25)
- ニューノーマル時代の人材育成スタイル (4)
- 男性社員比率が8割超の企業の女性活躍推進 (17)
- 完全オンライン研修の効果 (1)
- ダイバーシティ・マネジメント (11)
- 技術系女性社員のためのキャリア形成 (3)
- 社員が安心して成長できる組織作り (2)
- 社員の経営視点を醸成して会社成長を加速させる (9)
- 技術系企業に特化したダイバーシティ推進PJ (16)
- しなやか組織改革プロジェクト (5)
- しなやか姿勢のすすめ (14)
- ダイバーシティマネジメント (14)
- ダイバーシティ&インクルージョン (26)
- ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン (4)