「気づき」による捉え方の変化から「行動変容」をもたらすヒント
ある技術系企業の社員(対象:課長~昇格前の次期リーダークラス)向けに
1年間の管理職育成プロジェクトを終えて、今受講された皆さん
お一人お一人のアセスメントをまとめています。
プロジェクトで「リーダーに求められる10の資質」として
提示しているディメンジョンを元に評価しているのですが、
中間評価と最終評価を通して最も高かったAさんが
どのように気づきを得て成長していったか、
そのポイントを中心にお伝えしていきたいと思います。
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■頭でわかっているけれど、変われない・・
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Aさんは元々自己マネジメント力に優れており、
自分のペースで業務をきっちり納期までに仕上げることから、
周囲もその仕事ぶりを認め信頼を寄せていました。
一方で、Aさんは周囲との関係性を良好に保ちたいという
意識が非常に強く、関係者との摩擦を避けたいがために
自分の意見を積極的に周囲に伝えられず、
結果として「実行力」「リーダーシップ」という部分に
課題があるという評価がなされていたのです。
Aさん自身も、それを課題として把握していましたが
頭ではわかっていても、意識や行動レベルで自分を
変えていくことができず、もどかしさを感じているように
私には見えていました。
そんなAさんの意識がガラっと変化したきっかけは
この2つだったと、Aさんご自身が綴った
振り返りレポートに書いてありました。
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●リーダーが意識するべき影響力について学んだ時
●リーダーシップスタイルには多様な形があり、
自分らしいやり方を確立することが重要だと気づいた時
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ちなみに、この2つは私自身の「経験談」をお伝えし、
そこで私が得た気づきをワークに仕立て、受講者同士で
気づきや学びを促し合うというプロセスの部分でした。
スキルやノウハウを項目立ててお伝えするのではなく、
あくまで経験談としてお伝えすることによって
聞き手は自分ごととして受け取ってもらいやすいんだと
Aさんの振り返りレポートを拝見して改めて体感し、
手応えを感じた次第です。
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■「経験談」がもたらす“気づき”と“行動変容”
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また、Aさんは振り返りレポートの中で
このように書いておられました。
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リーダには共感型や参加型など色々タイプがあり、
多様な型のリーダや価値観が共存できる組織であることが
会社の成長につながることが良く分かりました。
私も、私ならではのリーダ像を目指したいと
思うようになったきっかけをここでもらいました。
(中略)
リーダが意識すべきことを学ぶことによって、
周囲の上司や部課長にもその学んだ内容を
当てはめてみることが圧倒的に増えました。
会議や会話の場での発言や振る舞いに対する
見方も変わり、周囲から学び取ることが増え、
毎日が新しい発見に溢れています。
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Aさんが意識変化のきっかけとして
挙げてくださった1つ目の
「リーダーが意識するべき影響力」では
・自分がリーダーの立場になった際の周囲からの見られ方
・リーダーとなって高まる「視点・視座・視野」について
これらについてより意識を向けることで
リーダー・管理職として求められていることを
再認識し、行動として実践して行きましょう、という
メッセージを込めて私はお伝えしたつもりでしたので、
Aさんはそのメッセージをしっかりと受け止めてくださって
いたことにとても感動しました。
また、Aさんはそれと併せて「自律型姿勢」を
学ぶパートでも心が動かされたようで、
「自分ならではのリーダーシップスタイルを確立するために
身の回りのあらゆる情報を積極的に取りに行き、試行錯誤するようになった」
と書いてあったことも大変印象的でした。
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■相手の自律的な成長をもたらすプロセス
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Aさんが気づきを得たタイミングとしては、
管理職育成プロジェクトの全6回の講義のうちの
2回目までのプログラム内容だったのですが、
その後、4回目の講義を終えた中間報告会において、
「管理職を目指します!」
と、Aさんがグループメンバーの前で宣言された姿は
今も私の目に焼き付いています。
Aさんは、その後宣言通り見事昇格を果たし、
先月の管理職育成プロジェクトの最終報告会では
こんなふうに発表されていました。
「講義中は仮想部下を作って想像しながら
学んできましたが、管理職となって部下が
できたその時点から、ここでの学びが更に充実しました。
すでに管理職として活躍されていたグループメンバーの
悩みや課題感を共有いただくことで刺激をもらって、
本当にいい勉強の場でした」
その場にいたAさんの直属の上司はもちろん、
人事担当者の方からもお褒めの言葉をかけてもらっている
Aさんを拝見し、私も込み上げて来るものがありました・・。
*
Aさんが大きな成長を遂げたポイントは
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「気づき」による捉え方の変化からの「行動変容」
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という一連の流れにあったと私は考えています。
この流れをもたらすきっかけになったのが、
今回は「経験談」であったことは間違いありません。
もし研修などで経験談を用いた気づきを促す
プログラムを検討されている際には、
なるべく対象者と同じような立場・境遇にあった人が
具体的にどのように困難を乗り越えたのか
というストーリーを組み込むとより効果的かと思います。
その上で、気づきから行動変容までつなげるために、
ワークを工夫したり、グループワークなどを通して
多様な捉え方があることを体感できる場を設けると
さらなる意識変革が期待できるかと思います。
この「経験談」を活用して相手の気づきを促し、
自律的な成長をもたらすプロセスについて、
人材育成施策に関わる人事担当者や
ダイバーシティ推進担当者はもちろん、
日頃から部下育成に関わっている管理職の方などにも
ぜひご参考にしていただければ幸いです。
- 経営戦略・経営管理
- モチベーション・組織活性化
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- マネジメント
◆技術系企業D&I突破口となる次世代リーダー・女性管理職を育成
元NTT女性管理職10年、約500名のSE部門における人事育成担当3年の豊富な現場経験を持つ。これまでのべ5,000人以上の技術系企業のリーダー・管理職育成に携わる。専門は技術系企業に特化したD&I推進コンサルティング。
細木聡子(ホソキアキコ) 株式会社リノパートナーズ代表取締役/技術系ダイバーシティ経営コンサルタント/(公財)21世紀職業財団客員講師/中小企業診断士
対応エリア | 全国 |
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所在地 | 千代田区 |
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