人材育成はマインド醸成から〜人事担当者が取り組む2つの実例
当社が公開中の人事向け無料動画セミナーでもお伝えしているとおり、
「人材育成は、マインド醸成から始める」
ということが重要だと、ある技術系企業の女性活躍推進プロジェクトで関わらせていただいている
男性人事担当者の“施策対象者に関わる姿勢”から改めて実感している今日この頃です。
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■自ら「実践しよう」と思えるかどうか
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施策対象者のマインド醸成を意識することは
人材育成に関わる役割を担っている方であれば
至極当たり前のことかもしれません。
それでも、あえて私が重要視する理由は、
知識やスキルを与えても、現場実践するイメージが
持てなければ、結果として施策対象者の成長に
つながりづらく、最悪の場合施策が時間の無駄に
なりかねない事態に陥る可能性があるためです。
具体的には、ステップアップ研修などにおいて
施策対象者となった方から、
「なぜこの研修に呼ばれたのか分かりません」
「私の置かれた状況にマッチしていないので教えられたことは実践できません」
といった声が上がった場合、その方のマインドが
十分醸成される前に受講に至ってしまったと
考えられるかと思います。
つまり、施策対象者のマインドが
●自ら「実践しよう」と思える状態
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を十分醸成した上で、施策実行に移すことが
最終的に施策効果を最大化することに
つながっていくと私は考えています。
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■現場の実態を正しく把握できているか
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冒頭でご紹介した女性活躍推進プロジェクトで
関わらせていただき現在3年目となる、ある技術系企業の
男性人事担当者Aさんは、施策実行前の対象者への
【意識づけ】に多くの時間を割いておられます。
対象者はもちろん女性社員であることから、
男性であるAさんにとっては相手がどのように
施策を受け止め、感じているかを想像することは
相当難しいことと思います。
私は対象者である女性社員と同性でもあるため、
こんなふうに受けて止めているのではないか、
きっとこう感じているだろうと詳細説明がなくとも
“なんとなく”把握できる部分は少なからずあります。
しかし、Aさんの素晴らしいところは、自身が男性であり、
相手が分からないからこそ、実態をしっかり把握しようとする
姿勢であり、不明な部分をそのままにせず、私にも
何度も相談して、確認することを怠りません。
例えば、対象者に事前に伝えておくこと、
意識づけしておく内容はもちろんのこと、
実際に私が研修でお伝えするスキルやノウハウについても
「現場の女性たちはこんなことに悩んでいるようなので、
こんなキーワードを用いるとさらに学びを深めることが
できるような気がします」
といった形で、対象者の状況を詳細に教えてくださるので、
私も、より効果的で現場の実態にマッチした研修内容を
対象者のみなさんに提供できているという手応えを感じています。
Aさんの対象者と真摯に向き合おうとする姿勢と、
適切なコミュニケーション、いわゆる「ホウ・レン・ソウ」
(報告・連絡・相談)の2つの効果が、この企業様で
長期プロジェクトとして取り組まれている女性活躍推進を
着実に会社成長に結びつけつつある重要な成功要素の1つであると
私は確信しています。
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■長期的な視点で人材育成を考えるメリット
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この企業様では女性活躍推進プロジェクトに取り組んで
5年目に突入されており、弊社が関わらせていただいたのは
2年目に入った頃でした。
このように、長期的な視点に人材育成施策を考えるという会社の方針
そのものが、成果につながっている理由の1つであると私は感じています。
一度施策を実行して、たとえ効果が限定的だとしても
そこから継続的にPDCAを回しながら取り組み続ける環境が
あるということが、結果として自社の実態に即した
女性活躍推進を実現する上で功を奏していると考えられます。
実は、Aさんの企業では女性活躍推進プロジェクト進行中に
新型コロナウィルス感染症拡大による影響によって
女性社員向けの集合研修が一時中断する状況に追い込まれました。
経営層の「集合研修以外は効果が見込めない」という声によって
プロジェクトは宙ぶらりんになりかけていたところを、
Aさんが諦めずに当社の“反転学習リノ式スタイル”の導入を検討し、最終的には、
「講師との個別面談でフォロー体制を確立した上でオンライン研修へ切り替える」
という方法で経営層の納得を引き出し、
現在も途切れることなく女性活躍推進プロジェクトは
継続され、女性社員の意識向上・業務改善による生産性向上
といった成果として現れています。
関わらせていただく立場としても、
長くお付き合いするに従ってより内情も把握できますし、
相手の雰囲気によってどのように接すれば適切かといった
匙加減も把握できるようになるので、よりマッチした
育成カリキュラムを提供することにもつながっています。
特に、人材育成施策、ダイバーシティ推進・女性活躍推進といった
取り組みについては、長期的視点に立って実行するという考え方に
一理あり、と言えるのかもしれません。
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■事例:自主性を伸ばす仕掛け
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Aさんが立案し、今月からスタートする女性活躍推進プロジェクトの
新たな取り組みテーマは「自己評価」です。
前回のテーマ「目標設定」によって達成した成果について
自社の評価指標に基づき、客観的に自身の評価について
考え判断できるようになることが目的の1つです。
すでに事前動画セミナーは社内で配信されており、
今月中旬以降から順次個別面談がスタートするのですが、
つい先日、Aさんからこんな相談がありました。
「実は、一部の女性社員から
『細木先生に目標設定についても改めて見て欲しい』と
連絡がありまして。今回のテーマとはズレてしまう一方で、
彼女たちの自主性は評価してあげたいと考えているのですが・・」
私は、女性社員の方の自律的な姿勢に感激したのはもちろん、
その女性社員の姿勢を引き出してさらに成長して欲しいという
Aさんの考えにも感服した次第です。
結論としては、1人1回の個別面談を、
一部の希望した女性社員に限り
複数回の面談実施を行うことになりました。
このように、対象者の自主性を引き出し、伸ばす仕掛けも
Aさんと一緒に考えることで、より実情に合ったものを
ご提供できるという確信を持って関われることも
本当にありがたいと感じています。
Aさんは、私のやりがい・モチベーションまで
引き出してくださっているということに
他ならない、ということになりますね・・!
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■対象者のマインド醸成をもたらす2つの取り組み
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組織で人材育成施策を実行するにあたって、
「なぜこの取り組みが必要なのか」
ということを、経営者や人事部長といった方から
会社のトップメッセージとしてしっかりと
伝えることが、施策対象者のマインド醸成に
大きな影響を与えることにつながることは
すでにご存知の方も多いかと思います。
もし、トップメッセージを対象者が受け取り損ねてしまうと、
「この研修の意味はあるのか?」
「この話は仕事に役に立つと思えない」
といった【できない理由】を今の業務環境に当てはめて
考えてしまう傾向に陥って、最終的に本人にとって
何も得られない、時間の無駄だった等、非常にもったいない
結果を引き寄せてしまいかねません。
もちろん、対象者全員が意識高く、マインド醸成された状態で
研修等を受けてもらうことは理想ではあります。
しかし、理想論だとしても、そうなるように
人材育成担当の方は意識し続けていくことが
とても大事だと私は思います。
Aさんの取り組み例からは、
・対象者の状況をリアルタイムで把握する
・対象者のマインド醸成につながる仕掛けを複数施す
この2点が対象者のマインド醸成に大きく貢献していたと
私は分析しています。
Aさんが取り組み、仕掛けを施したことで、前述のとおり
対象者のなかでも自律的姿勢を持ち、自主的に行動している人は、
その他の対象者と比べてプラスαの評価やサービスを得られている
という状況が生まれました。
それが、その他の対象者には「あの人の行動はメリットがあるようだ」
との気づきと理解を促し、対象者全体のさらなる意識づけにも
つながりつつある状況です。
これはある意味、自主性がある人を区別することによって、
周囲に対して影響・刺激を与えるやり方になるかと思いますが、
直接関わりサポートする私の立場から見ても、
正当で効果がある仕掛けであると私は納得している次第です。
男性管理職比率8割超といった技術系企業における
女性活躍推進プロジェクトは容易ではありませんが、
今回ご紹介したAさんの取り組み姿勢をご参考にしていただき、
自社の取り組み施策の何らかのヒントにつなげていただければ
とても嬉しく思います。
***
今も、Aさんは対象者の状況をつぶさに観察し、
適切なタイミングで私に相談してくださっています。
「今この状況なら、先生のメッセージが響くと思うのです。
ぜひ、こんな内容についてコメントしてもらえませんか」
と、もはや私がAさんから宿題をいただいている状況です(笑)
そんなAさんの取り組み姿勢に敬意を抱きながら、
人事担当者の姿勢や思いが、施策に直結していることを
改めて痛感すると共に、こんな素晴らしい担当者と
ご一緒に女性活躍推進プロジェクトに関われることを
心から幸せに思っています・・!
- 経営戦略・経営管理
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◆技術系企業D&I突破口となる次世代リーダー・女性管理職を育成
元NTT女性管理職10年、約500名のSE部門における人事育成担当3年の豊富な現場経験を持つ。これまでのべ5,000人以上の技術系企業のリーダー・管理職育成に携わる。専門は技術系企業に特化したD&I推進コンサルティング。
細木聡子(ホソキアキコ) 株式会社リノパートナーズ代表取締役/技術系ダイバーシティ経営コンサルタント/(公財)21世紀職業財団客員講師/中小企業診断士
対応エリア | 全国 |
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所在地 | 千代田区 |
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