昇格しないで50歳を過ぎた女性社員が見た“新しい世界”
技術系企業に長年勤める知人女性から、
「いつか、仕事でコラボしよう!」
と嬉しい連絡がありました。
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■昇格せず気づいたら50歳を過ぎていた
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「仕事でコラボしよう」と声をかけてくれたのは
私の昔からの知人で、今もよく連絡を取り合っては
近況報告しあう同世代の女性です。
彼女は出産・子育てのため、長期間時間短縮勤務を
していたこともあって、昇格することなく50歳を過ぎ、
今は職場で主任クラスの役割を担っています。
私は出会った当初から、彼女の優秀さ、仕事に向き合うスタンスに
刺激を受けていたので、切磋琢磨できる仲であるということに
何の疑いもありませんでした。
しかし、私自身が昇格するごとに、だんだんと彼女の
自嘲的な発言や振る舞いが気になるようになってきて、
特に、私が大企業を辞めて会社立ち上げをした時などは
「会社辞めて独立なんて信じられない・・」
と、心配を通り越して、崖っぷちにいる友達を
不憫がっているかのような視線に、さすがに私も
身の置き場に困ってしまったものです。
さらに、その時彼女はこんなふうに言っていました。
「もう50歳過ぎたし、楽に働いて給料もらえればいい」
人それぞれの考え方もあるので、否定も肯定もしませんでしたが、
以前、彼女が前向きに働いていた時のことを思い出すと、
もったいないな、と思わずにはいられなかったことを
彼女の疲労感漂う表情と共に、今も鮮明に覚えています。
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■仕事の成果が認められて意欲も回復!
〜マズローの5段階欲求「自己実現欲求」から見た景色
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そんな彼女から、つい先日連絡がありました。
実は、かれこれ10年以上個人的に取り組んできた社会貢献事業が
メディアに取り上げられて注目を浴び、
会社としても本格的にその事業に乗り出すことが決定した、と
それはもう嬉しそうに話をしてくれたのです。
時間短縮勤務を長く続けてきた彼女ならではの視点を
反映し完成したシステムは、社会的弱者と言われる人たちの
大きなサポートとなるでしょう。
この結果を、真っ先に私に教えてくれたことに
実はこんな理由がありました。
「自分で課題意識を持ってスタートしたのに、なかなか成果につながらなくて、
時短だから仕事の評価も低いままで・・。
そのうち『私はこの会社のお荷物だ、何の価値もない』と思うようになってしまったの。
そんな時、あなたの独立の話を聞いて、素直に喜べなくて・・。
あの時は嫌な言い方で本当にごめんなさい。ずっと変わらずに
寄り添ってくれた唯一の人だった。だから一番に伝えたかったの!」
と当時の気持ちを正直に話してくれたのです。
今回の成果が掲載されたメディア情報を複数送付してもらい、
これまでの軌跡を熱く語る彼女の目は輝いていて、
以前よりも若返ったように見えたほどです・・!
「楽に働けばいい」
と言っていた彼女はもうどこにもいませんでした。
ここで私が改めて思い出したことは、「マズローの5段階欲求」です。
彼女はこれまでの成果を会社に認められたことで
第4段階の「承認欲求」を超え、第5段階「自己実現の欲求」へ
到達し、「社会や会社に貢献したい、そのために行動する」
という自律的な成長意欲にあふれています。
もう、誰も彼女を「やる気なさそう」とは感じないでしょうし、
視座が上がって、新しい景色を見ることができた彼女自身も、
自分しか見えなくなっていた頃の自分に戻ることを
決して選ぶことはないと思います。
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■女性視点が自律的に活かされる組織になるために
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当社の独自調査「女性活躍推進2.0実態調査」では
技術系企業に特化しているせいもあってか、管理職から見た女性社員は、
「仕事に対する意識が低い気がする」
「リーダーになりたがらない」
といったイメージを持たれている意見が少なくありません。
そんなふうに見えてしまっていることは事実かもしれませんが、
「本当にそうでしょうか?」と私は問い直す機会を持って欲しいと
思っています。
私の知人のように、50歳を過ぎ、半ば諦めていたところから
当事者意識を持って課題と向き合い、自分ならではの視点を生かすことで
成果に結びつき、結果として会社に大きな成果をもたらす人材として
活躍することも十分可能性はあると考えています。
特に、男性管理職が多く、男性主体の視点で運営されているような
組織においては、女性ならではの視点や気づきを生かすことで
これまで見過ごされてきた飛躍が、発展が、顔を出すことにも
つながっていくのではないかと思うのです。
そのチャンスを創り出すのが、人事や管理職、経営者の役割であり、
新しい景色を見せるような取り組みを通じて気づきを促すことが、
結果として女性社員にとっても、会社にとっても
良い影響があるのではないかと思います。
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■技術系企業の女性活躍推進は難しい。だから、意義がある。
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技術系企業の女性活躍推進をサポートしていると、
「技術職として男性と対等に働いているんだから女性ばかり特別扱いしないで」
「そもそも補助的なスタッフ職として入社したのに活躍しろって今更じゃない?」
「ステップアップとかしたくないですし、このままそっとしておいてください。」
こんな反発が起きるのはよくある事です。
よくある事ですが、その度に打ちのめされます・・。
ただ、私自身が実際に技術職として働いてきて
当時の悩みや課題が、今なお、同じように働く女性たちを
追い詰めている実態がある以上、ここで私が諦めたり
立ち止まることは決して良い方向には進まないと確信して、
自らを奮い立たせています。
どんなに技術的に対等に活躍する女性社員がいたとしても、
実は言葉にできない働き辛さを抱えて悩んでいる人がいます。
補助要員だから何を言っても無駄だし、昇進しないからと
本来役立つ視点や意見を発信する意義に気づくことができず、
成長の機会を逃している優秀な人がいます。
「このままでいい」という現状維持は、
衰退への扉を開くことだということが分かっている以上、
女性社員の意識を醸成する取り組みを諦めずに続けて、
男性社員が持つ女性社員へのアンコンシャスバイアスを解き、
男女視点を融合した先に得られるこれまで以上の成果を
より多くの技術系企業に手にして欲しいと思います。
- 経営戦略・経営管理
- モチベーション・組織活性化
- キャリア開発
- リーダーシップ
- マネジメント
◆技術系企業D&I突破口となる次世代リーダー・女性管理職を育成
元NTT女性管理職10年、約500名のSE部門における人事育成担当3年の豊富な現場経験を持つ。これまでのべ5,000人以上の技術系企業のリーダー・管理職育成に携わる。専門は技術系企業に特化したD&I推進コンサルティング。
細木聡子(ホソキアキコ) 株式会社リノパートナーズ代表取締役/技術系ダイバーシティ経営コンサルタント/(公財)21世紀職業財団客員講師/中小企業診断士
対応エリア | 全国 |
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所在地 | 千代田区 |
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