研修実施後アンケートの活かし方
■アンケートの活かし方
このコラムを読まれている人事担当者の皆さまも
社内において研修等実施した後は、必ず
アンケートを取られているのではないかと思います。
理解度や満足度を図るような数値的な結果や、
フリー回答まで様々な記述から社内の実態が見えます。
もし、無記名のアンケートを実施すれば、
普段はなかなか言い出せない本音を引き出しやすい
かもしれません。
先日、人事担当者コミュニティにおいて、とある企業の
無記名式アンケート結果50名分を題材にした勉強会を開催したのですが、
無記名式で男女の区別なくアンケート調査したとしても、
ある程度の想定はつくものです。
例えば、私がアンケート回答者の性別を判別する基準の一つが、
男性のフリー回答で、その文章の書き振りです。
体言止めを多用していたり、現状として
「女性ばかり優遇されているのでは?」という疑問を
綴っている傾向が見えると、男性社員の本音であると想定して
社内の実態を把握する材料にしています。
その実態の分析結果をもとにして、
今後どのように社内で施策立案・展開していくか、
対策を考えるのか、がとても重要だと考えています。
■チェックポイントは「他責視点」
さらに、アンケート結果のフリー回答から
読み解き、注意深く検分していることが
アンケート回答者の「視点」です。
研修の満足度5段階評価がたとえ「大変良い」を
選んでいたとしても、フリー回答の記述部分において、
「他責視点の傾向が強い」
という状態が見て取れると、せっかく実施した研修の
最終的なゴールにたどり着けていないことと同じだと
私は考え、更なる課題解決に向けた施策を考えるでしょう。
一方、研修の満足度が低かったとしても、その理由が
「研修時間が短い」
「女性だけでなく男性にも参加して欲しかった」
といったものであれば、むしろ研修自体には
一定の効果や満足感があったのではと考えます。
この2つの捉え方の差はどこにあるかというと、
●自分視点にとどまった見解か?
●会社全体を見た見解か?
この2つの視点に突き詰められると思っており、
前者の見解を持った意見の多くは、
「上司が対応してくれないから」
「誰かがやって欲しい」
といった隠しきれない他責の気持ちが多少混ざって
いるように私は感じています。
これがもし、実施した研修内容が全社的な組織改革・意識改革の取り組みだった場合、
アンケートの中に社員1個人に関係する範囲でしか論理が通らないような意見や
木を見て森を見ずというような回答傾向にある人物が
特定できるなら、私であれば注意深く観察する対象として
気をつけるように心掛けるでしょう。
対象者が管理職であるなら尚更、その人の思考の癖が
周囲へ悪影響を及ぼす可能性を最小限にするため、
その思考の癖を外す関わりや施策について考える
必要があるのではないでしょうか。
少なくとも、私は大企業で人材育成担当として
尽力していた頃は、一人ずつ丁寧に対応することを
念頭においた人材育成を進めてきました。
■アンケートは宝の山!
もしかすると、アンケート回答から心理を読み解くのは
女性の特性を活かし、その特性を強みに変えることにつながっている
かもしれない、と最近ますます感じるようになりました。
「状況把握」「相手の考えを察する」等は、
女性の本能的な部分に起因し、
生物学的な脳の構造上から自然と育まれたもの。
その特性を今改めて強みとして捉え直すことで
人をいかに活かしていくかという、人材育成の分野で
貢献し活躍できるのではないかと思います。
アンケートの結果から、書き手の心理を考え抜き、
綴られた言葉の奥の奥まで徹底して読み解くことを
ぜひやっていただけたらと思います。
なぜなら、アンケートは「宝の山」だからです。
これまでお伝えした通り、自由記述欄は本音を
書いてもらえるので、無記名でやるほどこれまで
出てこなかった意見が面白いようにあぶり出されてきます。
ちなみに、「女性活躍推進2.0実態調査2019」においても、
数値的な部分の分析はもちろん、本音が書かれた自由記述欄に
特に注目して分析結果をまとめています。
自由記述欄に書いている受講者がたとえ数人だったとしても、
同じような傾向の意見を書いている人が複数人重なっていれば、
それは立派な社内の意識傾向の一つになるのではないでしょうか。
アンケートでは、相手の本音や気持ちを深くあぶりだせない、
という課題は付きまとうものです。分析も大変手間がかかります。
面倒な側面はあるものの、現場の実態や本音を把握する
手がかりは、アンケートの中にたくさん散りばめられていて、
次の施策のヒントが隠されていると私は実感しています。
人事として、次にどういうアプローチが必要であり、
どのように伝えればいいのかということも
アンケートを深く読み込むと浮かび上がってくることも
多々あるかと思います。
人事担当者の皆様には、そういった観点で、
アンケートを読み解くことを実践していただけたらと思います。
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◆技術系企業D&I突破口となる次世代リーダー・女性管理職を育成
元NTT女性管理職10年、約500名のSE部門における人事育成担当3年の豊富な現場経験を持つ。これまでのべ5,000人以上の技術系企業のリーダー・管理職育成に携わる。専門は技術系企業に特化したD&I推進コンサルティング。
細木聡子(ホソキアキコ) 株式会社リノパートナーズ代表取締役/技術系ダイバーシティ経営コンサルタント/(公財)21世紀職業財団客員講師/中小企業診断士
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