部下に仕事を任せるということ

リーダーの立場であれば、仕事を部下に任せる場面は日常茶飯事かと思います。任せ方もリーダーによって千差万別で、任せる際の心理も「不安で仕方ない」時もあるでしょう。
さて、私にとって部下に仕事を「任せる」ということは、
「この人は必ずやり遂げる力がある」
と心から信じて、仕事をお願いするというスタンスです。
そして、その仕事が成功したのであれば、それは部下の成果。もし失敗したのであれば、上司である私の責任であると考えています。
すると、不思議と成功しかしないものです。
ここでは、部下に仕事を任せる4つのポイントについてお伝えします。
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1.信じる
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私もリーダーになりたての頃は、正直、部下に仕事を任せられませんでした。部下が自分のように仕事をこなせるわけがない、時間もかかるし、成果も出せないだろう・・・だったら自分がやるほうがいい。仕事を任せながらも内心はそんなことを思っていた新米リーダーでした。
しかし、「任せる」ということの本当の意味、そしてその効果の素晴らしさが分かると、「怖い」という感情は一切なくなったのです。私がそこから抜け出したのは、うっかりしていると見逃してしまいそうな、些細なことでした。
その些細なことに気づくための大前提が、「信じる」ことだと考えています。
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2.部下の長所だけを見る
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私は、「人の長所だけを見る」ことを意識しています。
人には長所も短所も必ずあります。短所を見てしまうと、その人の能力まで信頼できなくなり、仕事を任せるのがとても怖くなってしまうものです。
特に女性は、相手の短所を見てしまうと、会うたびに感情の振れ幅が大きくなり、最終的にその人のことが嫌いになってしまう(!)という極限までたどり着いてしまうようです。
それが職場の女性部下との間で起こってしまった場合、互いに敵対関係になってしまい、最悪の場合、部下に足を引っ張られてしまう可能性があります。
だからこそ、短所は見ずに“長所だけ”を見て、仕事を任せる、ということが必要です。長所はどんな小さなことでも構いません。「こんな良いところがあるから、きっとこの仕事は出来るだろう」と思い、全面的に信頼するのです。
人は、自分を認めてくれ、信頼してくれる人を裏切ることはしたくないと思うものです。そして、任せた仕事を部下がやり遂げた時は、思い切り褒めて、認めると、互いの信頼関係が確固たるものとなり、部下は「上司のために仕事を頑張ろう」という気持ちが高まるのです。

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3.適切な情報開示
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上司は、仕事を進める上で判断材料となる情報を多く持っています。それは、部下が持っている情報量をはるかに超える膨大な量です。そこを踏まえた上で、上司は部下に仕事の指示を与えなければなりません。「部下が思うようなアプトプットを出してくれない」と日頃からお悩みの方は、
「適切な情報開示をしているだろうか?」
ということを振り返っていただければと思います。
これまでの私の経験から、そもそも、自分と部下の間には、大きなポテンシャルの差はないと考えています。
しかしながら、部下のアウトプットが思うようなものにならないのは、そこに“情報の格差”があるからなのです。
自分がやるのと同じレベルのアウトプットを部下に出すよう指示を出すのであれば、まずは自分が持っている同等レベルの情報提供を部下に行うことが必要になります。
会社としての方向性やそれを踏まえた自分の方針や考え、そして、仕事の進め方等のビジネススキルについても自分が持っているレベルと同じレベルの情報を部下に伝えることもお忘れなく。
そうすると、部下は安心して仕事にチャレンジすることができ、かつ、自分の考える方向性に沿ったアウトプットが出てくるようになるのです。
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4.適切なタイミングでのフォロー
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部下に仕事をお願いした後、そのまま仕事の期限が来るまで何も言わずに我慢していたら、結果全く出来ていなかった・・・。そんな経験をお持ちの方は多いかもしれません。
以前の私は「仕事を任せた後は、むしろ口を出さない方が部下の成長につながるだろう」と信じていました。しかし、それは完全なる誤りだと、その後まもなく気づきました。
答えは明快で、
部下にとってチャレンジングな仕事内容であればある程、
上司からの適切なタイミングでのフォローを必要とする
という理由からです。更に、部下へのフォローを繰り返しながら得た「部下の成長を促す仕事の任せ方」のポイントは、
部下の相談には「答え」を与えず「進め方」を伝えることだということも掴みました。
「答え」を言ってしまっては、部下の成長につながらないのは言わずと知れたことですね。
上司が対応すべき“部下の成長につながる仕事の任せ方”として私が実践していることは以下の通りです。
●仕事を任せっきりにせず、部下へ常に気を配る
-「部下が問題なくその仕事を進められているか?」
-「越えられない壁に当たって悩んでいないか?」
●部下から話かけられやすい雰囲気作りをする
●部下から相談を受けたら、最優先で対応する姿勢を保つ
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★女性管理職の方へ伝えていただきたいこと★
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特に女性は、部下の状態を察することが得意と言われています。この“女性ならではの特性”を発揮して、仕事を任せた部下への適切なフォローを重ねて部下を育て、チームの生産性が一気に上がる感動を是非体感いただければと思います。
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■□著者プロフィール□■
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細木聡子(ほそきあきこ) 株式会社リノパートナーズ代表取締役。
中小企業診断士・女性管理職プロデューサー・女性管理職育成アカデミー™️主催。
大学卒業後、NTTに入社。管理職に昇格し、大規模システム構築プロジェクトのマネージャーに就任するが、部下 がついてきてくれず、うまく成果を出すことが出来ない。周りにロールモデルもいなく、男性の真似をしたことにより違和感を与えていたということに気づく。自らしさを大切にしたマネジメントスタイルに徹底的に見直したところ、部下から圧倒的な支持を受け、残業0で成果2倍にすることに成功。
その後、社員483名の部門の人事・育成課長に就任。仕組み化による育成施策を展開したが、画一的なやり方が社員のモチベーションダウンを招いてしまう。柔軟性のある考え方、対応が不可欠だと痛感し、個人の状況に合わせた育成方法に切り替えたところ、メンタルダウンした社員をリーダーに成長させることに成功。この経験から500名までの集団にはそれに適したマネジメントのやり方があると確信を持つ。自らの経験を体系化した「しなやかなマネジメント法」を一人でも多くの女性管理職に伝えることが企業の成長と豊かな社会を創ると確信し、自らの使命としている。
- 経営戦略・経営管理
- モチベーション・組織活性化
- キャリア開発
- リーダーシップ
- マネジメント
◆技術職の現場に“変革の起点”を。
3年で女性管理職比率を30%上げる、実践型ダイバーシティ経営支援。
元NTT女性管理職10年、約500名のSE部門における人事育成担当3年の豊富な現場経験を持つ。これまで延べ7,700人以上の技術系企業の女性管理職育成に携わる。技術系企業のジェンダーギャップ解消を突破口としたダイバーシティ経営推進を支援。
細木聡子(ホソキアキコ) 株式会社リノパートナーズ代表取締役/技術系ダイバーシティ経営コンサルタント/(公財)21世紀職業財団客員講師/中小企業診断士

対応エリア | 全国 |
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所在地 | 千代田区 |
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