人的資本開示のポイント 投資家の立場から講演(7月例会)
日本生産性本部は7月12日、第95期「人事部長クラブ」の7月例会を都内で開催(オンライン併用)した。当日は「投資家が期待する人的資本経営・開示のポイント」をテーマに、松原稔・りそなアセットマネジメント常務執行役員責任投資部担当が投資家の立場から講演した。
松原氏は、「投資の時間軸が長期になればなるほど、可視的なもの(売上、利益、キャッシュフロー)から、不可視的なもの(ガバナンス・戦略、企業文化)に注目が集まるのは事実だ。ストック経済化に伴い、資本市場は相対的に長期資本が増える傾向にある。それは、資本市場が有形資産から無形資産にも関心を広げていること、投資家が投資判断において、非財務情報にも注目する傾向にあることからもうかがえる」と指摘した。
そのうえで、非財務の情報開示という面で最近、注目されている統合報告書は、企業価値を包括的に説明するもので、過去から現在、将来をつなぐ「ストーリー」(つながりや関係性)を経営者の視座から示すものであり、2022年には884組織が統合報告書を作っていることや、統合報告書を作成するにあたってはパーパス(企業の存在意義)、バリュー(行動規範)、ミッション(目標)、ビジョン(目指す姿)の四つの視点が重要であること、パーパスを明確化するだけでなく、それが実際の経営に反映されていることが重要であることなどを説明した。
人的資本経営・開示については、人的資本経営の実現のためには、経営戦略と連動した人材戦略をどう実践していくかとともに、そういった情報をどう可視化して、投資家に伝えていくかという取り組みも重要になると指摘し、「投資家にとっては、人的資本投資が企業のビジネス戦略や財務、企業価値にどう影響を与えているかというストーリー、因果性が非常に重要だ。それができれば、その企業に対する資本市場の関心は高まっていく」と強調した。
また、様々な論文や調査によると、「研修」や「人事施策の束」(様々な人事施策の組み合わせ)は財務成果と正の相関があることや、「従業員ウェルビーイング」は企業実績と正の相関があること、投資家は「従業員エンゲージメント」への関心が高いことも指摘した。
りそなアセットマネジメントでは、企業の統合報告書における価値創造ストーリーを生み出す基盤やサイクルなどを、価値観(パーパス、ビジョンなど)、ガバナンス(統治形態、多様性など)、ビジネスモデル(経営環境の分析、戦略と資源配分の検討など)、KPIの4項目で評価して、「AI(人工知能)評価スコア」を算出する統合報告評価を行っている。松原氏は、「こうした統合報告評価は投資家視点で評価しているからこそ意味があるのではないかと思っている。こうした評価を行うことを通じて、今後も、企業の開示に向けた取り組みをサポートしていきたい」と述べた。
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