「ピープルアナリティクス」実践事例を紹介(6月例会)
日本生産性本部は6月16日、第95期「人事部長クラブ」の6月例会を都内で開催(オンライン併用)した。当日は「ウィルグループの人的資本経営とピープルアナリティクスの活用」をテーマに、ウィルグループの人事本部本部長の土屋恵美子氏と人事本部人材開発部の大和田智之氏が講演した。
冒頭、土屋氏は、ウィルグループが販売、コールセンター、製造業、介護施設、建設技術者などに特化した人材派遣ビジネスを国内外で展開していることを説明したうえで、「企業のミッション、ビジョン、バリューを実現するためには社員のウェルビーイング(Well-being、身体的・精神的・社会的に良好な状態)の向上が重要だと考えている」と述べた。また、ウィルグループではウェルビーイングとWell-doing(より良い日々の活動・活躍)は相互に影響しあっているものと考え、双方に対してデータを活用した探求や施策実装を実施してきたことを説明した。
次いで、大和田氏が、ピープルアナリティクス(従業員のデータを収集・分析し、人事における課題解決に生かす手法)の実践事例を紹介した。同社では、社員の活躍について、活躍者の定義を決め、その活躍のレベルを測定したうえで、活躍者の性格傾向データを学習させることで、「活躍予測モデル」を構築し、社員が活躍するかどうかの予測を行っている。大和田氏は、新卒採用においては、2020年度から活躍モデルの活用を開始し、採用面接の参考情報として利用していることや、2021新卒の2年間のパフォーマンスと2022新卒の1年間のパフォーマンスを調べたところ、モデルの精度が証明されたこと、異動や配属においては、事業部・職種ごとに分けて予測モデルを作成することで、AI(人工知能)による適材適所の提案を行い一定の成果を確認できていること、退職抑止においては、退職が懸念される特徴を持った12パターンの予測結果に対して、性格タイプ別の抑止具体策を作成し、7月から運用を開始する予定であることなどを説明した。
社員のウェルビーイング向上に向けた分析では、過去のウェルビーイングに関する従業員調査を、「ベイジアンネットワーク」を用いて分析した結果、ウェルビーイングを向上させる最重要因子として、「信頼関係のある職場の雰囲気」「エネルギッシュ力」「人生満足尺度」の三つを抽出したことや、「人生満足尺度」に最も影響を及ぼす項目は社会的地位やポジティブ感情であること、その他のサーベイとの関連性においてもポジティブ感情の重要性が示唆されていることなどを説明したうえで、「これらの分析の結果、最重要因子やポジティブ感情を中心にウェルビーイング向上のための施策を打っていくという方針が決まった」と述べた。また、退職・パフォーマンスとウェルビーイングの関係では、退職する社員は退職直前に職場の幸せ力を中心としてウェルビーイングが低下する傾向にあることや、全体的にウェルビーイングが高い社員がハイパフォーマーになっていることなどを説明した。大和田氏は、「採用や配属、異動にAIを導入することで、活躍者の割合を高めるとともに、面接や異動決定の効率を高めることができた。ウェルビーイング向上のための様々な分析や取り組みを行い、過去3年間において実際に社員のウェルビーイングスコアを高めることができた」とまとめた。
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