人事の逆説2 フレームワークを使うと思考が減る
フレームワークとは汎用的に利用できる枠組みである。もともとはIT(ソフトウェア)業界で
アプリケーションソフトを開発する際に頻繁に必要とされる機能を提供し、アプリケーションの土台として機能するソフトウェアのことを差していた。
そこから発展してコンサルティング会社において、一般的に適用できるビジネス開発の枠組みという意味で使われるようになってきた。その後、コンサルティング会社ではフレームワークを持っていることを提案段階からPRするようになり、クライアントもそのフレームワークに頼ってきた。
このフレームワークは、とても便利なものである。フレームワークに沿って議論をし、穴埋め的にワークシートを埋めていけば効率的に物事を整理できる。フレームワークを使うことで検討時間を短縮し、議論のモレやダブりを防ぐことができる。
しかし、このフレームワークに頼り過ぎるのは問題である。フレームワークは、汎用的で穴埋め的であるがために、議論が目的を見失ったものになりやすい。
つまり、フレームワークに基づいて議論をしていると、何のために検討しているのかを忘れ、作業に没頭してしまう危険性もあるのだ。
そして、穴埋め作業が終了すると、あたかもプロジェクトの目的を達成したかのような錯覚に陥る。
人事の検討においては、「なぜだろう?」「本当は何が起こっているのだろう?」
「何が真の原因なのだろう?」そこから探索プロセスが始まる。
このプロセスこそ重要なのだ。
この探索プロセスをおざなりにして、表面的な課題だけを捉えてすぐにフレームワークに飛びつくのは危険だ。組織にいる人材は自ら考え自ら答えを出すプロセスを経て成長していく。自ら考え自ら答えを見つける経験というのは組織能力を向上させる要因になる。次に別の問題が起こったときにも、対処法を見つける力がつくからだ。
どのような組織でも、何かおかしいと思ったら、自ら考えて自ら答えを出す機能が備わっている。それは、何をやるべきかを自力で見つけ出す能力である。言いかえれば、HOWではなくWHATを考える能力を有している。これを「組織の自律神経」と呼ぶ。ところが、フレームワークに頼り続けていると、自らWHATを考える機会が減る。
WHATを考えなくなった組織は、HOWばかりを探し求める。すると、「組織の自律神経」が弱まり、問題が起こってもすぐに気づかなくなったり解決できなったりする。風邪をひきやすい身体(からだ)になってしまうのである。
人事の議論は時に哲学的な領域にまで達することもある。我々はなぜこの事業をしているのか、我々が働く意味は何なのか、何を残し、何を捨てるのか等、言いかえれば、HOW(どうやるか)ではなくWHAT(何をやるか)を考える作業である。
そのような議論において、フレームワークはむしろ有害ですらある。
人事部門の仕事は、効率性を重視するソフトウェア開発とは異なるということを認識してほしい。
ビジネスの世界ではこの10年位で、情報が非常に手に入りやすくなった。人事部門は、書籍やインターネットを通じて、沢山の経営手法、つまり、フレームワークを知ることができるだろう。その結果、貴社の人事は沢山のフレームワークを多用してはいないだろうか。フレームワークを適用することだけで安心してはいないだろうか。
再点検をして欲しい。
【参考】フレームワーク使用の功罪
フレームワーク使用
思考【小】>効率【大】 What<How 組織の自律神経向上△
フレームワーク不使用
思考【大】>効率【小】 How<What 組織の自律神経向上◎
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「人事の大学」を運営する株式会社JIN-Gの社長です/
ビジネス・ブレークスルー大学で准教授も務めます/
組織人事戦略コンサルタント
・株式会社JIN-G 代表取締役 組織人事戦略スペシャリスト
・ビジネス・ブレークスルー大学経営学部グローバル経営学科准教授
三城 雄児(ミシロ ユウジ) 株式会社JIN-G 代表取締役 組織人事戦略スペシャリスト
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