アウトサイド・インからインサイド・アウトへ
われわれは何か問題が起きたとき、
まずアウトサイドである外側からのアプローチで解決しようとすることがよく あります。
子供が騒いでいるとき「静かにしなさい」と言ったり、
売上げが上がっていないチームには「売上を上げなさい」と言ってみたりします。
外側からの指示や命令で相手の考え方や行動を変えるのは、
相手がコーチャブル(積極的にそれを受け入れようとしている状態)であればとても効率的な手法だと言えます。
しかし組織で起きている問題は、さまざまな要素がとても複雑に絡み合っていて、
なかなか単純で明快な「正解」を導き出すことは困難な場合が多くあります。
「売上を上げなさい」という指示を考えて見ても、
それを聞いた営業マンがこんなことを感じている状況が考えられます。
・開発部門がちゃんとした製品を作ってくれないから売れないんだ
・製造部門が納期を縮めてくれないから売れないんだ
・そもそも業界が不景気だから売れないんだ
たいていの場合、こういう要素がそれぞれ一定の事実としてあることも問題解決を複雑にしています。
成果が出ない原因が、自分以外の部署や環境にあると感じている人たちにとって、
「売上を上げなさい」というアウトサイドからの指示は、強いストレスを感じやすくなります。
そんな状態では、前向きに考えて成果につなげる行動にはなかなか繋がりにくいことが予想されます。
強く命令することによって、短期的にある程度の成果を出すことはできるかも知れませんが、
社員は無理やりやらされていると感じているため、それを持続することは難しく、
社内の空気がぎすぎすし出して、また売上が落ちたり、退職率が高くなったりします。
これが外部から指示や命令をして成果を出すという、
アウトサイド・ イン型アプローチの限界なのかも知れません。
ではどうすれば良いのでしょうか?
答えはとてもシンプルで、成果を持続して出し続けるためには、
組織の中にインサイド・アウトの状態を作り、さまざまな問題や課題に対して、
今できることに取り組み続ける文化を創ることです。
社員が外から与えられた指示によって考え・動くのではなく、
自らの内発的な動機によって行動する人を増やしていくことで、
組織は成果を出しやすくなります。
つまり「社員がやる気を出すこと」が大切なんですが、
ここでマネージャーの中には「なるほど!では、やる気を出せと言えばいいんだな」と
勘違いをする人がいます。
「やる気を出せ!」と言うのは、先に説明した
アウトサイド・ インのアプローチで、あまり効果が期待できません。
「やる気」というのは結果指標で、直接のコントロールでは 手に入らないものなんですね。
これは「利益」に例えるとわかりやすいかも知れませんね。
「利益をだす」というのは、明確に結果指標です。
どんなに利益が欲しくても、それを直接コントロールすることは誰にもできません。
利益を出すためには、まずお客さまに価値を認めてもらう必要があります。
でも、お客さまに認めてもらうことも結果指標なんですね。
「うちの製品はとってもお得だから買いなさい」と言って強制的に購入させたり、
購買行動を起こさせることはできません。
「なるほど、これを買おう」という「気持ち」を起こさせることによって、
始めて商品やサービスを買っていただけて、それが利益になるというストーリーですね。
その「気持ち」を起こしてもらうために、魅力的な商品を開発し、
気に入ってもらえるように業務サービスの質を上げて行くことが必要になりますが、
この「業務プロセス」の部分は社内のことなので直接コントロール できます。
多くの会社が業務プロセスをカイゼンして、質を高め、コストを下げることに
一生懸命取り組んでいるのは、それがダイレクトに利益に直結していると同時に、
唯一自分たちで直接コントロールできるプロセスだからです。
もちろん効果が出るまでには一定の時間が必要になります。
今すぐに利益が欲しいと言う時には、まるで靴の底からかゆい足をかくような、
もどかしい状態を表現した「隔靴掻痒」という言葉を思い起こすかも知れません。
ここまで書くと
「でも、業務の質を高めてお客さまに選んでいただく、 それは当たり前でしょ」
という方も多いと思いますが、インサイド・ アウトでやる気を出して
がんばる社員を増やす場合にも、まったく 同じ事が言えます。
直接的に「やる気を出せ、売上を上げろ」と言っても効果がないのは、
「やる気を出そう、売上を上げよう」という 「気持ち」の部分に働きかけていないためなんですね。
経営者は、お客さまに我が社の商品やサービスを選ぼうという気持ちになっていただくための努力を惜しみません。
でも、そのために必要である社員の一人一人がやる気を高めてがんばろうという状態になるための努力については、
やり方や方向性が効率的でない場合が珍しくありません。
結果として、売上を上げたいという経営者の期待が手に入らない場合、
まずは基本ベースである組織の状態や関係の質を根本的に見直してみてはいかがでしょうか。
「足下に泉あり」ということわざ通り、
あなたの会社でも、 ほんの少し掘るだけで、「社員のやる気」がどっとあふれて くるのではないでしょうか。
質問です。
みなさんの組織では、リーダーのみなさんが部下の内発的な動機を引き出すような接し方をしていますか?
- モチベーション・組織活性化
- 安全衛生・メンタルヘルス
- コーチング・ファシリテーション
- チームビルディング
- コミュニケーション
経営者や社員と一緒になって取り組むスタイルがとても好評で、
「こんな研修なら、また参加したい!」という声を多くいただきます。
社員数30名のソフト開発会社から、6000名の東証一部上場企業など主にものづくり企業の組織変革の支援に従事。支援した企業の組織力・業績の向上、従業員満足度の向上、離職率の低下、労働生産性の向上などを実現している 。
森田 満昭(モリタ ミツアキ) 一般社団法人エミライフ創研 代表理事
対応エリア | 全国 |
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