精神障がい者の現場受入れを進めるためには
精神障がい者の現場受入れを進めるためには【分散配置型雇用の仕組み作り】
従来の身体障がい者や知的障がい者を中心とした雇用に比べ、精神障がい者の雇用では
受入れ部署のハードルが高いですが、その要因の多くは精神障がいの特性に由来してい
ます。
その1つに、部署の責任者や労務担当者が抱えやすい『何が起こるか分からない精神障が
い者を受け入れる不安感』があります。「どのような適性や能力があるのか」「体調は
安定して働けるのか」という本人の状態だけでなく、「既存社員との相性は大丈夫だろ
うか」「配慮が負担になるのではないか」という周囲との相互作用もあるため、職場の
マネジメントへの懸念が強くなります。このような心理的ハードルには、採用段階から
受入れ部署にアプローチすることで改善が見込めます。
現状の障がい者雇用の体制では、属人性に頼り現場任せとなりがちですが、精神障がい
者を無理なく雇用し続けるためには、その特性を考慮した仕組みで支えることが大切で
す。
今回は、現場受入れをスムーズにするための採用の仕組み作りについてお伝えします。
① 採用の判断や責任を現場任せにしない
分散配置型の雇用では、健常者の採用選考と同じく「各部署に判断や責任を持たせる」と
いう方針を取りやすいですが、精神障がい者では不採用が繰り返されることがあります。
例えば、職場が疲弊するような精神障がい者のトラブルや失敗経験から次の受入れが消極
的になり、不採用とするケースが考えられます。あるいは、雇用経験が無い部署では、面
接での聞き取り方や判断のポイントがわからず、その場の印象(コミュニケーションが取
りにくそう、働く意欲が低そう等)を頼りに不採用とするケースも見られます。
障がい者雇用の担当部門が主体的に関わり、精神障がい者の採用に適した仕組み/対策を講
じる必要があります。
② 採用時から受入れ部署への支援を開始する
精神障がい者の採用では「面接時の印象」と「入社後の様子」との間にギャップが生じやす
く、どんなに面接経験を積んだとしても、採用時のミスマッチを完全に防ぐことは難しいです。
ただし、採用時の問題(想定よりも本人の状態が悪かった、通常の負荷に耐えられる状態で
はなかった等)、受入れ後の問題(業務内容や役割の変化に適応できなかった、周囲がフォ
ローできる余裕が無くなった等)に分けて対処していくことで、ギャップを小さくすること
は可能と考えます。
採用時から部署の責任者や労務担当者をサポートし、受入れ後に生じるギャップに備えて、
問題の早期発見/早期介入ができる体制を整えることが良いでしょう。
③ 疾病性の理解や把握に専門家を活用する
精神障がい者は、職業生活において「認知機能」と「調整機能」に制約を受けやすい特徴が
あります。業務遂行能力や対人関係能力には障がいの状態(疾病性)が大きく影響しますが、
その状態は変化を伴うため、専門的な知識が無いと適切に把握することは難しいです。応募
書類や面接で正確かつ十分な情報が得られたとしても、どのように解釈したら良いかわから
ない状況に陥りやすく、採用を見合わせてしまうこともあるかもしれません。
障がい特性はマイナスの側面だけではないため(マルチタスクが不得手⇔シングルタスクが
得意)、受入れ部署が共通認識を持って対応できるように、疾病性に関わる情報を正しく理
解する必要があり、専門家を活用するのも1つの有効な方法です。
雇用部門/上司任せとなりやすい分散配置型で精神障がい者を無理なく雇用し続けるためには、
専門家を含めた仕組みで支えることが大切です。
(シニアコラボレーター 諏訪 裕子)
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公認心理師/臨床心理士/シニア産業カウンセラー
【専門領域】障がい者雇用の企業支援、精神障がい者の採用・定着・育成支援
精神科・心療内科クリニックにて、医師との協働で会社員のメンタルヘルス相談等に関与。EAP事業会社にて企業のメンタルヘルス支援に従事。現在は、企業の人事部門に対する障がい者雇用のコンサルテーション、精神障がい者の現場管理職・本人支援を実施。
諏訪 裕子(スワ ユウコ) シニアコラボレータ―
対応エリア | 関東(茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県) |
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所在地 | 渋谷区 |
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