【後編】BPR・SS・BPOの違いと人事DX成功への進め方
本コラムは、人事業務効率化における代表的な手法であるBPR、SS、BPO各手法の特徴やメリット・デメリット、業務効率化の成功に向けて押さえるべきポイントを解説した記事の後編です。
_____________________
前編目次
人事業務のDXとは?
BPR・SS・BPOのメリットとデメリット
業務効率化成功への第一歩 ”BPR”
_____________________
後編目次
よくある失敗例と近年の企業の取り組み
BPR・SS・BPO何からはじめる?チェックポイント
_____________________
よくある失敗例と近年の企業の取り組み
BPRが不十分な状態でシェアードサービスやBPOを実施した企業の中には、期待したほどの効果が出せずに、元の運用に戻されたケースも散見されます。
一方で、過去のケーススタディから、より大きな成果を目指して、工夫して取り組みを進めているケースもあります。
以下は弊社ユーザー企業様で、近年SS、BPOに取り組まれた様子を一部ご紹介します。
■SS(シェアードサービス)
弊社ユーザー企業様の声を聞くと、グループ内すべてで制度が統一されている企業は少ないという傾向が見えてきました。
各社各様の制度を踏襲してシェアードサービス展開する場合、各社ごとの制度内容を理解する必要があるため、シェアードサービス運用部隊も、受託会社ごとに担当者を配置する体制をとることが多いです。
上記の場合、シェアードサービス運用部隊に十分な人員を配置することが困難となり、従来の品質を保ちつつ業務受託を継続することが難しいケースが見受けられます。
一方、最近シェアードサービス展開の検討を開始された弊社ユーザー企業様からは「極力制度も統一し、より高い業務集約効果を狙いつつ、持続可能なシェアードサービス運用を目指したい」といったご相談をよくいただくようになりました。
また、早期にシェアードサービスを展開された弊社ユーザー企業様からも「今後は制度の統一も検討したい」という声を伺うことが増えました。
この背景には、人事部の人員不足等を理由に、シェアードサービスのゴールが「システムやデータの一元管理」から、「システムやデータの一元管理 + 生産性の向上」に設定されることが増えたことがあるのではないかと推察しています。
■BPO
近年、人手不足の加速等を背景に、BPOが再注目されていますが、早期にBPOされた企業の中には、「期待していたほどの効果が出ない」「業務品質が著しく低下した」といった理由で、内製に戻されたケースもありました。
これは事前の業務整理が不十分な状況でBPOを進めたことにより、「自社とBPOベンダーの業務重複が多く発生してしまった」「既存業務が複雑なためにBPOベンダーからの問い合わせ対応工数が増えてしまった」といったことに起因することが多いです。
一方、最近BPO展開の検討を開始された弊社ユーザー企業様からは「最初にどのような業務整理をしてからBPOベンダーに相談すべきか」といったご相談をいただくことが増えました。
また「BPO導入前の業務整理コンサルティング」を強みとするベンダーも増えてきたため、BPOパートナー検討の際には注目いただくとよいかもしれません。
BPR・SS・BPO何からはじめる?チェックポイント
取り組みの目的や会社規模、業種等によって異なる部分はありますが、BPR・シェアードサービス・BPOをはじめる前のチェックポイントの例をご紹介します。
STEP1:BPR実行状況の確認
まずは自社のBPRの実行状況を、以下のチェックリストに沿って確認してみましょう。ひとつでも当てはまれば、BPRからはじめるのがよいと考えられます。
□業務フローが可視化できていない
□システム化できていない業務が50%以上ある(手作業・紙運用)
□イレギュラーな作業や判断を伴う業務が10%以上ある
STEP2:シェアードサービスとBPOの検討
グループ会社があり、シェアードサービスやBPOも検討されている場合、以下のチェックリストを確認しましょう。ひとつでも当てはまればシェアードサービス / BPOを進めるとよいでしょう。
基本的には、シェアードサービス→BPOの順番で取り組むことをおすすめします。
▼シェアードサービス
□従業員100名以上のグループ会社がある
□グループ会社の利用システムが統一されていない
□グループ合計で「管理対象人数÷業務担当者数」が200を下回っている
▼BPO
□ノンコア業務の比率を大幅に下げたい
□固定費から変動費にシフトしたい
□リスク分散したい
弊社ソリューションのご紹介
いかがでしたでしょうか。
本コラムで解説の通り、業務効率化を進めるためにはBPRからはじめることがカギです。
BPRを完遂するには、数年単位で時間がかかるケースが多いため、何を実施するかを洗い出したうえで、その中でも「Quick-Win施策(効果が高く、難易度が低い)」から着手し、早期に成功体験を積むことで、社内関係者の納得感を醸成しながら進めて行くことが成功のポイントです。
「一般論としてのイメージはついたが、もう少し自社の状況も踏まえて検討したい」という場合にお役立ていただける弊社ソリューションをご紹介いたします。
■BPR支援(Business Consulting Service)
お客様の課題感に応じて、弊社製品であるCOMPANYの活用はもちろんのこと、COMPANY周辺領域まで、広く人事業務プロセスの調査、分析、改善提案までをコンサルティングするサービスです。調査結果等をもとに、Quick-Winを意識した施策の実行順についてアドバイスが可能です。
また必要に応じて、具体的な施策の実行や効果測定をサポートいたします。
最後に、これまで弊社がご支援したBPRプロジェクトについて、進め方、意識したこと、工夫したポイント等を一部ご紹介します。
__________________________________________________
・業務量調査で、50業務(手続きレベルでは100フロー)、約3万時間分の工数配分と課題概要を可視化した
・うち課題のある業務においては、約3割程度の工数を削減できるポテンシャルがあると試算した
・すべての課題を解決しようとすると膨大な労力がかかるため、改善施策実行による費用対効果を試算し、実行順を決定した
・BPRプロジェクト期間を3年と置いて、フェーズを5つに区切り、予算を確保した
・具体的な改善施策を検討する段階で、DX部門と経理部門との連携業務の効率化も必要になり、時間がかかることがわかったため、プロジェクト全体の進捗への影響を最小限にするため、施策実行順を再検討した
・勤怠回収の業務のフローが社員区分や勤務形態によって30パターンあることが可視化され、人為的ミスに繋がっていることがわかった
・「Quick-Win施策(効果が高く、難易度が低い)」を優先実行し、成果が出るたびに社内関係者に広報して、協力体制を意図的に醸成した
・結果として、業務システム両輪での再設計により、年間約3,000時間の業務工数が削減できた。これはBPRを先に行っていないと見落とす可能性があった。
__________________________________________________
※特定のお客様の事例ではなく、複数事例を総括したモデルイメージです
いかがでしたでしょうか。
貴社の人事業務効率化を考えるヒントになりましたら幸いです。
- 経営戦略・経営管理
- モチベーション・組織活性化
- 労務・賃金
- 人事考課・目標管理
- ロジカルシンキング・課題解決
WHI総研
人事システムの保守コンサルタントとして、業種を問わず100社を超える大手法人の業務改善を支援。その後、「持続可能なBPR」を専門とし、問題解決に向けた調査やプロジェクトマネジメント支援等のコンサルティングサービスの提供に従事している。
井上 奈甫(イノウエ ナホ) 株式会社Works Human Intelligence / WHI総研
対応エリア | 全国 |
---|---|
所在地 | 港区 |