【前編】BPR・SS・BPOの違いと人事DX成功への進め方
経済産業省がDXレポートで問題提起した「2025年の崖(※)」が迫る中で、実際に「人事部の人員不足」に直面されている方も多いのではないでしょうか。
筆者は長年、業務効率化に向けたコンサルティング業務に従事してきましたが、このような状況を受けて、近年特に「人事業務における定型業務を効率化し、人事業務の中でもより戦略的な業務に多くの人員を配置したい」というご相談が増えました。
定型業務効率化のため、人事業務のDX化を検討される企業が多いですが、自社が何から手をつけるべきかわからない、というお悩みもよく伺います。
本コラムでは、人事業務効率化における代表的な手法であるBPR、SS、BPO各手法の特徴やメリット・デメリット、業務効率化の成功に向けて押さえるべきポイントを前後編で解説します。
※2025年の崖…2018年に経済産業省が開示した「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」において、IT人材不足が加速する中で、既存システムの複雑化・ブラックボックス化を解決できなかった場合、DXが実現できないだけでなく、2025年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性がある(=2025年の崖)と問題提起された。
出典:経済産業省DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~より
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前編目次
人事業務のDXとは?
BPR・SS・BPOのメリットとデメリット
業務効率化成功への第一歩 ”BPR”
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後編目次
よくある失敗例と近年の企業の取り組み
BPR・SS・BPO何からはじめる?チェックポイント
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人事業務のDXとは?
「人事DX(HRDX:Human Resource Digital Transformation)」とは、人事部が法定業務の遂行を主とする定型的な機能のみならず、より経営に資する戦略的な機能を持つことを目的とし、「ビジネスプロセス自体の抜本的な改革」や「テクノロジーの駆使」により、業務効率化や、今までになかった新たな価値を創出するための手法です。
人事DXでは、まずは定型業務を効率化することで、戦略業務に割けるリソースを確保するという流れが一般的です。
BPR・SS・BPOのメリットとデメリット
人事業務を効率化する手法として、BPR・SS・BPOがあげられます。
BPR・SS・BPOそれぞれの違いや、メリット・デメリットを把握できていないと、局所的にSS等の打ち手ありきで進んでしまいがちです。効果的に進めるには全体像を捉え、何からはじめるべきか知ることが大切です。
■BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)
BPRとは、ビジネスプロセス・リエンジニアリングの略です。業務本来の目的から逆算して、業務プロセス・運用体制・利用システム等、全体としての「在るべき理想」像を再構築することを指します。
■SS(シェアードサービス)
SSとは、シェアードサービスの略です。グループ会社の人事・総務業務などをまとめて担当する組織(シェアードサービスセンター)を立ち上げ、業務を集約します。
■BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)
BPOとは、ビジネス・プロセス・アウトソーシングの略です。人事部の業務プロセスにおける、企画、設計、運用まで一貫して外部の専門業者に委託することを指します。
それぞれのメリット・デメリットは以下の通りです。
いずれの手法にもメリット・デメリットがありますが、成功のカギを握るのはBPRです。
業務効率化成功への第一歩 ”BPR”
弊社ユーザー様の取り組みを振り返り、シェアードサービス化・BPO化成功の要となる「BPR」について下記で説明します。
■SS(シェアードサービス)化検討の場合
グループ内の人事・総務業務などを行う組織を1つに集約化することで、人事業務の効率化を図るシェアードサービスにおいて、より大きなメリットを得るには、受託会社間の制度、運用方法、運用システムの統一化 / シンプル化が重要です。
受託会社ごとのイレギュラー業務の発生を可能な限り抑えることで、対応工数の抑制のみならず、業務品質の向上や、コンプライアンスの強化も期待できます。
そのため、シェアードサービス化を検討する際は、各社の業務を現行のまま集約するのではなく、現行制度や運用方法、運用手法のうち統一化、シンプル化できる余地がないかを見直すBPRの実施からはじめることを推奨します。
■BPO化検討の場合
シェアードサービス化とBPO化の一番の違いは、業務実施者が自社(自グループ)外の人員になる点です。これまでの業務文化や、制度改定の積み重ねによる業務等のイレギュラーな業務や複雑な計算式を、外部専門業者が自社の人員と同じように理解できるとは限りません。
むしろ、イレギュラー業務の量は、コミュニケーションロスの発生を高めるリスクとなり、そのようなロスにより発生した追加業務は、そのまま追加委託費用に直結します。
業務効率化、コストの適正化の観点からも、BPO化前に現行業務を見直し、イレギュラー業務を削減するBPRの実施を推奨します。
上記のように、まずはBPRを実施することで、シェアードサービスやBPOの効果を高めることが可能です。
つづく後編では、
・よくある失敗例と近年の企業の取り組み
・BPR・SS・BPO何からはじめる?チェックポイント
をご紹介します。
- 経営戦略・経営管理
- モチベーション・組織活性化
- 労務・賃金
- 人事考課・目標管理
- ロジカルシンキング・課題解決
WHI総研
人事システムの保守コンサルタントとして、業種を問わず100社を超える大手法人の業務改善を支援。その後、「持続可能なBPR」を専門とし、問題解決に向けた調査やプロジェクトマネジメント支援等のコンサルティングサービスの提供に従事している。
井上 奈甫(イノウエ ナホ) 株式会社Works Human Intelligence / WHI総研
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