【後編】リスキリングで人材育成を加速する3つのポイント
人材に投資を行う人的資本経営と従業員に新たなスキルを身に付けてもらうリスキリング、双方に注目が集まることで、企業の人材育成が見直されようとしています。
しかし人材育成において、企業は単に人材に投資をすればよいという訳ではなく、従業員のモチベーションを継続させる工夫も重要です。
本記事は、人的資本経営とリスキリングのこれまでの動きや必要性を整理しつつ、人材育成の成果を出すために必要なポイントを解説する記事の後編です。
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前編目次
ーリスキリングが注目される背景
ー企業におけるリスキリングの必要性
ー人的資本経営とリスキリング
ーリスキリングで失敗に陥りやすいケースとは?
後編目次
ーリスキリングで人材育成を加速させる3つのポイント
ー定量的なKPI設定の重要性
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リスキリングで人材育成を加速させる3つのポイント
前編で解説した、リスキリングで陥りやすい失敗を踏まえると、人的資本経営におけるリスキリングには以下の3つの要素が必要であるといえます。この3つの要素の具体的な実践方法を解説します。
1.企業に必要な人材像を定義する
事業に必要な人材像を作り上げるためには、人事部がハブとなり、経営陣と現場の考えを擦り合わせなければなりません。
まず事業戦略として、今後自社がどの事業に注力していくのか、企業として将来実現したい事業ポートフォリオを人事部も熟知する必要があります。
そしてその事業ポートフォリオを実現するために、どのようなスキルを持った人材が必要なのかを経営陣と議論します。また現場視点で、ビジネスを継続するために必要な人材について議論しつつ、現在どのような人材が活躍しているのかを整理することが大切です。
経営陣、現場の意見を集約したうえで、将来の事業ポートフォリオを実現するために必要な人材像を決定します。
2.学習を継続させるしくみを作る
学習の継続を従業員のモチベーションだけに頼ってしまうと、一部のモチベーションの高い従業員以外は継続が難しくなるでしょう。
従業員がモチベーションを保つポイントとして、将来のキャリアをイメージしつつ、現在の学習の進捗状況や新たに学習すべき内容を相談できるサポーターのような存在も必要です。1on1で上司が学習の進捗状況を確認したり、学習内容を提案するといった取り組みが必要でしょう。
こうした進捗管理や学習内容の提案には、研修管理システムを活用することで、上司の負担を減らしつつ自律的な学習を促進することもできます。
3.学習内容に連動した職務を提示する
学習内容を身に付けた結果、どのような職務につけるのかをイメージさせることで、従業員が学習するモチベーションを喚起することができます。そのためには、職務ごとに必要なスキルを棚卸する必要があります。
すべての職務で実施することはかなりの労力を要するため、まずは事業でコアとなる職務のスキルを定義するとよいでしょう。希望の職務につくためにはどのようなスキルが必要なのか明確になることで、従業員に学習するモチベーションが生まれます。
さらに、公募制や社内インターンシップのように従業員が自らの希望を実現できるしくみも合わせて用意すると、従業員の自律的なキャリアをより促進できるでしょう。
定量的なKPI設定の重要性
人的資本経営の考え方のもと、人材育成に投資を行った場合、どのようなリターンが得られたのかを検証する必要があります。必要な人材がどれだけ育成されたのか、それによって事業にどのようなプラスの影響がもたらされたのか、KPIを設定し、PDCAサイクルを回していくことが重要です。
KPIの考え方には、以下の2種類があり「人事部としてのKPI」によって、施策を着実に実行しつつ、「企業としてのKPI」も同時に設定し、投資の結果としてのリスキリングの効果をモニタリングすることが重要です。
■人事部としてのKPI
人事部としてのKPIは「研修受講率を〇%にする」「Learning Management Systemを導入し、利用率を〇%にする」「施策の満足度を〇%以上にする」といったものが考えられます。
これらのKPIは施策の実施と運用に関するものであり、人事部の人材育成担当者としてのKPIとしては適切であるといえます。まだ人材育成施策に関してKPIがない企業は、人事部としてのKPIの設定からはじめるとよいでしょう。
■企業としてのKPI
「人事部としてのKPI」に加えて、企業全体としてのKPIも設定することが重要です。「データサイエンスを学んだ人材を〇名育成する」といったものも考えられますが、事業戦略と連動したアウトカム(事業への影響)を意識するとよりよいでしょう。
たとえば「AIに関する事業を〇個以上創出する」「DX人材による業務効率化によって〇円のコスト削減を実現する」といったものです。
人的資本開示の流れによって、人材に関する投資と効果を様々なステークホルダーに見せる必要性が高まる中、人材育成施策においても企業全体としてのKPIを設定しておくことも重要性を増しています。
成果に繋がる人材育成を
人材育成は単純に費用をかけたから成功するものではありません。人材像の定義、職務の提示、モチベーションの継続、施策の効果検証とやるべきことは多岐にわたります。
人的資本経営時代のリスキリングは、もはや人事部だけで完結することは難しく、経営陣や現場との連携も重要です。成果が出る人材育成を実践するために、システムも活用しながら成功に必要な要素を一つひとつクリアしていきましょう。
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WHI総研
政府系金融機関にて財務分析や融資相談、調査会社にて市場調査・企業誘致調査を行い、様々な企業を見てきた経験を活かし、Works Human Intelligenceにて経営者と従業員、双方の視点から人事課題を解決する研究活動を行っている。
井上 翔平(イノウエ ショウヘイ) 株式会社Works Human Intelligence / WHI総研
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