【後編】要員計画を解説!効率的に適正な人件費を決める方法
要員計画とは、将来企業に必要な人員数や人件費がどの程度かを予測し、計画することです。
意識的に要員計画を行っている企業もあれば、過去の実績からなんとなく人員数や人件費予算を決めている企業もあるでしょう。人件費や人員数は、あらかじめ予測・計画しておくことで、早い段階から将来の人員不足や人件費による利益の圧迫等への対策が立てられます。
本記事は、要員計画をこれから始めようとする方、新たに要員計画の担当になった方向けに、要員計画の基本や計画の立て方を解説する後編です。
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後編目次
ー要員計画の立て方
・3. 適正な人員数、人件費を分析する
ーまとめ
前編目次
ー要員計画とは
ー要員計画の立て方
・1. 現在の人員数、人件費を把握する
・2. 将来の人員数、人件費を予測する
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ー要員計画の立て方
3. 適正な人員数、人件費を分析する
人員数と人件費をシミュレーションしただけでは、その数値が適正かどうかはわかりません。最後に、シミュレーションをした数値が自社にとって適正かどうか分析しましょう。
ここからは、適正な人員数と人件費を分析するためのポイントを、企業視点・部門視点からご紹介します。
企業視点での分析ポイント
1:事業計画の利益目標を達成できるか
中期経営計画のような事業計画を策定している場合、目標としている利益を達成できるかどうかがひとつのポイントです。
事業計画の達成に必要な人件費と比較して、シミュレーションの数値が高くなってしまっている場合は、何らかの人件費抑制策をとる必要があります。逆にシミュレーションの数値と比べて低い場合は、人員の追加採用を考えることができます。
2:同業他社と比較して適切な水準か
自社の人件費の水準が同業他社と比較して多すぎないかという観点もあります。
同業他社比較をする上で共通の指標となるのが「労働分配率」です。この労働分配率は生産性を測る指標であり、経済産業省より業界平均が公開されているため、業界の平均数値と自社の数値を比較することができます。
労働分配率とは企業が生み出した付加価値額に対してどれだけ人件費が使われたかというもので、以下によって算出されます。
労働分配率 = 人件費 ÷ 付加価値額(*)
(*)付加価値額は売上から仕入、原材料費、外注費等の外部購入価値を差し引いたもの。中小企業庁方式と日銀方式があり、以下の式は中小企業庁方式。付加価値額=売上-外部購入価値(商品仕入高、原材料費、外注加工費など)
ただし、労働分配率は必ずしも平均値に合わせなければならないものではありません。数値が同業他社より高い場合はなぜ高いのか、それが許容できるものかどうかを精査しましょう。
また、労働分配率が高い理由が生産性が悪いことに起因していれば改善策が必要です。しかし業界水準よりも高い給与を設定することで人材の質を向上させる戦略であれば、労働分配率が高いのは悪いことではなく、自社の強みとも言えます。
部門視点での分析ポイント
1:直接部門と間接部門のバランスがとれているか
部門は収益に直接貢献する直接部門と、収益をあげない間接部門にわかれます。この直接部門と間接部門のバランスを見ることが必要です。直接部門と間接部門の人員数、人件費の比率は直間比率と呼ばれ、以下の式から算出されます。
直間比率 = 間接部門の人件費(または人数)/全体の人件費(または人数)
直間比率は業種や企業規模によって異なりますが、一般的に10%(直接:間接=9:1)が目安だと言われています。
ただしこの数値はあくまでも目安で、自社の人員数、事業内容等によって、適切な直間比率も様々です。同業他社の数値を把握しつつ、自社の特徴を理解しておく必要があります。また他社との比較だけでなく、自社の過去とも比較して、直間比率が崩れていないかを判断しましょう。
多くの企業で、間接部門にかかる人件費が多いことを問題視する傾向にありますが、直接売上をあげていないからといって、間接部門を削減しすぎると業務の品質が著しく悪化してしまうリスクもあります。
間接部門の人員を削減する場合は、自社の業務に影響が出ないかを考慮しつつ、業務効率化施策も検討しながら人員調整をするようにしましょう。
2:販売店ごとの人員数、人件費は適正か
販売店や支店はそれぞれで売上があるため、店舗ごとに人員数や人件費効率を比較する方法もあります。比較する際には以下の指標を用います。
販売店、支店ごとの比較指標例
・一人あたり売上高
・一人あたり営業利益
・平均人件費
・管理職比率
・等級分布
・年齢分布 等
他店舗と比較して、一人あたりの売上高や営業利益が低い店舗は効率よく営業ができていない可能性があります。経費がかかりすぎているのか、人員数が多すぎるのか、その他の事情があるのか、原因を把握することが必要です。
また平均人件費が他店舗と比較して高い場合は、等級や年齢に偏りがないか、または管理職が多すぎないかを確認します。一般的に、管理職が管理できる部下の人数は5〜7人程度と言われていますが、業務内容や部下の状況によっても変わります。各販売店、支店の事情も考慮しながら人員数を調整しましょう。
まとめ
ツールを活用しながら、効率的で客観的な要員計画の作成を
本記事は、前後編で要員計画の概要と具体的な計画の立て方を紹介しました。
要員計画を実施する上で注意したいのは、人事部が経営陣と現場のどちらかの立場に偏りすぎないことです。どの企業でも、経営陣の視点では人件費を抑えたい、現場の目線では人を増やしたいという要望があがりやすいです。
双方の意見をくみ取りながら、客観的なシミュレーションやデータで落としどころを見つけるのが人事部の役割であり、その武器になるのが要員計画と言えます。
また、要員計画には正解がありません。各社で運用しながら、やり方を少しずつ改善していくのがよいでしょう。タレントマネジメントシステムのようなツールを活用し、負担なく必要な頻度で実施できるのが望ましいです。
自社にとってどんな要員計画が適切か、どんな観点が必要かを考える上で本記事が少しでも参考になれば幸いです。
- 経営戦略・経営管理
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WHI総研
政府系金融機関にて財務分析や融資相談、調査会社にて市場調査・企業誘致調査を行い、様々な企業を見てきた経験を活かし、Works Human Intelligenceにて経営者と従業員、双方の視点から人事課題を解決する研究活動を行っている。
井上 翔平(イノウエ ショウヘイ) 株式会社Works Human Intelligence / WHI総研
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