【後編】人的資本経営と財務的成果:企業価値を高める施策とは
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後編目次
人的資本経営を実践するためのポイント
3. 人的資本・モチベーションを強化する人事施策
人的資本経営を実施する際の注意点
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前編目次
・人的資本経営とは
・人的資本経営が注目される背景
・人的資本経営を実践するためのポイント3つ
1. 人的資本とは
2. 人的資本・モチベーションの強化と、企業の組織的成果の関係
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3. 人的資本・モチベーションを強化する人事施策
Jiangらは、前章のモデル図にもあったように、人事施策を以下の3つに大別しています。
これら3つの人事施策は、いずれも人的資本やモチベーションに対し、プラスの影響を与えることが明らかになっています。
スキル向上施策は特に人的資本への影響が大きく、モチベーション向上施策や従業員の参加機会を向上させる施策は、特にモチベーションに与える影響が大きいです。
人的資本経営を実施する際の注意点
最後となる本章では、人的資本経営を実施する際の注意点を2つ紹介します。
1:人事施策と企業戦略の整合性を保つ
人的資本経営においては、人事施策と企業の戦略・方針の整合性が求められます。
これまでの章で、人事施策が人的資本・モチベーションを強化し、組織的成果にまで結びつくことを説明しました。この出発点となる人事施策が有効に機能するには、人事施策が企業の戦略や方針と一致していることが重要です。
たとえばチームワークを重視しながら、人事評価を個人の業績のみで行い、その評価で個人のインセンティブ報酬を高めることは矛盾しています。チームワークを促したいのであれば、チームの成果に応じた評価や報酬も必要でしょう。
人事施策は企業の戦略を実現するための手段です。人的資本経営において人事に求められるのは、事業戦略の実現のために必要な人事施策を考え、実行していく力です。人事は、施策に取り組むにあたって、まず自社や部門の戦略を理解することからはじめなければなりません。
2:人事施策の達成度を測るKPIを設定する
そして、人事施策が企業目標の達成にどれだけ貢献したかを測る、KPIの設定が必要です。
この考え方は、2023年度より日本の上場企業に対して義務化された、有価証券報告書での人的資本開示にも表れています。企業は指定の項目を開示するだけではなく、自社の事業戦略に合った人事戦略を練り、その目標達成度を測れるKPIの設定が求められます。
組織戦略を意識した人事施策で、財務的成果の向上を
本記事では学術的な知見をベースに、人事施策が人的資本を強化し、最終的に組織の財務的成果に繋がることを前後編で解説しました。
人材版伊藤レポート2.0の発表以降、注目度の高まる人的資本経営。人的資本経営は、ただ人に投資をすればよいというものではありません。自社の事業戦略を理解し、最終的に自社が目指す組織的な成果を定め、それに沿った形で人事戦略を考える必要があります。
人事戦略においては、人材のどのような面を強化するのか、目的をはっきりとさせたうえで、KPIや開示項目を定めることが重要です。
企業の戦略や組織として抱える課題は様々であり、学術的な理論だけで人事施策や解決策が決まるわけではありません。しかし、それらを考える際の基礎・枠組みとして学術的な知見を活用することは有効だと考えます。
本記事が、人的資本経営を考えるうえで少しでも参考になれば幸いです。
- 経営戦略・経営管理
- モチベーション・組織活性化
- 人事考課・目標管理
- キャリア開発
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WHI総研
政府系金融機関にて財務分析や融資相談、調査会社にて市場調査・企業誘致調査を行い、様々な企業を見てきた経験を活かし、Works Human Intelligenceにて経営者と従業員、双方の視点から人事課題を解決する研究活動を行っている。
井上 翔平(イノウエ ショウヘイ) 株式会社Works Human Intelligence / WHI総研
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