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目標管理制度の棚卸しと競争力への転換

先日、目標管理制度に関するセミナーを開催させていただいた。
目標管理制度の教科書的なお話はなるべく省略し、日頃お客様とのコンサルティングの中でお悩みどころとして挙げられる内容を踏まえて紹介させていただいた。

多くの会社で目標管理制度の悩みとして以下の内容が挙げられる。

・個人の目標設定がうまくできない
・評価者による評価のバラつき
・評価の負荷が高く、形骸化しがち
・育成に活用できていない

これらの課題認識にも触れながら一部セミナーの内容をご紹介させていただきたい。

 

●そもそも目標管理制度とは?
ドラッカーによって紹介されたマネジメントツールであることは既知のとおりである。
遡るとF.W.テイラーの科学的管理法による「標準作業・時間」の話(差別的出来高払い制度)にまで遡るようである。

ただしこの「差別的出来高払い制度」については、「ノルマを達成すれば次にはより高いノルマが課せられる(ラチェット効果)」ことから、組織的な怠業をうむことになるという批判があった。(他に人間性を失うという観点での批判などもある)

話を幾分省略させていただき、目標を管理するとは、上記のような管理をいうのではなく、人間本来のモチベーションなどを勘案すると、「自己統制」として、自分でやるべきことを設定しそれを実現しようとすることである、という点がMBO(Management by objectives and self-control)なのであろう。
そうすれば前述の「組織的怠業」にも対応できるのではないかというものであったのではないだろうか。


●日本の目標管理制度の課題
シンプルに目標管理制度を表現すると、経営・事業目標をカスケードし、ちゃんと実現していくというPDCAサイクルである。
冒頭で目標管理制度についてよくあげられる「悩み」をあげているが、なぜ生じているのだろうか。
まず日本の企業の特徴として、職務が無限定で曖昧である、人事異動で仕事が変わりやすいという点が挙げられ、これは目標管理制度を複雑にしているいち要因となっているのではないだろうか。
また、評価し処遇に紐づけているため、その納得性や公平性の観点に人事部として考慮するため、「社員には統一的に適用」し、「なるべく定量的に評価が決まる」という仕組みにする点において、これもまた目標管理制度を複雑化している要因ではないだろうか。(複雑化に加え、負荷や育成に活用しにくいことにもつながる)


たびたび指摘される「目標管理制度はマネジメントツールであって、評価・処遇のための手法ではない」というのは、この弊害をうけてのものである。
だが現実的にはすでに目標管理制度を評価制度の一部として運用している企業が多く、まったく評価に取り入れない、という「切り替え」は難しいのではないだろうか。

 

●現行目標管理制度の棚卸し
繰り返しになるが、シンプルに表現すると、経営・事業目標をカスケードし、実現していくPDCAサイクル、ラチェット効果への対応がポイントである。
仕組みと運用の面からまずは以下の4点について現行制度について棚卸をしてみることをお勧めする。

①対象者
そもそも全員を対象としなければならないのかどうか?
目標がカスケードされたものだとすると、その目標が設定できない、しにくい対象者(職種など)にまで適用してしまっていないか?

 

②目標設定
KPI管理を用いて財務指標(売上やROEなど)を分解し、組織の目標としてそのまま設定をしている会社がある。
それは目標としては説明不足である。管理指標にはなりえるが、本来そこには上位者(マネジメント)からの意思や思いがいくつもある指標から「それ」を選択させているはずである。それがまさに組織や企業としての競争優位の源泉ともいえるものではないだろうか?
現在ある意味「惰性的」に設定してしまっている目標は、ラチェット効果を生んでしまうような目標設定となっていないか?またそのようなマネジメントをしていないか?
チェックが必要であろう。

 

③評価
評価制度・仕組みと整合性がとられているか?
①で目標管理制度の対象外とした対象者も評価は必要なので、どのような仕組みが必要となるのかについてもセットで整備が必要となる。

 

④育成
人材育成に活用できる仕組みとなっているか?
目標管理のサイクルが、人材の育成サイクルと整合性がとられているか、そのような運用がなされているかについても当然チェックが必要であり、大きく上司(管理職)のマネジメントに依存するものの、そこに過度に依存しすぎない仕組み、運用を検討することも一案である。


さて、貴社の状況はいかがだろうか。

現行の目標管理制度をより効果的に運用することで組織・会社の業績向上余地が高められるのであれば、早期に取り組むことで競争優位性を高められるのではないだろうか。

当期の目標管理はすでにはじまってしまっているかもしれないが、下期もしくは来年度からの見直し要否について取り組まれてはいかがだろうか。

 

  • 経営戦略・経営管理
  • モチベーション・組織活性化
  • 労務・賃金
  • 人事考課・目標管理
  • キャリア開発

事業会社人事の経験も踏まえ、表面的な仕組みではなく、機能する仕組みの導入、定着をご支援します。

大手総合電機メーカーの人事業務に従事した後、シンクタンク系コンサルティングファームを経て現職。
人事制度の設計・運用支援を専門とし、タレントマネジメント、チェンジマネジメント等人事領域全般におけるコンサルティングに従事している。

上野 晃(ウエノ アキラ) EYアドバイザリー株式会社 マネージャー

上野 晃
対応エリア 全国
所在地 千代田区

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