人事制度の設計、運用、メンテナンス時の悩み
昨年末の話ではあるが、「人事制度の設計、運用、メンテナンス」というテーマでセミナーを実施した。
「今後のあるべき人事制度」といった大上段に構えるのではなく、いろいろな企業の人事担当者と意見交換をさせていただく中でよく聞かれる、「だいたいの方向性は分かっているがこんなところが社内でネックになって制度改定後の展開がうまく進まない」といった悩みに対して、ヒントになれば、ということで紹介させていただいた。
この、「人事制度改定のだいたいの方向性」については、年功的な運用になりがちな「職能給」から、「仕事」を処遇の軸とした制度に移行していく必要がある、といった内容が挙げられる。
その背景としては、人員構成上の中高年齢層のボリュームへの対応や人件費の高止まり、人材が育たない、といった課題に対して、仕事基準へ移行することで対処していこう、という議論が多い。
(最近では働き方の多様性の議論とも関係性が深い)
さて、社内でネックになる議論の一つとしてセミナーで紹介させていただいた内容をここでも紹介させていただき、参考になれば幸いである。
仕事基準に移行するという際に、概ね「職務給」に移行するということを念頭に検討を進めることが多い。
ライン管理職(組織責任者)についてはポスト(課長や部長などの職務・職責)と等級を対応させる、ということで整理をつけやすい。
一方、管理職ポストに就いていない管理職相当の社員(多くの会社で中高年齢層が該当)の処遇をどうするか、という点が悩ましいところである。
ポストには就かない管理職相当の社員を、高度な専門職として管理職と同様に「職務給的」に処遇することになる
⇒ ここで、「管理職のポストと対応するような高度な専門性とは・・・?」さらには「高度な専門性は無いが、この人を等級として引き下げてしまうとチームとして回らなくなるが、どう仕事を定義すればよいか?」
といったとことで、人事部として頭を悩ませることとなる。
つまり、
「専門性を有する人材ばかりではなく管理職候補やポストオフ人材、ライン管理職を補佐するような仕事の可変性が高い人材」が混在しているのが現状であり、そこに管理職が職務給的に処遇するのだから、上記人材も同様に職務給的に処遇しないといけない、という「管理職層」に対する「一律的な仕事基準を適用しようとすること」に限界があるように見受けられる。
セミナーでは、ライン管理職以外の管理職については上記のように多様性が自社としてどのような状態にあるのかを改めて確認してみてはどうかということ、管理職層=職務給というルールがあるわけではないため、貴社にマッチしたカスタマイズという考えをもちましょう、ということをお話させていただいた。
企業文化的要素や業種なども踏まえて、ということにもなるが、このライン管理職以外の人材にも、企業・事業としての社内リソース(人材)を通じた競争優位性としてのエッセンスがあると考えている。
組織・企業としてどのように活かすか、上記の「貴社なりのカスタマイズ」をヒントに社内で議論を展開されてみてはいかがだろうか。
当コラムでは上記を取り上げてみたが、他にも様々テーマとすべき議論はあるであろうが、またどこかでご紹介させていただきたい。
- 経営戦略・経営管理
- モチベーション・組織活性化
- 労務・賃金
- 人事考課・目標管理
- キャリア開発
事業会社人事の経験も踏まえ、表面的な仕組みではなく、機能する仕組みの導入、定着をご支援します。
大手総合電機メーカーの人事業務に従事した後、シンクタンク系コンサルティングファームを経て現職。
人事制度の設計・運用支援を専門とし、タレントマネジメント、チェンジマネジメント等人事領域全般におけるコンサルティングに従事している。
上野 晃(ウエノ アキラ) EYアドバイザリー株式会社 マネージャー
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