IT人材育成に役立つITスキル標準(ITSS)

様々なクラウドサービスや自動化ツールが普及している今、社員のITスキルが企業の競争力に直結します。しかし、DX化やリスキリングが話題になっている現在において、要求されるITスキルを満たしている社員が充足している企業は少ないと言えるでしょう。そのため、企業には社員個々のスキルを管理し、育成することが要求されています。

独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)は、ビジネスで通用するIT人材育成のために必要なスキルを明確にし、体系的に整理した「ITスキル標準(ITSS)」を定義しています。ITスキル標準は、高い専門性を持ち、社会的にも評価される強い個人をプロフェッショナルとして育成すると同時に、スキルが下位レベルにある社員の成長を促し、市場で活躍する技術者を育成することを目標としています。

 

ITスキル標準(ITSS)とは

ITスキル標準(ITSS)は、IT人材を育成するうえでのスキル指標としての役割を持ちます。具体的にはITに関連する11の職種と35の専門分野を定義し、それぞれで7段階にレベル分けをしました。これらの枠組みを活用することで個々の人材のスキルを管理し、会社の競争力を高めていくような人材の育成につなげることができます。

 

ITスキル標準のレベル

ITスキル標準で定義される7段階のレベルのうち、レベル1から3までは、情報処理技術者試験の合格をもってレベルを判定します。下位レベルの人材には標準的な基礎能力を明示し、担当業務に捉われない幅広い知識の修得を促進します。

 

レベル1~3は試験でスキルレベルを判断し、レベル4は情報処理技術者試験の合格に加えて業務経験等で判定します。レベル5からは業務成果や実績をベースにレベルを判定します。上位レベルの人材には、高度なスキルを有していることはもちろん、後進にそのスキルを伝えて育成することを目指しています。

なお、ITスキル標準のレベル定義は以下のようになっています。

  • レベル1
    情報技術に携わる者に最低限必要な基礎知識を有する。スキル開発においては、自らのキャリアパス実現に向けて積極的なスキルの研鑽が求められる。
  • レベル2
    上位者の指導の下に、要求された作業を担当する。プロフェッショナルとなるために必要な基本的知識・技能を有する。スキル開発においては、自らのキャリアパス実現に向けて積極的なスキルの研鑽が求められる。
  • レベル3
    要求された作業を全て独力で遂行する。スキルの専門分野確立を目指し、プロフェッショナルとなるために必要な応用的知識・技能を有する。スキル開発においても自らのスキルの研鑽を継続することが求められる。
  • レベル4
    プロフェッショナルとしてスキルの専門分野が確立し、自らのスキルを活用することによって、独力で業務上の課題の発見と解決をリードするレベル。社内において、プロフェッショナルとして求められる経験の知識化とその応用(後進育成)に貢献しており、ハイレベルのプレーヤとして認められる。スキル開発においても自らのスキルの研鑽を継続することが求められる。
  • レベル5
    プロフェッショナルとしてスキルの専門分野が確立し、社内においてテクノロジやメソドロジ、ビジネスを創造し、リードするレベル。社内において、プロフェッショナルとして自他共に経験と実績を有しており、企業内のハイエンドプレーヤとして認められる。
  • レベル6
    プロフェッショナルとしてスキルの専門分野が確立し、社内外において、テクノロジやメソドロジ、ビジネスを創造し、リードするレベル。社内だけでなく市場においても、プロフェッショナルとして経験と実績を有しており、国内のハイエンドプレーヤとして認められる。
  • レベル7
    プロフェッショナルとしてスキルの専門分野が確立し、社内外において、テクノロジやメソドロジ、ビジネスを創造し、リードするレベル。市場全体から見ても、先進的なサービスの開拓や市場化をリードした経験と実績を有しており、世界で通用するプレーヤとして認められる。

 

ITスキル標準を活用した人材育成

IT人材育成をする際の選択肢として、研修があります。社内外で行うIT研修によって、現状持っているスキルをさらに向上させたり、別の職種や専門分野のスキル習得できます。

そこで提案したいことは、ITスキル標準を活用したキャリアパスを構築することです。ITスキル標準は、一般的に要求されるITスキルを体系的にまとめたものになっています。そのため、社員がどの段階にいるかを把握しやすくするとともに、今後必要な研修やスキル向上の方針を明確に定めることができます。これにより、企業は無駄な研修を避けつつ、業務に必要なスキルを効率よく習得できます。また同時に、社員の将来に対する見通しが良くなり、さらなるスキルアップ促進が狙えます。

IT人材育成に役立つ資料もご用意していますので、ぜひご活用ください。

  • 資格取得
  • 情報システム・IT関連

幅広い分野のIT知識をもつ講師

大手企業研修をはじめ、神奈川工科大学での講演など産学連携活動にも従事。さまざまな企業や業界団体と共同でIT人材を育成するIT分野のゼネラリスト。ECHONET2.0技術セミナーWGの委員。

有村 克己(アリムラカツミ) インターネット・アカデミー株式会社 講師

有村 克己
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所在地 新宿区

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