介護者のこころ~介護をしている社員に必要なこととは~
介護が始まると、身体的・精神的負担が重なっていきます。
そうして疲労が蓄積されていくと、メンタル不調にも繋がってしまいます。
メンタル不調に陥ると、休職や離職という問題も出てきます。
介護は誰にでも起こり得ることですが、一般的には年齢から考えても中高年世代、
すなわち、会社で働き盛りであったり、重要なポジションに就いている世代が介護
の問題を抱えることになります。
介護は、先が見えない、自分が育てられた経験が活かせない、マニュアルがない、
良くなっていくことがないなどから、介護者は常に不安や混乱と隣り合わせの状態
と言えます。
そして介護者はそのような精神的な状態の中で介護をしなければいけません。もち
ろん自分の仕事もあります。身体的・精神的負担が蓄積していくことは当然と言え
るでしょう。
そのため、介護の負担を減らすためには、兄弟姉妹や配偶者の協力を得たり、公的
支援サービスを活用することが大切になってくることは言うまでもありません。
しかし、家族の協力を得たり、公的支援サービスを活用して身体的負担が減っても、
必ずしも精神的負担が減るわけではありません。
不安感や混乱に関しては、日々介護をし、実際の対応や状況に慣れていく中で少し
ずつ薄れていったり、うまく付き合っていくことできるようになることが多く、
大抵の場合はそれに伴って精神的負担も軽減していきます。もちろん精神的負担が
なくなるわけではありません。
しかし、介護が始まると、要介護者である親をはじめ家族と関わる時間が必然的に
増えることで、これまではなんとなくやり過ごせてきた親や兄弟姉妹、夫婦間の問
題が顕在化されることが多くなります。
さらには、もっと過去にまで遡り、根深い家族関係の問題が沸き上がり、介護者の
精神的負担をより強めることがあります。
このような家族の問題、すなわち介護者自身が抱えている心理的な問題は、関係者
である介護の専門家にはなかなか話しづらいことです。そうかと言って、職場には
尚更相談しづらいでしょう。
元々介護の問題自体育児とは異なり、プライベートなこととして考える傾向にあり、
職場に相談する人はほとんどいないと言われています。特に会社で重要なポジション
にある人は、職場に迷惑がかかる、気を遣わせたくない、キャリアに響くなどの理
由からも職場に相談したがりません。
そのため、社員が介護で苦しい思いをしていることは、傍で見ていても当然わかり
ません。
しかし、ここで述べてきたように、介護者の精神的負担は、実際の介護対応での身
体的負担と同じかそれ以上に大きく複雑なものと言えます。介護をしている大切な
社員が誰にも相談できずに一人で悩み、苦しんでいることもあるはずです。重要な
役割を担っている社員がメンタル不調に陥り、休職や離職に至る前になんとかしな
くてはなりません。
働き方が変化し在宅勤務が増えてきた今、時間的には多少のゆとりができ、介護対
応での身体的負担は減るかもしれません。しかし、一方で、要介護者や家族と関わ
る時間が増え、介護者の精神的な負担が増えてしまうことも考えられます。
そしてさらに、2025年には団塊世代の全てが75歳になることを考えると、これから
益々介護の問題は避けては通れないものになります。
会社で重要な役割を担っている人財の介護離職を防ぐために、介護問題の対策につ
いてもさらに考えていく必要があるのではないでしょうか。
(シニアコラボレーター 永田有希子)
- 安全衛生・メンタルヘルス
- その他
公認心理師/臨床心理士/キャリアコンサルタント/CEAP(国際EAPコンサルタント)
【専門領域】産業精神保健、危機介入
医療機関や教育機関にカウンセラーとして従事。その後、EAP事業会社にて、人事・管理職・産業保健スタッフへのコンサルテーションや組織介入を中心に企業のメンタルヘルス支援に携わる。他、大学のハラスメント相談員、再就職支援会社のスーパーバイザー。
永田 有希子(ナガタ ユキコ) シニアコラボレータ―
対応エリア | 関東(茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県) |
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