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職務明確化の方法:貢献責任記述の決め事

「ジョブに基づく人事制度」に関する過去の記事を再掲載してきましたが、ここで改めてその根幹となるジョブ(職務・役割)の明確化の方法を具体的に説明していきたいと考えています。内容は2021年2月に弊社ホームページに掲載したものを基本に再編集し、6回にわたってここに再掲載します。今回はその第6回、最終回です。

職務明確化の方法(6)

貢献責任記述の決め事

「職務明確化の方法」最後の項目は「貢献責任記述の決め事」である。極めて初歩的な内容であるが、これが「貢献責任」の質を高める上で大変重要な要素となる。記述の基本ルールは下記の通りである:

 

(1)「~を~する」と言い切る

(2)一つの文には一つの貢献責任

(3)貢献責任の個数は5-9個

(4)中長期的に妥当する表現

 

当たり前のことの様であるが、30年間、様々な企業で実施した経験からはこれらが守られないことが多いのである。実際に自身の職務・役割の貢献責任であるという認識のもとに、明確に記したものとして残ることを考えると、「~を~する」と一つに絞り込んで書くことに抵抗を示す社員は多い。結果として、例えば開発担当の職務・役割であっても「〇〇商品を開発する」とは言い切れず、「開発を検討する」「開発を図る」「開発を管理する」等々の曖昧な表現にしたがる傾向がある。

 

単純でいて更に重要なのは(3)の貢献責任の数の制限である。これには両極端の反応がある。一つは「私の責任は売ることであるから、売り上げを拡大するだけで充分である」というもの。しかし特に管理職の場合「部下の育成」あるいは「売り方の質・効率」「顧客・外部との関係」等々はどうするのかということは考えていないケース。もう一つは逆に「私の仕事は様々なことをやっていて、とても9つに絞ることは出来ない」というもの。業務活動が自身の職務・役割だと思い込んでいるケースである。業務活動はより良く貢献責任を果たすために変えて行かなければならないという発想がない。たった4つの基本ルールであるが、これを守ることにより、組織運営上様々な効果が期待できるのである。その効果についての説明は別の機会に譲りたいと思う。

 

6回にわたり「職務明確化の方法」と題して、「ジョブに基づく人事制度」の全体像から、職務とは何か、そして、貢献責任という考え方とその抽出方法、すなわち、職務明確化の方法について述べてきた。「ジョブ型雇用」という言葉が様々なメディアを通じて話題に上っているが、肝心な「ジョブとは何か」という一番基本的なところが抜けていて議論がかみ合っていないように見える。ある特定の職務・役割だけを捉えて「ジョブ型雇用」を適用するというような議論は、人事の基本である社員処遇の公正・公平性をどうとらえるかという最重要課題を無視しているとしか思えない。

 

今回の技術的説明はこれで一段落とさせて頂くが、会社経営にとってこれを進めて行くことの意味は大きいと思っている。

最後に、6回にわたり、お読みいただいたことに厚く御礼申し上げます。

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組織/人事/戦略分野を中心に25年以上の豊富なコンサルティング経験

秋山 健一郎(アキヤマ ケンイチロウ) 株式会社みのり経営研究所 代表取締役

秋山 健一郎
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