職務明確化の方法:経営戦略と組織設計
「ジョブに基づく人事制度」に関する過去の記事を再掲載してきましたが、ここで改めてその根幹となるジョブ(職務・役割)の明確化の方法を具体的に説明していきたいと考えています。内容は2021年2月に弊社ホームページに掲載したものを基本に再編集し、6回にわたってここに再掲載します。今回はその第3回です。
職務明確化の方法(3)
経営戦略と組織設計
どのような会社にも、会社としての使命・目的がありそれを達成するための全社戦略がある。その戦略を効果的・効率的に達成するために組織とその構成単位としての職務がある。組織を設計するということは、それぞれの職務の貢献責任を定義することとも言える。一つひとつの職務は全社戦略を支えるという視点から、貢献責任は全社戦略の構成と同じ要素を盛り込んだものとすることを推奨している。会社として売上・利益はもちろんだが、顧客・外部ステークホルダーに対してやって欲しいこと、より良い製品・サービスを生み出すために、あるいは人財育成のためにやって欲しいこと等々、どのような職務であれそれらの領域で何らかの貢献を期待されている。それを明確化し文書化したものが「職務記述書」である。
以上の作業を進めるためにはいくつかの方法とルールがある。全社戦略に基づいたそれぞれの職務の貢献責任の領域を特定するやり方、組織の中のそれぞれの職務の貢献責任の配分の仕方、それを表現するときのルールなど。この基本さえ押さえておけば、それほど膨大な作業をすることなく、それぞれの職務が果たすべき貢献責任が明確となり、会社にとっても社員にとっても大きなメリットが生ずる。前々回お示しした「みのりコンセプト(1)総合的人的資源マネジメント」にあるように、業績評価制度・給与制度の設計が職務に基づいたものとなり、全社戦略に基づいた整合的な運用が可能となる。出来上がりの職務記述書も使い勝手の良いA4一枚ものから作成可能である。
機能的な組織運営を目的とする組織においては、「職務・役割」とは社員処遇の基準となるものである。短期的なアルバイトに任せる仕事を、箇条書きでタスクの羅列で済ませるようなものとは根本的に異なる。「職務記述書で仕事の内容を書くと、それ以外の仕事をやらなくなる」「職務内容を記述しようとすると膨大な作業が必要で、人事の重要な仕事が出来なくなる」という声を聞くことがある。これは「職務」に対する認識が欠落しているのと、人事の基本的機能を理解していないところから来ている。
まず「職務・役割」とは何か?「みのりコンセプト(1)」の中心に位置する「職務・役割」とは、「全社戦略達成のために各社員に期待される貢献の集合である」とみのりでは定義している。カギとなる言葉は「全社戦略」と「貢献」である。大きな組織であれ、小さな組織であれ、その中の個々の「職務・役割」はその組織が求める「企業理念」を実現するための「全社戦略」に基づいて定義・規定されている。
職務・役割の定義がない、あるいは曖昧というのは、戦略がない、あるいは曖昧だということである。社員は組織に貢献することを求められているが、その貢献は職務・役割を通して発揮されるものである。これはヒトに基づく社員処遇制度を採用していても同じことである。多くの日本企業で組織あるいは職務・役割を管掌するのが人事以外の部署であるのは、社員の貢献と処遇を切り離しているからであろう。しかし社員の貢献を処遇に反映させようという大きな流れの中で、人事は職務・役割を無視し続けられない状況となっている。「職務内容を記述するのは膨大な作業で、他の重要な仕事ができなくなる」と言って職務・役割の明確化を避けていては、人事の仕事はできないのである。
【みのりコンセプト(1)総合的人的資源マネジメント】
- 経営戦略・経営管理
- モチベーション・組織活性化
- 労務・賃金
- 人事考課・目標管理
- マネジメント
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組織/人事/戦略分野を中心に25年以上の豊富なコンサルティング経験
秋山 健一郎(アキヤマ ケンイチロウ) 株式会社みのり経営研究所 代表取締役
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