中小企業経営者のための人事戦略入門-役割の測定は組織の設計
本コラムは【第1回】で述べたように、秋山がみのり経営研究所ホームページに発表した記事を転載するものです。
「中小企業の経営者のための人事戦略入門」
【第11回】役割の測定(3)-役割の測定は組織の設計-
ポイントレーティング手法の具体例として、現在みのりが使用している測定手法に関して説明します。まず重要度測定に当たってのいくつかの原則があります。前回説明したとおり役割の測定は組織の分析そして組織設計そのものに通じて行きます。
役割の重要度測定は、ある特定の組織に於ける理念・戦略・組織設計思想等に基づき、その相対的な重要度を測定することです。役割に絶対的な重要度がある訳ではありません。したがって同じ役割でも会社の理念・戦略等が異なればその重要度は異なります。重要なのはその測定が、明確に表現され記録された「貢献責任」に基づいてなされること、さらにその役割に就いている社員の年齢・性別・資格・経歴とは関係なく測定されることです。
貢献責任で表現される役割が存在する前提は、機能体としての組織であり、理念・戦略に基づき組織目標達成の為に個々の役割が設計されている事です。共同体的な組織、あるいは 人の処遇のための組織においては、貢献責任の特定はなされておらず、従って測定は不可能です。役割の測定が組織の分析となりうるのは、機能体としての組織の有効性という視点があるからです。
役割測定の作業は体系的な判断を下すためのプロセスです。測定のためには当該組織用に設計された点数表を使用します。この点数表に基づき配点する根拠は、組織における「貢献責任」で記述された内容をベースとします。書き表しきれていない役割内容は、経営層の合意により認定され、その認定内容は記録として残される事が求められます。
この点数表は下記4つの軸により構成されています。これらの軸は、貢献責任を捉える4つの視点を基本としています。測定のための点数表は内部的・将来的収益力要素である組織力・ビジネスプロセスと外部的・現在の収益力要素である顧客・財務業績の二枚の点数表に分解されて使用されます。
それぞれの測定のための軸、並びに対応する貢献責任の領域は下記の通りです。
一枚目:
(1) 学習と成長の視点から見た組織力への影響の大きさ
(人材育成、人材活性化への関与の度合いなど)
(2) ビジネスプロセスに対する影響の大きさ
(プラニング、プロセス改革、生産性改善等への関与の度合い)
二枚目:
(3) 顧客に対する影響の大きさ
(顧客の開拓・関係構築、顧客以外の外部関係者との関係構築・維持など)
(4) 財務業績に対する影響の大きさ
(売上、利益、コストなど財務指標への関与の度合い)
様々な測定手法がある中でこの手法の特徴は、役割の内容即ち貢献責任と直結している点です。それぞれの役割の組織における位置づけが貢献責任と一体化して理解されうる点です。どのような手法でも100%機械的・科学的な測定は不可能ですが、貢献責任の視点から重要度に至る論理性が整合的且つ一貫性を持って議論可能となるところがこの手法の一番の利点です。
整合性・一貫性を保つための技術的特徴としては測定結果が数値化されるため役割の大きさの具体的イメージ把握・他の役割との比較が可能となること。また数値は等比級数的配列であり、役割の差の相対的把握が可能となることなどがあげられます。
また測定結果の客観性を保つために、貢献責任の内容と測定基準との連動が明確化され、測定の判断基準としての役割の内容が貢献責任として記録され保管されます。これにより特に重要度の高い役割がその基準としての貢献責任が大きく、全社業績に与える影響は大きい事が確認されます。従って各期における設定目標は高く、その結果は業績評価に的確に反映される事になります。
目標管理制度でよく見かける「難易度」などと言う概念を評価のときにだけ場当たり的に使用するのとは大きく異なる仕組みと言えます。さらに測定結果が総合的に検証できる仕組みも盛り込まれており、恣意性が極力排除される仕組みとなっています。
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秋山 健一郎(アキヤマ ケンイチロウ) 株式会社みのり経営研究所 代表取締役
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