中小企業経営者のための人事戦略入門-役割測定:人ではなく役割
本コラムは【第1回】で述べたように、秋山がみのり経営研究所ホームページに発表した記事を転載するものです。
「中小企業の経営者のための人事戦略入門」
【第10回】役割の測定(2) -人ではなく役割の差-
ポイントレーティング測定法
ポイントレーティング測定法も様々なやり方が存在します。特にアメリカ系の人事コンサルティング会社はそれぞれ各社独自の手法を開発しています。一番有名なのはヘイ・コンサルティング・グループ(現Korn Ferry)のガイドチャートによる測定手法です。私自身ヘイで8年近くこの手法を使ってきました。アメリカはもとよりヨーロッパ諸国でも、組織内におけるそれぞれの役割の重要度・重み付けを行なう上での合理的な手法として評価されています。
しかしその仕組みの複雑さと、結果としての測定作業の煩雑さが大きな問題点として指摘されてきました。特に組織設計を柔軟に行ないたいという企業の場合は、組織変更をするたびに測定作業のやり直しが大きな負担となっていました。機械化による簡便化など様々な試みが歴史的に行なわれてきましたが、手法そのものの修正は行なわれませんでした。最近はヘイでも職務・役割の重要度より属人的なコンピテンシー(行動・能力)のほうに重心が移りつつあるようです。
人事処遇制度の根幹としての役割重要度の概念はどこに行ってしまうのでしょうか?人口構成の高齢化や企業の国際化と共に年齢や社員の属人的な要素によらない人事処遇制度への期待感はますます強まってきています。みのり経営研究所(みのり)ではそのニーズに応えるべく、様々な手法の比較検討、実際の組織運営の現場での実験を積み重ね、ポイントレーティングの合理性を保持しつつ、複雑さを排除した簡便法を開発しました。既にその有効性は実証されています。
ポイントレーティング手法が複雑化する原因は、測定要素の中に属人的要素が入り込む隙間が出来てしまうところにあります。組織設計を行なう上で、属人的な要素を全く排除する事は困難なことです。しかし組織設計に携わった経験のある方はご理解頂けると思いますが、一度属人的なものを認めて組織設計を始めると、企業戦略に基づいた合理的な組織を設計する事は不可能となります。極論すれば、優秀な人間がいれば組織の詳細設計など不要といった議論がまかり通ってしまうのです。適材適所の原点は、組織設計すなわち役割・貢献責任の明確な定義づけによるのです。
測定手法はこの合理的な組織設計に対応したものであることが必要条件です。これは丁度役割を貢献責任に基づき定義していく作業と呼応しています。みのりの手法はその貢献責任に応じて、重要度が測定できる仕組みになっています。これは逆に言うと、重要度が測定できるように、貢献責任の定義づけに明確さを求めるとも言えます。すなわちこの二つ(貢献責任特定と役割測定)のプロセスを通じ企業理念に基づいた組織設計が完成されるとも言えます。
貢献責任領域にはバランススコアーカードの考え方に則り、[1]財務業績、[2]外部・顧客との関係、[3]社内ビジネスプロセス、[4]学習と成長の4領域があります。みのりの測定手法はこれら貢献責任領域における一つ一つの貢献責任の重要度を測定するものとして開発されました。
従来の手法は貢献責任以外の知識・経験・スキルなど属人的要素も測定対象としていたため、明記された貢献責任だけでは議論が集約できない傾向がありました。納得感を出すためにそれらの要素を記述しようとすると、職務記述書が複雑化し、書き込む内容が多様化し、この作成のための作業量が膨大化するという悪循環を招いていたと言えます。またこのような手法は使いこなすために相当な習熟度が要求され、特殊なスキルを有する専門家として育成されることが求められていました。二重の意味で大きな負担を会社に強いるものであったと言えます。
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秋山 健一郎(アキヤマ ケンイチロウ) 株式会社みのり経営研究所 代表取締役
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