長い経験が人事について教えてくれること
みのりの北米のパートナー、David Creelmanは毎月みのりのホームページに、『David Creelman from Canada ~Secrets of Human-Capital Management~』と題して、人事に関する北米の最新事情を寄稿してくれています。
昨年12月の記事は、「What long experience teaches us about HR」(長い経験が人事について教えてくれること)でした。人事の仕事を考えるに当たって大変示唆に富んだ内容で、日本の人事の仕事に携わる人たちにも参考になる内容です。日本語化いたしましたので、是非ご一読ください。
「長い経験が人事について教えてくれること」
(原文タイトル:What long experience teaches us about HR、『David Creelman from Canada ~Secrets of Human-Capital Management~』より)
人事(HR)は、長い経験が大きな違いをもたらす分野です。これにはいくつかの理由があります。まず、トピック自体が微妙であり、人間は複雑なものですから。もう一つの理由は、ある取り組みの効果が明らかになるのには長い年月がかかることです。一年目には良さそうに見えるものが、数年後には誤りのように見えることもあります。最後に、コンサルタントや人事分野のテクノロジーの世界は製品を販売することに焦点を当てており、営業プロフェッショナルと同様に、彼らは製品の価値を過度に宣伝する傾向があります。
私が学んだいくつかの教訓を共有します。
- HRにおいて誤解されていること
- HR でうまくいくこと
- HRを学ぶ方法
- HRをどう考えるか
HRにおいて誤解されていること
若手の人事プロフェッショナルを誤らせる2つの一般的な現象があります:新しいアイデアの誘惑と魔法の答えの誘惑です。
人事の中でほとんど新しいものはありません。アイデアが新しいとされているからといって興奮するなら、おそらく間違った道に進んでいる可能性があります。たとえば、より「民主的な」管理のアイデアは素晴らしい新しいアイデアのように思えるかもしれませんが、それは実は前世紀中ごろの「参加型」管理の概念の再構築に過ぎません。もしあなたがそのリーダーシップアプローチに興味があるなら、過去70年から80年間でそのアイデアがどのように進化してきたか、そしてそれが良いアイデアであれば、なぜ普遍的に採用されなかったのかを調査すべきです。過去の参加型管理に立ちはだかった障壁を理解していないと、同じ障壁にぶつかることになるでしょう。
もう一つの誤解を招く考え方は、魔法の答えが私たちの人事の問題を解決するというものです。人事で行うほとんどのことは微妙で難しいトレードオフが伴います。魔法の答えや特効薬は、新聞や雑誌で聞くような良い話を作りますが、経験豊富な人事プロフェッショナルは、これらが約束された通りの成果を生むことは稀であると知っています。
最も興奮させられ、広く知られる人事のアイデアが通常は行き詰まりにつながるのは残念なことですが、これは学ぶべき教訓です。
HRでうまくいくこと
人事の取り組みに対して皮肉な見方をすることがありますが、長い経験が効果を発揮する例があります。たとえば、組織内の人々やプロセスを深く知っていることです。タレントレビューを導入する取り組みは、タレントレビュー委員会のメンバーが評価対象の個人をよく知っている場合には効果的となるでしょう。知っていること自体が審査のプロセスよりも意味を持つのです。
また、ステークホルダーを巻き込み、パイロットプログラムを実施し、テストを行うことが重要であることも知っています。これは言い換えれば、急いで進むのではなく、ゆっくりと慎重かつ着実な進展を優先することが、持続的な成功につながることを理解しているということです。
良いリーダーが違いを生むことも知っていますので、人事がリーダーの選定と育成に投資することは実りあるものとなります。その成果が現れるまでには時間がかかるかもしれませんので、忍耐は必須です。
HRを学ぶ方法
良い人事管理に関する多くの有益な見識は、「理解されようとする前に、理解しようとせよ」とか、チェンジマネジメントでの「私にとって何の意味があるのかという質問に備えよ」といったシンプルなヒントに帰着します。読書から多くを学べますが、人事の人たちだけでなく、一線の従業員や他のマネージャー達などの経験豊富な人たちと話すことで最良の見識が得られます。経験豊富な人たちは全体の物語を共有してくれます。実際に何が起こったのか、何がうまくいかなかったのか、何にがっかりさせられたか、そして彼らにとってどのアドバイスが効果的だったかを教えてくれるでしょう。
HRをどう考えるか
ヘンリー・ミンツバーグは、マネジメントは職人技であると言っています。人事のプロは熟練の大工のような存在だと考える方が、賢いエンジニアのような存在だと考えるよりも良いメンタルモデルかもしれません。
そして奇妙に聞こえるかもしれませんが、最高の人事のプロは人事的考え方をしていません。彼らはある状況に直面した時、通常の人事の優先事項から考えるのではなく、まず何が起きているのかを理解し、ビジネスニーズの観点から対応しようとするのです。
優れた人事プロになることは、優れた職人になることと同様です。それには長年にわたる継続的な努力と注意深い観察が必要です。優れた人事のプロになることは可能ですが、近道は無いのです。
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秋山 健一郎(アキヤマ ケンイチロウ) 株式会社みのり経営研究所 代表取締役
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