新聞記者が「本音」を聞き出す方法と「心理的安全性」
「毎日3人と名刺交換をするように」
20年以上前、新聞記者になった時、上司に言われた。なかなか高いハードルだったが、500枚収納の名刺フォルダーは10冊近くになった。商売柄、大変失礼だが、話をする相手が信用できるか意識してきた。嘘以外にも、建前や誇張は私も含めて誰にでも話の中にはあるものだ。ただ、そのまま聞き流して記事にしても真実味があるとは言えない。
取材の際、聞き方を変えたりして同じ質問を繰り返すことがある。こちらはメモをしているので、答えが変わるとすぐに分かる。嘘を言っているのか、データを過大または過小に見せたいのか、顔には出さず意図を探る。
新聞社の新規事業として研修事業に携わるようになり、「心理的安全性」について詳しく知った。記者が取材相手から本音を引き出すのに必要な状態と同じだと思った。取材相手だって記者を警戒している。こちらも相手を疑ってかかっている。信頼関係はすぐに築けるものではない。
「心理的安全性」については著書や研究が多いので、数千人から本音を引き出そうとした経験を頼りに言うと、とにかく相手に話をしてもらうことが重要だと思う。当たり前のように聞こえるが、二つの面がある。
ネタの売り込みなど自分から話をしたい人や、自らの言葉で話せる人などには聞き役に徹し、ポイントポイントで質問をしたり、話が矛盾する部分を聞き直したりして関係性を強化していく。
一方、不祥事の記者会見など、相手ができるだけ話をしたくない、隠したい時には、こちらがしゃべり続けるしかない。答えられる、あるいは、答えたい質問になるように聞き続ける。
研修にも二つのパターンがある。前に立った講師が話を続けるスタイルと、受講者の話が中心に進むスタイルだ。研修テーマや状況などで使い分けるものだと思うが、日帰り登山やハイキングなどに取り組む野外教育では、米国発の「SPECモデル」を重視している。SPECは「受講者自ら(Student-Centered)」が「問題解決の過程(Problem-Based)」で「体験を分析(Experiential)」し、「他のメンバーと協働(Collaborative)」するの頭文字。
講師は問題の解決方法を教えることはせず、受講者たちが話し合い、答えを見つけ、実行する。
SPECモデルの研修は、受講者の「心理的安全性」が担保されていることが前提条件。これを作り出すのが仕事なのは、新聞記者と同じだと感じている。
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経済記者の企業取材の視点でニーズを聞き、オーダーメイドで研修を設計します。
経済キャップとして企業取材。日本電産の永守重信会長をはじめミネベアミツミ、セイコーエプソンなど長野県に拠点がある企業トップのインタビュー多数。テレビ信州(日本テレビ系)記者から転職。長野県政キャップ、社会キャップ、総合面デスクなどを経て現職
村澤圭一(ムラサワケイイチ) 信濃毎日新聞社ビジネス開発室次長 「信州アウトドア研修」プロジェクトリーダー
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所在地 | 長野市 |
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