卓越した成果を残す人が実践する1on1面談のコツ
「初めてのお給料は、両親に感謝を伝えるためのプレゼントに使いました」テレビのインタビューに答える新人さんの初々しい表情に、ほんわかする気持ちをもらいました。同時に、親への感謝に思いをめぐらせることもなく、自分の趣味に使い切ってしまった若き日の自分を振り返り、アイタタタ…胸が痛くもあります。「思っているだけでは気持ちは伝わらない。行動を起こしてちょうだい」過去の自分からメッセージを受け取ったような気がして母に電話をしました。「いつもありがとう」
過去の行動を振り返ることで、いま行うべきことがみえてくることがあります。昨日より今日、今日より明日の自分を心地よく育む。自分の成長を人の手にゆだねるのではなく、自らの手で行うための先生は過去の自分かもしれません。そこで、今回のコラムでは、仕事を通して自らを成長させる「振り返りの習慣」について考えてみたいと思います。
マネジメントの父、P.F.ドラッカーは、コンサルタントとして、企業、政府機関、大学、オペラハウス、オーケストラ、美術館など、いろいろな組織の人と交流がありました。彼らに「成果をあげるにはどうしたらよいか」と問いかけると、必ず素晴らしい話が聞けたそうです。その結果わかったのは「いくつか簡単なことを実行する」ということでした。そのひとつが「振り返りの習慣」です。
90歳を過ぎてなお発信を続け、多くの人の心を動かす著作を生み出したドラッカー教授こそ、生涯にわたって「振り返り」を実践した方です。その原点を、二〇代のころドイツの新聞社に勤めていた若き日のドラッカー青年の経験から学んでみたいと思います。
当時、記者の平均年齢は二二歳前後という恐ろしい若さだった。その中で私は、間もなく三人の論説委員のひとりに抜擢された。それほど優秀だったわけではない。記者として一流だったことは一度もない。実は、一九三〇年ころの当時、私の地位に就くべき人たち、年でいえば三五歳前後の人たちが、ヨーロッパ全体に払底していたからだった。『プロフェッショナルの条件』102ページ
第一次世界大戦で大勢の働き盛りの人材を失い、重要な責任ある地位に若手を充てなければならなかった様子が伝わってくる記述です。そのような状況下でドラッカー青年を鍛えぬいてくれたのは、ヨーロッパでも屈指のジャーナリストだった同社の編集長です。
編集長が行ったことは、振り返りのために部下一人ひとりと差し向かいで話し合うことでした。
・毎週末の話し合いで一週間の仕事ぶりを振り返る
・年二回(新年と六月)の話し合いで半年間の仕事ぶりを振り返る
・話し合いは「優れた仕事は何か」「一生懸命やった仕事は何か」「一生懸命やらなかった仕事は何か」の順に進められ、最後に、お粗末な仕事や失敗した仕事が取り上げられた
・半年ごとの話し合いの締めくくりは「集中すべきことは何か」「改善すべきことは何か」「勉強すべきことは何か」について問われることだった
若き日のドラッカーにとって、編集長との話し合いは、仕事に対するやりがいを生む大きな楽しみとなっていたようです。
自らの成長を知るために仕事ぶりを客観的に評価する視点を持つことは大切なことですが、簡単なことではありません。シンプルで簡単なことほど実行するのが難しいのはなぜでしょう。習慣として身につけるには繰り返しのトレーニングが欠かせないからです。編集長の支援を受けながら、若いうちに振り返りの習慣を体験できたことは、ドラッカー青年にとって、得がたい経験だったのではないでしょうか。
行うべきことや役割の理解について、上司と部下の間にある認識のずれを修復不可能なほど大きなものとしないためにも「振り返りを目的とした対話の時間をもつこと」を、ないがしろにしないよう気をつけたいものです。そして、ドラッカー青年を育てた編集長のように「まずは優れた仕事から取り上げる」という姿勢も、心にとめておきたい教訓です。
のちに渡米したドラッカー青年は、編集長から学んだ「振り返ることの大切さ」を思い出し、イエズス会の修道士やカルヴァン派の牧師たちが行っていた「期待と結果を比較する」手法も取り入れ、自分自身の成長を促すための「フィードバック分析」として、生涯にわたり実践しました。
何かをすることに決めたならば、何を期待するかを直ちに書きとめておかなければならない。そして九カ月後、一年後に、その期待と実際の結果を照合しなければならない。私自身は、これを五〇年続けている。しかも、そのたびに驚かされている。これを行うならば、誰もが同じように驚かされるにちがいない。『明日を支配するもの』194ページ
「初めてのお給料をもらったら、親に感謝の気持ちを伝えてプレゼントを贈る」昔の私がこのように「期待(目標)」を事前に書きとめておくことができていたならば、お給料をもらったその日に行動を起こすことができていたかもしれません。ウン十年経ったいま、胸を痛めることもなかったでしょう。仕事においても同様ではないでしょうか。
期待(目標)を書くには、仕事の目的を考えざるを得ません。「何のために何を行うのか」「どのような結果を期待するのか」という問いを投げかけ、内なる自分と対話することは、よりよい仕事を行うための方向性を定めることに繋がります。
自らを生き生きとさせ、成長を続けている人は、自らの仕事ぶりの評価を、仕事そのものの中に組み込んでいる。『プロフェッショナルの条件』109ページ
やみくもに動くのではなく、意志をもって進む。やりっぱなしにせず、検証を行う。心穏やかに成長を続けるためにも、振り返りの習慣を活用できる人でありたいものです。
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現代の組織運営のコンセプトの8割を体系化し「マネジメントの父」と言われるピーター・F・ドラッカー教授。Well-Being経営に関心が集まりあらゆるものが多様化する今こそマネジメントの原理原則が活きると確信しサポートに役立ててまいります。
瀬川 智美子(セガワ トミコ) 研修コーディネーター(実践するマネジメント読書会(R)認定ファシリテーター)
対応エリア | 全国 |
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所在地 | 横浜市中区 |
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