優秀なプレーヤーがマネジャー昇格後力を発揮できないのはなぜ?
プレーヤーとして優秀な成績をあげた人がマネジメントをし始めて以降、人がつぶれていく、離職者が後を絶たない、あるいは、マネジャー自身がメンタルヘルス疾患の問題を抱えてしまう。このような問題に悩む組織は多く存在します。
貴社ではどのように解消に向けたアプローチをとっているでしょうか。
そこで今回は、「輝きが連鎖する組織づくり~OJTリーダー・新任マネジャーへのアプローチ」と題して11月29日に弊社で行った体験プログラム「新任マネジャーへのアプローチ編」のレポートを元にこうした問題が起こる見逃しがちな要因と、これからのマネジャー育成で取り組むべき要点について紹介します。
*Contents*
1.優秀なプレーヤーがなぜ昇格後に力を発揮できないのか?
2.優秀なプレーヤーだからこそ陥りやすい課題
3.優秀なプレーヤーを優秀なマネジャーに育てるには?
4.マネジメント環境の劇的変化―雇用側と働き手の価値観の大変容の時代
5.マネジメント教育の最初の一手
6.講師紹介
1.優秀なプレーヤーがなぜ昇格後に力を発揮できないのか?
今回のセミナーを担当した廣瀬講師(プロフィールは文末にてご紹介)は、日本の企業は新入社員研修や若手に対する教育機会と比べて、管理職や中堅のかたに向けた研修が少ない傾向にあると言います。だからこそ、マネジメント昇格前からのマネジャー育成の必要性を説いています。なぜなら、プレーヤーとして大活躍していた人がマネジャーになったとたんにパフォーマンスが下がったり、周りから高い評価を受けていた人が昇進後、評価が下がったりという現状を間近で見てきたからです。なぜこのようなことは起きるのでしょうか。
2.優秀なプレーヤーだからこそ陥りやすい課題
マネジャーになったばかりの人は少なからずプレッシャーを感じている、と廣瀬講師は言います。そして人は、不安や恐れが多くなると得意なやり方で乗り切ろうとするワナに陥りがちになり、これがマネジメントが機能しにくくなるきっかけとなります。
では、得意なやり方で乗り切ろうとするワナとはいったいどのようなことでしょうか。
廣瀬講師はマネジメントで起こりがちな2つのシーンをもとに紹介しました。
昇進のきっかけとなった「成果にこだわり自分の考えを主張できる資質」を出し過ぎたがゆえに、部下から「冷徹、怖い」という印象を持たれてしまったAさん。
「ムードメーカーで周囲を巻き込み情熱的に働きかける資質」を評価され昇進したBさんが「言うことがコロコロ変わってついていけない」と部下の悩みのタネになってしまう。
Aさん、Bさんいずれも結果的に「関わりにくい」「あの人とはやっていけない」と人が離れ、マネジメントが機能しなくなる事態に至っています。
このようなマネジメント環境では、本人も周りも輝きを放ちにくく、成果があがりにくいことは容易に想像がつくことでしょう。しかし、自分の強みが評価され昇格したマネジャー職も、強みを評価し昇格させた組織ともに、得意なやり方で成果を上げようとすることが問題となっていることにほとんどの場合気づいていません。廣瀬講師はこれを「強みの使い過ぎによる弊害」と言います。
3.優秀なプレーヤーを優秀なマネジャーに育てるには?
ではこのワナに陥らないために必要なことは一体どのようなことでしょうか?
Aさんにとっては「相手の気持ちを汲みながら話をきく姿勢を身につけること」かもしれません。Bさんにとっては「まずは目的や目標を設定すること。その上で部下にフィードバックする力」かもしれません。
とはいえ、長い間使い続けてきた得意なやり方を改革し、マネジメントに必要な能力を自分自身で見つけていくプロセスは簡単なことではありません。
そこでプレーヤーからマネジャーへの成長促進に向けて
- マネジメントに必要な能力の明示
- 自己理解(プレーヤーとしての自分、マネジメントに求められる自分とのギャップの理解)
- 体系立てたマネジメントに必要な知識とスキルトレーニング
上記3つを一定期間かけて効果的にアプローチしていくことが必要となります。
4.マネジメント環境の劇的変化―価値観の大変容の時代
ではなぜここまでの手厚いマネジメント教育が必要になってきたのでしょうか。
その理解を助けるうえで押さえておく必要があるのが、時代の流れと価値観の変容を「人に対する関心」と「業務に関する関心」という視点で見ることだとし、廣瀬講師は次のように紹介しています。
■終身雇用が一般的だった高度成長期
1970年代から1980年代頃の日本には、稲森和夫氏の「大家族主義」にも代表されるような人間関係を非常に大切にする環境がありました。「ひとつの会社に入ったからには一生かけて務めあげるぞ」という個人と「長い時間をかけてあなたの成長をサポートします」という企業。大量生産~作れば売れる、という社会的な背景もあり、「人に対する関心」と「業務に対する関心」の双方に勢いがあった時代と言いかえることができるかもしれません。
■バブル経済崩壊
いわゆる「バブルがはじけた」と言われる1990年代を境に企業は徐々に体力を失っていきました。仕事は個別化され、短期的に結果を出すことが求められ、成果主義という言葉が使われるようになりました。業績をあげることが重視されました。人員削減や人材の流出など人に関するテーマが社会的な課題となり始めた頃です。人への関心よりも業務への関心が高まり「人のことは気にしていられない」となった風潮に拍車をかけた要因のひとつにはこの時代に起きたリーマンショックの影響もあったのかもしれません。
■予測不可能な時代
「VUCA時代」と言われるようになった2010年代、そして、2011年に発生した東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)を機に、風向きは変わってきたのではないでしょうか。「想定外」「未曽有」と言われる事態があちらこちらで起きています。メンタルヘルス、ダイバーシティ、働き方改革などの言葉が注目を集めるようになったのもこの辺りからです。予測不可能なご時世が人々の生活スタイルや心に影響を与える現代は「人に対する関心」すなわち「人を大事にしなきゃいけないですよね」という風潮がより強くなっているのではないでしょうか。この重要性が問われるようになったのは過去からの反動という面もあるかもしれません。これからの時代を生きる管理職(マネジャー)は、業績をあげることは当然としながら、よりよい人間関係を構築していくための能力を高めていくことも不可欠といえるでしょう。
5.マネジメント教育の最初の一手
マネジメント研修では「一人ひとりの強みを組織の成果に確実に繋げる」というマネジメントの全体像を示した上で、まずはマネジャーとして自身のありたい姿と理想とするチーム像を具体化する「リーダーステートメントづくり」からスタートします。ここでは、「伝わるビジョン伝わらないビジョン」などのワークショップに取り組んでいただきます。これによって組織のミッションと自身の役割を紐づける力が養われます。
まずはこれらをメンバーへ伝達することを想定し、その伝達の場面や方法などを、ワークや実習を元にトレーニングします。このトレーニングの過程で研修参加者同士および講師からのフィードバックにより、自身の強みが効果的に発揮されているか、あるいは、強みの使い過ぎに感じられるか、しっかり確認していきます。
こうした職場ではフィードバックされにくい点をしっかりトレーニングを通じ理解し習練していくことで、自身の強みを効果的にコントロールできるようになります。これが、マネジメントをしていく上でのしっかりとした土台となるため、欠かせない一手となります。
6.講師紹介
今回のプログラム体験セミナー担当の廣瀬公尚(ひろせ・まさなお)講師は、大学院時代、自身の研究の傍ら、大学の先輩である京セラ創業者 稲森和夫氏の経営哲学を学ぶ稲盛アカデミーにて、軽い気持ちで質問したチーム活動上の悩みを、自身の強みの使い過ぎがチーム活動の足かせになっていることを指摘され、愕然とした、といいます。
以降、稲盛氏からリーダーシップ、経営哲学、生き方について学ばれてきたそうです。
現在は、人材育成トレーナー、組織開発コンサルタントとして活躍。研修のフォローアップを目的とした年間300回以上に及ぶ個人面談も各企業様より高い評価をいただいている実践に強い講師です。
成果をあげつつ、人に対して関心を向けることの大切さを真に理解し、自己開発に取り組むことができる管理職(マネジャー)の育成に、いまこそ着手してみませんか。輝きが連鎖する組織づくりのために。
なお、同日、先輩社員が新入社員、中途採用社員、異動者に業務するためのスタンスとスキルを身に付けるための「OJTリーダー」についてもプログラムをご案内しました。同プログラムについては、後藤による別コラムをご覧ください。
「輝く組織づくり」に向け皆様のお役に立てば幸いです。
- モチベーション・組織活性化
- キャリア開発
- マネジメント
- チームビルディング
- コミュニケーション
一社一社、お一人おひとりにしかない未来の物語を人材育成を通じてカタチにできるようご一緒に取り組ませていただきます
現代の組織運営のコンセプトの8割を体系化し「マネジメントの父」と言われるピーター・F・ドラッカー教授。Well-Being経営に関心が集まりあらゆるものが多様化する今こそマネジメントの原理原則が活きると確信しサポートに役立ててまいります。
瀬川 智美子(セガワ トミコ) 研修コーディネーター(実践するマネジメント読書会(R)認定ファシリテーター)
対応エリア | 全国 |
---|---|
所在地 | 横浜市中区 |
このプロフェッショナルのコラム(テーマ)
このプロフェッショナルの関連情報
- 無料
- WEBセミナー(オンライン)
- 経営戦略・経営管理
- モチベーション・組織活性化
- リーダーシップ
- マネジメント
- チームビルディング
8割以上の企業が悩みを抱える新人指導者(OJTリーダー)育成
~OJTリーダーと新入社員が共に育ち定着し、持続的に成長する風土づくりに向けたリーダー育成の要所~
開催日:2024/01/24(水) 10:00 ~ 11:30