成功は慎重に失敗は気楽に│ビジネスも人生もバランスが大事

私は、製造メーカーで19年間、設備管理、品質保証、ISO、生産革新、生産ラインを経験しました。
そして、同じく19年間は、今の会社でコンサルタントとして仕事をしています。

今回のコラムは、この長いサラリーマン人生で「いま、感じていること。」をコラムに残したいと思います。

成功は慎重に、失敗は気楽に

成功は、次の成功の種になる。 
でも、失敗もまた、次の成功の種になる。

もし今、あなたの仕事が上手くいっているなら、少しだけ慎重に。 
もし今、あなたが落ち込んでいるなら、少しだけお気楽に。

ある日、知り合いの自動車部品加工工場の社長が、得意気にこう言いました。

「最近、新しい取引先が増えて、注文もどんどん来てるんだよ！この勢いで、新しい設備を一気に導入しようと思ってる！」

その瞬間、私は心の中でこう思いました。

「ちょっと待て、それ、一番危ないやつだぞ・・・・」

世の中、不思議なもので、上手くいっている時ほど調子に乗りやすいんですよね。

売上が伸びると、「この調子ならもっといける！」と、どんどん新しいことに手を出したくなる。
でも、そんな時ほど、足元を見直す必要がある。

一方で、仕事が上手くいかない時ほど、人は視野が狭くなる。

取引先を一つ失っただけで、「もうダメだ、うちの工場は終わりかもしれん」と極端に考えてしまう。
でも、そんな時こそ「まあ、なんとかなるか」と肩の力を抜くことで、新しいアイデアが浮かんだりするものです。

これ、ただの経験則じゃなくて、心理学や行動科学の研究でも裏付けられているんです。

「成功のワナ」にハマるな

成功すると、人は自分の判断力を過信しがちです。

行動科学の世界では、これを 「過信バイアス」 と言います。

例えば、
・新規の大口注文が入ったからといって、まだ稼働率も見ないまま追加設備を一気に導入する
・「調子がいいから」といって、人材確保もせずに仕事を受けすぎる
・「この勢いなら絶対いける！」と、借金してまで新規事業を立ち上げる

でも、こういう時こそ、「ちょっと待て」と一呼吸置いた方が良い。

なぜなら、好調な時ほど、見落としているリスクがあるから。

実際、その社長の工場も、急激に増えた注文に対応しようと、新しい設備をローンで購入した結果、資金繰りが厳しくなってしまったそうです。

「売上は増えたけど、手元のキャッシュが足りない」という、典型的な失敗パターンですね。

上手くいっている時ほど、慎重に。
「本当に今、拡大すべきか？」を見極める目が必要です。

落ち込んだ時こそ、お気楽に

逆に、上手くいかない時はどうでしょうか。

注文が減ったり、取引先との契約が切れたりすると、「もう終わりだ……」と絶望する社長も少なくありません。

心理学では、こうした極端な思考を 「トンネルビジョン」 と呼びます。

例えば、
・「大口の取引先が抜けたら、もうこの工場はダメだ」と決めつける
・「売上が落ちたら、もう縮小するしかない」と思い込む
・「時代が変わったから、うちみたいな町工場は生き残れない」と悲観する

でも、こういう時こそ、「まあ、なんとかなるか」とお気楽に考えることが大事。

実際に、この社長も、最初は「もうダメだ……」と落ち込んでいましたが、ふと「どうせなら今の設備でできる新しいことを探してみよう」と考え始めました。

そこで、これまでBtoB向けの加工ばかりやっていたのを、一般向けに「オーダーメイドの金属パーツ製作サービス」を始めたんです。

結果、思わぬニーズがあって、新しい収益源が生まれました。 

「もしあの時、落ち込んで何もしなかったら、こんな展開はなかったよ」と笑っていました。

上手くいっていない時こそ、お気楽に構えた方が、柔軟な発想が生まれるんですよね。

ベテラン町工場の社長が教えてくれたこと

昔、私が出会った町工場のベテラン社長がこんなことを言っていました。

「仕事が上手くいってる時ほど、新しいことを始めるな。」
 「仕事がダメな時ほど、新しいことを考えろ。」

最初は「逆じゃないの？」と思いましたが、よく考えると理にかなっています。

仕事が好調な時に調子に乗って手を広げすぎると、後で痛い目を見る。
でも、仕事が上手くいかないときは、逆に気楽に考えて、新しい可能性を探るチャンスになる。

これは、経営だけじゃなく、人生にも当てはまる気がします。

好調な時ほど慎重に判断する。

上手くいかない時ほど展望を広げる。

ビジネスも人生も、バランスが大事。

もし今、あなたの仕事がうまくいっているなら、少しだけ慎重に。 

もし今、あなたが落ち込んでいるなら、少しだけお気楽に。

成功は、次の成功の種になる。 

でも、失敗もまた、次の成功の種になる。

実は、わたし帯状疱疹を患ってしまい、痛みと闘っております。

こんな時こそ、お気楽に行ってみますね！