日本企業の「グローバル人材育成」の一考察⑤最終回
前回の ”海外派遣者に対する現地従業員からの厳しい評価” に引き続き、人事部門や事業部門として
トップの要請・経営の要請である「グローバル人材の確保・育成」にこたえられているのか?どうこたえるべきなのかを 5回のシリーズで考えてきましたが、いよいよ最終回の“まとめ”となりました。
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5.まとめ
日本人派遣者は日本本社においては、若手社員やミドル・マネジメントが多く、海外派遣に伴い二段階上位の役職に就くと言われており、
その多くが、マネージャーやトップ・マネジメントに就任することになる。
問題は、日本での仕事内容と現地での職責との間には、役割と責任において大きな違いがあり、優秀な日本人派遣者が現地で優秀なマネジメント人材になるという因果関係は必ずしも成り立たない。
しかも、海外という、人種や言葉の違う完全アウェイの中での業務遂行で、困難度が一気に増し、思うような成果が挙げられないと考えられる。
海外派遣者を選抜するにあたっては多くの企業が単に「業務遂行能力」や「これまでの仕事の経験」だけで選抜し、本質的に海外派遣者に求められる
- 「コミュニケーション能力」
- 「異文化適応力」
- 「ストレスマネジメント力」
- 「職場マネジメント能力」
- 「赴任先の歴史・文化・社会に関する知識」など
幅広い能力は、行けば何とかなるとの考えか、短期の赴任前研修と語学研修の事前訓練だけで赴任させるケースが 前述の通り多い。
もちろん、赴任前の現地事情研修や語学研修も必須項目ではあるが、海外勤務者に期待される、こうしたグローバルマインドセットは短期間で育成できるものではなく、「グローバル人材育成」は数年以上にわたるキャリア開発の一環として計画され、実施されなくては実現されない。
これまでの日本人だけを対象としてきた「グローバル人材育成」を見直し、日本で学ぶ留学生や現地会社の人材の本社研修による人材開発など、事業のグローバル化の進展に沿った形の、「グローバル人材育成」を実現するために、人事や海外部門に任せるのではなく、全社の方針として取り組むことが必要であると考える。
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※本稿は、株式会社 東レ経営研究所発行の雑誌「東レセンサー」2015年1-2月号に掲載した
文書を一部修正したものです。
参考文献:
- A.バートレット&S.ゴシャール「MBAのグローバル経営」日本能率協会 1998
- 白木三秀・梅沢隆編著 『人的資源管理の基本』 文真堂 2010
- 日外協 2011調査結果 グローバル推進の経営課題
- 「新入社員のグローバル意識調査」 学校法人産業能率大学 2013
- 2012年度「海外現地法人の経営のグローバル化に関するアンケート調査」結果報告
- 日本在外企業協会『月刊グローバル経営』(2012年5月号)
- 日本の産業を巡る現状と課題 平成22年2月 経済産業省 資料
- 平賀富一 「グローバル競争時代に挑む企業の人材育成・活用」日本生命研究所 2011
- 労務・賃金
- 安全衛生・メンタルヘルス
- 人材採用
- 人事考課・目標管理
- グローバル
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中村 好伸(ナカムラ ヨシノブ) リロ・パナソニック エクセルインターナショナル(株)顧問
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