MBOに代わる新目標設定手法「OKR基礎講座」その5
OKRに関する情報は巷にあふれていますが、誤解されて受け取られていることも少なくありません。本コラムでは、日本においていち早くOKRの必要性を唱え、多くの企業でOKR導入支援を行ってきた、株式会社アジャイルHR代表の松丘啓司がOKRの基本的な考え方について分かりやすく解説します。
■第4回目のコラムは、OKRの「基本の5つの考え方」のうち、3つ目の「アンビシャス」について解説しました。今回のコラムは、4つ目の「クロスファンクション」について解説します。
従来のMBOにおける目標設定では、各人が自分の目標を考え、目標管理面談で上司の意見を聞いて確定する方法が一般的でした。しかし、OKRは簡単には達成できない野心的な目標であることから、自分一人だけの力ではなく、多くの人の協力を得ながら達成を目指すことが重要になります。つまり、OKRにおいては「コラボレーション(協力・連携)」が不可欠です。そのため、目標を設定するプロセスや実行するプロセスも、従来の目標管理とは異なったものとなります。
◆ワークショップによるOKR策定
コラボレーションによって高い目標を達成するためには、そもそもOKRを立てる段階でコラボレーションを織り込んでおくことが効果的です。そのために、OKRを策定する際には一人で黙々と考えるのではなく、成果創出に関係するメンバーが集まって議論する場が必要とされます。その場が「OKRワークショップ」です。
高い目標の達成のためには、様々な専門性や知見を有するメンバーの関与が必要となるため、OKRワークショップは部門や機能横断(クロスファンクション)で実施されます。例えば部レベルのOKRを立てる際には、営業、開発、管理といった部の責任者が集まってOKRを議論するといったイメージです。
クロスファンクションでの取り組みを推進するために、全体をまとめるOKR事務局を設置することが必要になります。OKR事務局のメンバーは「OKRコーチ」としてワークショップのファシリテーションを実施したり、全社的なOKRの策定や運用の進捗や課題を管理するプログラムマネジメントを実施したりします。
◆組織横断のOKRの関連付けとOKRの共有
クロスファンクションでのコラボレーションをより直接的に織り込む方法は、OKR自体にクロスファンクション連携の要素を含めてしまうことです。そのための1つ目の方法が、組織横断でのOKRの関連付けです。
例えば、営業部のOKRの達成にマーケティング部のメンバーが貢献しうるとき、営業部長のOKRに貢献する下位のOKRをマーケティング部のメンバーが設定する、といった運用が可能です。従来のMBOでは組織の縦割りが強かったため、他の組織の目標達成に貢献する目標を立てることなど考えられませんでしたが、OKRにおいては組織の壁を越えることはむしろ推奨されます。
クロスファンクションを織り込む2つ目の(より直接的な)方法は、異なる部門で共通のOKRを共有することです。例えば、あるOKRを達成するために営業、開発、管理部門で協力することが必要な場合、営業部長、開発部長、管理部長をそのOKRの共有オーナー(共同責任者)に設定するといった方法が可能です。
別の言い方をするなら、そのOKRの達成を目指すバーチャルなチームを形成するのです。
OKRの共有はこのような組織の横の関係だけでなく、組織の縦の関係でも用いられます。たとえば、社長と担当役員が共通のOKRを共有する、あるいは部長と課長が共通のOKRを共有するといったケースです。縦でのOKR共有を行うことによって、OKRの階層を過度に深くせず、フラットな組織運営を行うことが可能です。
従来のMBOにおいては、個人の目標は上司と「握る」ものであって、公に公開することは一般的ではありませんでした。ましてや、目標の進捗度合いを公開することなど言語道断でした。なぜなら、MBOでは目標の達成度によって人事評価が決まるため、進捗度を公開することは評価を公表するようなものだったからです。
しかし、OKRにおいては目標とその進捗状況を公開することが基本です。ただし、OKRの達成度を人事評価に直結させないという前提条件が担保されている必要があります。
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日本において、1on1とOKRを含む、パフォーマンスマネジメントの重要性をいち早く唱え、多くの企業の経営者と共にマネジメント改革に携わる。
東京大学法学部卒業後、アクセンチュアにて、人と組織の変革を担当するチェンジマネジメントグループの立ち上げに参画。同社のヒューマンパフォーマンスサービスライン統括パートナー、エグゼクティブコミッティメンバーを歴任後、アジャイルHRを設立。
松丘啓司(マツオカケイジ) 株式会社アジャイルHR 代表取締役社長
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