1on1あるある課題:従来のコミュニケーションとの違いは?
本連載コラムでは、1on1を導入している企業における、1on1に対する疑問・課題に、日本でいち早く1on1の必要性を唱えたアジャイルHR代表の松丘啓司がお答えします。数多くの企業で1on1導入の支援を行い、述べ6000名以上のマネジャーたちに1on1研修を実施してきたアジャイルHRだからこそお答えできる、マネジャーたちの「あるある」疑問。
第1回目のコラムは、1on1の導入をすると必ず最初に誰もが思う社員から出てくる質問No.1ともいえるこちらの質問にお答えします。
Q. 「毎日、部下とは会話をしているし、コミュニケーションは十分取れています。1on1と今まで行っていたコミュニケーションとの違いは何でしょうか?」
■1on1とは何か?~対話と議論~
1on1という言葉が日本に広まってから数年が経ち、今では多くの企業が1on1を導入、または導入の検討をしています。一言で1on1といっても、導入目的、対象者、実施頻度、内容等については、企業によって様々で、それぞれの企業が自社にあった形で導入・運営をしている様子が伺えます。
1on1とは文字通り1対1を意味しますが、職場において上司と部下が1対1で「対話」を行う場を指して1on1と言うことが一般的です。
これまでも職場で定期面談や、業務の報告等、上司と1対1で話すことはあったと思いますが、敢えて「1on1」という取組を導入する意図はどこにあるのでしょうか?また、「対話」とは、従来のコミュニケーションとは何が違うのでしょうか?
「対話」というのは文字通りお互いに話すことです。対話の説明をするのにいちばんわかりやすいのは、対話の反対側にあるコミュニケーションについて考えてみることです。
対話の逆というのは、議論です。議論という言葉には、戦いの概念が含まれています。議論を闘わせる、議論に勝つ、などという表現がされるように、もともと勝ち負けの意味合いが含まれています。では、どうすれば議論に勝ったことになるかというと、自分の主張を相手に認めさせたときに、議論に勝ったということになります。
そのため、議論というのは、まず自分ありきです。お互いに話しているように見えますが、議論しているときというのは、自分の主張をいかに相手に納得させるかを考えている状態で、お互いに自分発ということになります。
「対話」はその逆で、まず相手を理解するということが大切となります。
相手を理解して、相手がなぜそういうことを言っているのだろう?その意図はなんだろう?あるいはこの人は何を大切にしているからそういうことを言っているのだろう?といった価値観を理解した上で、自分も意見する。
あなたはこういうことを思っているのか、それならこういう考え方もあるんじゃないか?というように、お互いの考えを乗せていく、そのようなコミュニケーションが「対話」です。
■従来の面談との違いは?
1on1=対話であるということは理解したが、「今までも定期面談等で、しっかり対話の場は作っているのでは?」と考える方も少なくありません。
当然、仕事の場で上司と部下は業務の会話をしますし、これまでの企業の制度でも半期に一度くらい、目標設定やその達成度、業績評価を振り返ってフィードバックするという面談はありました。
ただそれらは、どちらかというと評価が目的になっていて、あまり一人ひとりの成長を支援するという色彩は薄かったといえます。評価をしたり管理をしたりするだけでは個人が成長するのは難しいので、一人ひとりの成長やパフォーマンス向上の支援を目的として、半期に一度ではなくもっと頻繁に、必要な時に会って話すことの方が効果的なのではないかという考え方に基づいているものが、1on1なのです。
評価というのはどちらかというと過去のこと。済んだこと。それに対して、成長というのはどちらかというと未来のことです。これからどうしていきたいか。何を経験していくか、というような未来志向で話すことが重要です。
どう成長していくか、何をやりたいかというのは一人ひとり違うので、それぞれに応じて話す内容が異なってきます。そのような部分が、1on1とこれまでの面談との違いの一つになります。
企業の導入目的によって、1on1の設計は異なりますが、1on1は「相手を主役と思い、未来志向の対話をする」場であり、評価や管理ではなく「メンバーの成長を支援する」場であることを、上司・メンバー共にしっかりと理解しておくことで、1on1の本来の力を発揮することが可能になります。
- 経営戦略・経営管理
- モチベーション・組織活性化
- キャリア開発
- リーダーシップ
- マネジメント
日本において、1on1とOKRを含む、パフォーマンスマネジメントの重要性をいち早く唱え、多くの企業の経営者と共にマネジメント改革に携わる。
東京大学法学部卒業後、アクセンチュアにて、人と組織の変革を担当するチェンジマネジメントグループの立ち上げに参画。同社のヒューマンパフォーマンスサービスライン統括パートナー、エグゼクティブコミッティメンバーを歴任後、アジャイルHRを設立。
松丘啓司(マツオカケイジ) 株式会社アジャイルHR 代表取締役社長
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