メンタル不調(うつ病)への対処法 シリーズ3
みなさん、こんにちは。株式会社ヒューマン・タッチの森川です。
前回は【メンタル不調(うつ病)への対処法 シリーズ2】として、「ストレス反応」「うつ病とは」について、お話しさせていただきました。今回は、【シリーズ3】として「従業員を取り巻く環境」「メンタルヘルス対策の意義」について、話題にさせていただきます。
■■従業員を取り巻く環境
■自殺者数・精神疾患による労災、の増加
日本の自殺者数は、H10年からH21年の最悪のころ(3万人以上)から比べると、かなり減ってきています。令和に入って2万人を割るところまで来ましたが、コロナ後自殺者数が増加に転換し、直近でも高止まりの傾向が見られます。自殺者数の増加に関しては、因果関係をみるのは難しいようですが、経済状況がかかわっているのではないかともいわれています。残念ながら、日本では30代までの死因のトップは自殺になります。また、自殺者全体に占める、就業者の割合も30%程度になります。
さらに、精神疾患による労災認定の数も増加傾向にあります。H23には労災の認定基準も出来、申請数だけでなく認定数も増加しています。
■司法判断の変化
労災とは別に、民事での損害賠償請求への対応も求められています。「安全配慮義務」に違反する場合、企業組織だけでなく、義務を委譲された管理監督者もその責任を有しているとの判断となります。
具体的には、企業側の「過失」が前提となります。「過失」とは「予見可能性を前提とした結果回避義務違反」のことを指します。「予見可能性」とは「結果の発生を予見できたか否か」、「結果回避義務」とは、「結果の発生を予見した場合に、これを回避するために取るべき措置のこと」とされています。
職場に明らかな不調(誰が見てもいつもと違う、問題だと判断できるような程度)であれば、「予見可能性」が高いとの理解になりますから、積極的な「結果回避義務」が生じるということですね。では、職場でどのような対応をすべきか、これについては第4回以降で詳しくお話しさせていただきます。
■■行政の対応
このような環境の中、「労働者のこころの健康のための指針」「安全配慮義務の労働契約法への明文化」「長時間労働者への面接指導制度の創設」「ストレスチェックの義務化」など、対応が進んできています。
直近では、50名未満の事業場でのストレスチェックの実施や、職場環境改善についても、その必要性について議論が進んでいます。近い将来、すべての事業場でのストレスチェックの実施やその結果からの職場環境改善活動が、必要になってくるかもしれません。
■■メンタルヘル対策の意義
では、上記理由から積極的にメンタルヘルス対策にお金をかける経営者は増えるでしょうか。残念ながらそうは感じません。やはり「かけたくない経費」「なければそれに越したことは無いコスト」との捉え方は、まだまだ一般的かもしれません。特に中小零細企業であれば、「不調になって結果やめる人間にお金をかけるのであれば、採用にお金をかけたい」という本音もあるかもしれません。
しかし、大きく働く環境は変化してきています。「ワークエンゲージメント」「いきいき職場づくり」「健康経営」「健康経営銘柄」「人的資源経営」「働き方改革」「テレワーク」など、従業員個人が働きやすさを感じる職場が、良い人材を確保でき、業績を伸ばし、SDGSに貢献しうる、との認識が広まってきました。
要は、「かけたくないコスト」から「人への投資」との大転換が進んでいるのです。
「人」「もの」「金」は、大切な要素です。人への投資はまさに一丁目一番地だというのは全く理解しています。ただ、現状の動きは、正直に言えば、最終的に業績を伸ばせるのかどうかの視点よりも、社会的なニーズが先行しての取り組みの様にも、私個人としては感じています。揺り戻しとしての、全員出社への回帰や、昔ながらのコミュニケーションの復活などは、必ずしも、個人の働きやすさの最大化=組織の力の最大化、なのかということを考えさせられます。
しかしながら、今のトレンドとしては、やはり「人への投資」です。お金を出す理由としては、もっとも理にかなっていますね。
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通算500社以上のコンサルティング、900件以上の復職面談、年間100件以上のセミナーをこなすメンタルヘルス対策専門コンサルタントです。
メンタルヘルス対策の仕組みづくり、個別休職復職支援、ラインケアセミナー、セルフケアセミナー、全員面談、ストレスチェック、職場環境改善、災害・自死等の危機対応など、「こころ」の視点から、「いきいき職場づくり」をトータルに支援いたします
森川 隆司(モリカワ タカシ) 株式会社ヒューマン・タッチ 代表取締役 臨床心理士 公認心理師
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