新入社員の「早期離職」を考える
みなさん、こんにちは。株式会社ヒューマン・タッチの森川です。
今年は桜のつぼみもまだ固いですが、新入社員を迎える季節となりました。コロナ禍からの課題でもありますが、「早期離職」については、どの企業様でも多少なりとも人事の皆様の関心事かと思います。
入社後の新入社員研修の中にも、「メンタルヘルス」や「コミュニケーション」などの話題を入れていただくケースが多くなってきていると感じます。単にセルフケアの目的でなく、社内の産業医、保健師、カウンセラーなどの資源の紹介や、心の面だけでなく、食生活や一人暮らし全般の支援の意味を込めている場合もあります。 他方、高校生や大学生へのメンタルヘルス研修も多くなってきています。
学生時代のメンタルヘルスの向上という意味合いだけでなく、就職後のこころの健康をイメージした情報提供の内容になります。これらの研修を通じて感じるのは、これから仕事に入る皆さんを(まったくの私見ですが)以下のように分類できるのでは、と感じています。
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(1)まだまだ、仕事や会社というものへのイメージができていない群
(2)プライベート(趣味や個人的な趣向)が第一優先で、仕事はあくまでお金のため、プライベートを 支えるためのものとしてのイメージが強い群
(3)学生生活と職業生活を切り離して、職業生活の中ではどのような業務、キャリア(企業含めて)をたどりたいかをベースに仕事や将来をイメージしている群
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(1)の群は、「人から指示される」「やりたくないことも強要(?)される」「叱られる」など、職場で初めての体験をなすことになります。これらの意味合いが、なぜに仕事をするのか、ということに結びついていないが故に、不平不満やメンタル不調が多く聞かれるかもしれません。人事側からすれば、「全く使えない」「早期離職」「ハラスメント訴え」などを起こす人物像、に見えてしまうかもしれません。
(2)の群は、業務に関しては相応に問題なく業務してくれますが、「残業はしない」「プライベートの時間や予定が優先」「お金が貯まれば仕事は1日でも早く辞めたい」との思いが強いかもしれません。自分の将来にとって意味がない(と感じる)業務からはすぐにでも退場したく、周りから見ればドライで、昔ながらの「熱血仕事人間」職員からすれば、「今の若い人間はわからない」との思いが出てくるかもしれません。
(3)の群は、ある種仕事に対してのポジティブなイメージを多く有しているので、入社後早々から、積極的な仕事ぶりが見られるかもしれません。周りとのコミュニケーションもよく、自分の目標をしっかりと定め、「指示待ち」ではなく「問題解決型」に近い行動様式で、周りからも一目置かれるかもしれません。
では、(1)~(3)どの群が最も離職率が高いでしょうか??私の個人的な見解では、「割合としてはすべて同じ」という感覚です。 ただ、入社後早々に離職するのは(1)であるのは、経験上感じるところです。
(1)の群の人は、「人から指示される」「やりたくないことも強要(?)される」「叱られる」、こんな体験を避けたく、もっと楽な仕事、もっと自分が楽しい仕事を求めて離職する人があるでしょう。
(2)の群の人は、プライベートが優先できな状況が続けば、離職する人もあるでしょう。周りはびっくりするぐらい「簡単に、相談もなく」退職してしまうかもしれません。
(3)の群の人は、高く掲げた目標や理想にうまくたどり着けない時、頑張ってきた自分の意味を見失い「これ以上頑張れない」と、離職する人もいるでしょう。また、どこかで仕事人間を装っており自分の価値と合わないと判断すると、こちらも周りはびっくりするぐらい「簡単に、相談もなく」退職してしまうかもしれません。
企業側としては、現状、採用や育成に膨大なお金がかかる中、早期離職はやはり「悪」「避けるべきこと」であるはずです。ただ、同じ漫画やアニメを見て、同じ教育(怖い先生からの体罰も?)をうけ、車・家・家電に囲まれた理想の生活を、皆が思い描いていた世代とは異なる世代の皆さんが入社されてきています。
個性は「宝」、良いところを「伸ばす」、人との違いは「善」、あらゆる情報へのアクセスが「無料」といった社会的な背景を持つ人たちです。
50代以上の、社内でメジャーな人たちが退場する(再雇用等で勤務自体は継続するかもしれませんが)ほんの数年後には、上記の人たちが社内でメジャーとなり、働き方自体を自ら作っていくようになる立場になります。そう考えると、早期離職予防には、例えば(1)の群へは、仕事のイメージや仕事自体の楽しさ、やりがいなどを経験者が積極的に伝えていくことに意味があると考える反面、(2)や(3)の群に関しては、職場側で彼ら彼女らが大切にしている「価値」を、ある程度満たすことができる制度設計や、環境を用意してくことも大切なのではないかと考えています。
会社は「法人」です。「個人」と同様に「個性」があってよいのではないでしょうか。全寮制で、丸坊主にして職人を育てる会社もあれば、完全リモートで会社の住所さえも貸会議室の会社もあります。新入社員の「個性」を認めていくのであれば、「どのような会社にしたいか」「どうありたいか」といった会社の「個性」もまた、尊重されて良いように思います。法人が営利目的である以上、法人の「個性」は時代と共に、ニーズと共に、取捨選択されていくのだと思います。
個人と法人の個性のぶつかり合い、重なり、という視点から早期離職を考えると、必ずしも「悪」「避けるべきこと」と単純に理解できない要素もあるように感じています。
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森川 隆司(モリカワ タカシ) 株式会社ヒューマン・タッチ 代表取締役 臨床心理士 公認心理師
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