自尊感情
【ヒューマン・タッチ レター vol.114】
みなさん、こんにちは。株式会社ヒューマン・タッチの森川です。
今回は、「自尊感情」についてお話しさせていただきます。
前回、お話しさせていただいた「自己効力感」とセットにして述べられる機会が多いかもしれません。
改めて、「自己効力感(self-Efficacy)」とは、
【学習や課題をうまくやれそうだという個人の確信(自信)のこと。 Banduraによって提唱された概念であり、「自己効力感とは、積極的に課題に取り組むというような認識を意図的に働かせることであり、この自己効力感が行動の開発や学習への地震や意欲を促す」と述べています】
平たく言えば、「自分の能力を信じる気持ち」であり、「自分ならできる」「きっとうまくいくだろう」という考えでしたね。
では、「自尊感情」とは何を指すのでしょうか。
心理学では、非常に重要な概念として、様々な研究が積み重なってきました。
自尊感情の定義は『自己に対する評価』(社会心理学小辞典,古畑編)『自己概念と結びついている自己の価値と能力の感覚―感情―である』(遠藤辰雄,1992)であり,『自分が自分を評価する程度(The degree to which one values oneself.)』(Dictionary of Psychology, A.S.Reber(Ed.)),との考えが一般的とされます。自分自身を「価値があり、意味がある人間だ、と認識すること」ともとらえられてきました。「自分に対する自信」と言い換えてもよいかもしれません。
そして、この「自尊感情」が高ければ、より適応的な生活を送れるとの多くの研究結果が出ています。自尊感情の高い人は、より正確な認知・推論を行うことが可能になり、現実と適性に折り合いをつけていくことができるからだそうです。
今回の「自尊感情」と前回お話しした「自己効力感」が共に備わった状態、すなわち、「自分のプラスの特性を認識して、それが社会的に価値があると自分自身が感じられる状態で、物事に関して取り組める、こなしていけるという確信が重なるとき、私たちは非常にポジティブな状態といえるのではないでしょうか。
・上司や周りの人間からの、本人の「強み」の指摘
・上司や周りの人間からの、出来たことやれたことを「認める(ほめる)」アプローチ
・チームで支えあい、ねぎらいの言葉や感謝の言葉を投げ合う環境
・同期や同じ職位の人間が実際に困った事例のデータベース化
・職位職責に応じて求められる業務やコミュニケーションなどの具体的な内容の事前学習
・個人やチームの成功に対する組織からの評価、表彰
これらに加えて、自分の存在価値や意味を知り、それが役に立っているという確認があれば鬼に金棒ですね。
ただ、ここで難しいのは、自分には価値がある、自信があるという感覚をどのように感じるかです。
皆さんの回りの人で、「自信がある人だな」という方は、少なからずいるはずです。私自身も実は「自尊感情が高い」「自信のある人間だ」との自己認識は高い方だと思います。では、私は現実とより柔軟に折り合っていけているか、と自分自身に問うた時に、強い自信や信念が結果として、「わがまま」「我が強い」といった柔軟でない態度をもたらしていることもあるように感じます。 自分で自分の価値を知り認める、ということは、つまるところ周りの人との関係性や環境の中で、自分が「仲間として認められる感覚」「互いに必要とされている感覚」が大切なのではないかと思います。
私は、この感覚をはぐくむには、あえて、今までと異なる環境に身を置くことも良いのではと考えています。 知らない土地で生活する、新しい仲間と仕事する、趣味のサークルに入ってみる。ずっと、自分もやりたいと思っていたのですが、なかなか出来ません。年を取ると余計に第一歩が難しくなりますね。出来るところからやってみている今日この頃です。
この夏休みも大好きな北海道で過ごしました。カヌーのインストラクター、貸自転車屋さんのおじさん、限られてはいますがいつもと違う人との交流ができました。旅先であれば、いつもより、話がはずみます。「必要とされたい」「関係を持ちたい」との欲求がより強く働くのでしょうか。
自分よがりな価値だけではなく、世のために立っているか、周りの人が認めてくれて、仲間として受け入れてくれるか、こんな感覚をはぐくむのも大切なのかもしれません。
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森川 隆司(モリカワ タカシ) 株式会社ヒューマン・タッチ 代表取締役 臨床心理士 公認心理師
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