臨床心理士が教える不調者対応07~復職支援の成功・失敗事例~
みなさんこんにちは。
株式会社ヒューマン・タッチの代表で、臨床心理士の森川隆司です。
前回までは、複数回にわたって、復職の失敗例として「職場側の要因」を取り上げてきました。
今回からは、「本人側の要因」について、ひとつひとつ触れていきたいと思います。
まずは【生活が整う≠復職が可能】についてです。
■復職の判断について
復職が可能となった状態、とはどのような状況と理解すればよいでしょうか。
まず、休職に至った病気や症状が治まっている(完治もしくは寛解)ことが前提となります。
「うつ病」「抑うつ状態」などの診断名で療養に入ったとすれば、眠り、食欲、意欲、行動面、などでの改善がみられる必要があるということです。この改善具合は、通常主治医によって医学的な根拠から判断されます。加えて、本人が「復職したい」という意志が表明されていることも必要な要件ですね。
本人の復職の意志と、医学的な根拠からの症状の改善、これらが見られた際には、一義的に復職可能と理解できるかもしれません。
しかし、この状況で「復職」させた場合に、どのようなことが起こるでしょうか。
「復職可能」の診断書と本人の希望をもとに、例えば、いきなりフル勤務で復職させた場合、翌日から「朝起きられませんでした」と体調不良で欠勤が継続…良くある事例と思います。
ここで問題となってくるのは、医学的な観点からの改善(体調や症状の安定)と、業務の負荷に耐えることが出来る状況までの改善、は必ずしも同一ではないということです。
もちろんのことですが、主治医は休職者を「労働者」とみる前に「患者」とみるわけです。患っている症状を取り除くもしくは軽くすることに、専門的な知見を活用します。
症状が安定した際に、本人から「復職したい」との希望が出れば、復帰後にどのような業務を行うのか、限定した情報しか持ち得ていない主治医は、条件を付けながらも復職を否定することは難しいと思われます。
多くの企業様では、ここで産業医の先生の登場となるわけですが、産業医として、復職面談で積極的にかかわってくださる先生がすべてではないのも現実ですね。主治医からの診断書や意見書をそのままに、会社に面談結果をお伝えになることもあり得ます。
このような場合、会社が求める復職の基準を満たしていない状況で、職場復帰がなされてしまうことがあるのです。結果、上述したような復帰直後の欠勤という出来事も起こりえますね。
では、復職の基準をどのように定めたらよいのか。また、復職に当たって、どのような情報をだれから求めればよいのか、これらについては、次回以降で触れさせていただきます。
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森川 隆司(モリカワ タカシ) 株式会社ヒューマン・タッチ 代表取締役 臨床心理士 公認心理師
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